心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く詩歌-『自選谷川俊太郎詩集』から
 言葉が心を救ってくれると実感したのは、15歳の時に出会った谷川俊太郎さんの詩でした。
以来何十年も読み続け、何度も(つわりのひどかった夏も…)講演を聴きに出かけました。

今回は『自選谷川俊太郎詩集』から少しだけ。

  自選谷川俊太郎詩集  (岩波文庫・2013年発行・700円)

 『二十億光年の孤独』 (1952年刊)の「一九五一年一月」より

  海
 「沈んでいる霊達のために
 私の憐憫は祈りにかわってゆく
 沈んでいる愚劣のために
 私の悲嘆は怒りにかわってゆく
 深く湛えていることのさびしさが
 私の姿を荒くする」

 少年
 「生きてゆくことが必要だ
 信ずることが必要だ
 行動することが必要だ
 若さが私を大きくする
 銃の前に私はふるえないで立ってみせる
 そんなことはやめようとふるえないで叫んでみせる」


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 『うつむく青年』 (1971年刊)の「木」より

  4
 
 木を見ると
 木はその梢で私に空をさし示す
 木を見ると
 木はその落葉で私に大地を教える
 木を見ると
 木から世界がほぐれてくる


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 『真っ白でいるよりも』 (1995年刊)より

  地球の客

 躾の悪い子どものように
 ろくな挨拶もせず
 青空の扉をあけ
 大地の座敷に上がりこんだ

 私たち 草の客
 木々の客
 鳥たちの客
 水の客

 したり顔で
 出された御馳走に
 舌づつみを打ち
 景色を讃(ほ)めたたえ

 いつの間にか
 主人になったつもり
 文明の
 なんという無作法

 だがもう立ち去るには
 遅すぎる
 死は育むから
 新しいいのちを

 私たちの死後の朝
 その朝の
 鳥たちのさえずり
 波の響き
 遠い歌声
 風のそよぎ
 聞こえるだろうか
 いま


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 『子どもたちの遺言』 (2009年刊)より
  
  いや

 いやだ と言っていいですか
 本当にからだの底からいやなことを
 我慢しなくていいですか
 我がままだと思わなくていいですか

 親にも先生にも頼らずに
 友だちにも相談せずに
 ひとりでいやだと言うのには勇気がいる
 でもごまかしたくない
 いやでないふりをするのはいやなんです

 大人って分からない
 世間がいったい何なんですか
 何をこわがってるんですか

 いやだ と言わせてください
 いやがっているのはちっぽけな私じゃない
 幸せになろうとあがいている
 宇宙につながる大きな私のいのちです


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 今を生きる私の心に強く留まった詩を引用しました。
偶然さまざまな年代の詩になりましたが、どの詩も今に通じる普遍性があり、優れた言葉の力、心のこもった言葉の力というものを思いました。

 最後の写真はベランダから。それ以外は、長野で撮りました。

心に響く詩-「木」の詩二編
 いきなりの夏!「梅雨」はどこかに消え去って、全く雨のないかんかん照りの日が続いています。風はさわやかなのですが、なにしろ日差しがきつくて、日傘を忘れようものなら大変。夏好きの私ですが、さすがにこれだけ雨が降らないと、植物が心配です。【写真は家の周辺】

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木    田村隆一

木は黙っているから好きだ
木は歩いたり走ったりしないから好きだ
木は愛とか正義とかわめかないから好きだ

ほんとうにそうか
ほんとうにそうなのか

見る人が見たら
木は囁いているのだ ゆったりと静かな声で
木は歩いているのだ 空にむかって
木は稲妻のごとく走っているのだ 地の下へ
木はたしかにわめかないが
木は
愛そのものだ それでなかったら小鳥が飛んできて
枝にとまるはずがない
正義そのものだ それでなかったら地下水を根から吸いあげて
空へかえすはずがない

若木
老樹

ひとつとして同じ木がない
ひとつとして同じ星の光りのなかで
目ざめている木はない


ぼくはきみのことが大好きだ


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木は旅が好き     茨木のり子

木は
いつも
憶っている
旅立つ日のことを
ひとつところに根をおろし
身動きならず立ちながら

花をひらかせ 虫を誘い 風を誘い
結実を急ぎながら
そよいでいる
どこか遠くへ

どこか遠くへ

ようやく鳥が実を啄(ついば)
野の獣が実を嚙(かじ)
リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ
小鳥のお腹なんか借りて
木はある日 ふいに旅立つ―空へ
ちゃっかり船に乗ったのもいる

ポトンと落ちた種子が
〈いいところだな 湖がみえる〉
しばらくここに滞在しよう
小さな苗木となって根をおろす
元の木がそうであったように
分身の木もまた夢みはじめる
旅立つ日のことを

幹に手をあてれば
痛いほどにわかる
木がいかに旅好きか
放浪へのあこがれ
漂泊へのおもいに
いかに身を捩(よじ)っているのかが


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 木のことを詩にした素敵な作品を二つ見つけました。特にアンダーラインのところが好きです。以前から心惹かれていた木と野の草ですが、近年ますます好きになって、自然の中を歩いていると、それだけで気持ちが満たされていきます。新緑が濃い緑になると寂しくなるなと思っていたのですが、夏の元気な木々は豊かな緑蔭をつくってくれて、やっぱり素晴らしい。芽吹き、新緑、万緑、紅葉、落葉、裸木…と、木は一年中そばにいて心を癒してくれます。

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

心に響く詩歌-自句自解
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 久々に体調を壊し、ここ二日へたばっていました。十年ほど前に、中途半端な揚げ具合のカキフライで撃沈してからずっと、カキを避けていたのですが、実は、家族はカキが好きなのに遠慮していたというのを、今年になって知り(!)、この冬は、カキフライを何度も食べました。それで、大丈夫だったものだから安心して、一昨日、アサリの酒蒸しを食べたところ、撃沈…。家族は大丈夫だったので、やはり私が合わないのだと思います。今年も風邪を引かなかったと喜んでいたのですが、冬の疲れも出る頃で、抵抗力も落ちていたのかもしれません。
 胃腸も、年相応に弱ってきているのだから、無理してはいけないと反省…の二日間でした。ひたすら寝ている私に、ピタッと寄り添って、猫のミューが痛い胃を温め続けてくれました。いつもなら、「起きて~」と起きるまで大声で鳴くのに、ず~っと静かに動かず、私が寝がえりをうった時には、すっと移ってまた胃を温めてくれ、ほんとに助かりました。二日間ミューと一緒に寝倒したら、体調も戻ってきて、やっと食事が摂れました。 

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 【私の胃を温め続けてくれた雄猫のミューです。】

 次の拙文は、「青群」27号の「自句自解」に載せて頂いたものです。
   次の句の考(ちち)と妣(はは)は、亡くなった父と母のことを言います。

歌かるた 考(ちち)と妣(はは)とのなれそめの

正月のお雑煮を済ませると、父がおもむろに古い木箱の百人一首を取り出し、家族そろってのかるた取りが始まる。読み手を兼ねているにもかかわらず、毎回、父の一人勝ちである。十六歳の時、大酒飲みだった父親を亡くし、弟妹の面倒をみるため学校を諦めた父であるのに、なぜそんなに百人一首を知っているのかと、尋ねた。
昔の村には青年団というのがあって、あそこの家に年頃の娘さんが居ると聞くと、皆で「かるたしましょ」と出かけたのだそうだ。たくさん取ってかっこいいところを見せれば、意中の人と仲良くなれるだろうと一生懸命覚えたという。お芝居や文学が好きだった母と、かるたの得意な父が気持ちを通わす場面を想像して、まるで奈良か平安時代みたいだと不思議な気持ちになった。そして何より、大正生まれで戦争も経験し生活の苦労も多かった両親に、こんなに若くて幸せな時代があったことが嬉しかった。以来、私の中で百人一首は特別な存在だ。
母が四十九歳、父が六十六歳で亡くなってしまったせいか、両親が生きていたらこんな感じかなと、知らぬ間に年配の方に心ひかれている。俳句や短歌が好きなのも、こんなところに原点があるのかもしれない。

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 【新聞を読んでいると、必ず上に乗ってくる雌猫のハオです。】

テーマ:俳句 - ジャンル:小説・文学

心に響く詩集-まど・みちお詩集
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    まど・みちおさんの詩は、易しい言葉で書いてあるのに、内容が深くて心にしみてきます。
    まどさんの詩は、気持ちが自然と一体化しているので、彼の詩を読むと心が安らぎます。
    
       madomitiokonnanitasikani.jpg  まど・みちお詩集『こんなにたしかに』より
             (水内喜久雄選・著/高畠純絵/理論社「詩と歩こう」/2005年/1400円)


どうしてだろうと(初出*『まど・みちお全詩集』)

どうしてだろうと
おもうことがある

なんまん なんおくねん
こんなに すきとおる
ひのひかりの なかに いきてきて
こんなに すきとおる
くうきをすいつづけてきて
こんなに すきとおる
みずを のみつづけてきて

わたしたちは
そして わたしたちの することは
どうして
すきとおっては こないのだろうと…


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        春の訪れ(初出*『きょうも天気』)

        太陽がうたう…
        小鳥たちが咲く…
        花々が照らす…
        と言えば少量の嘘と
        少量の真実を伝えることになるが
        もともと百万言が死力を尽くしたとて
        「春の訪れ」に届くわけのものでもない
        「自然」はいつも遠いのだ
        自身が自然でありながらまるで
        それを忘れている人間の
        「ことば」からは
        ゆびさす手の先に触れると見えて
        ひとりはるかなあの虹のように


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     昨日あった「伊丹三樹彦先生の俳句サロン」で、みなさんに気に入って頂いた拙句。
            「猫宛てのハガキ来ている 春の宵」


               ぼくが ここに(初出*『ぼくが ここに』)

               ぼくが ここにいるとき
               ほかの どんなものも
               ぼくに かさなって
               ここに いることは できない

               もしも ゾウが ここに いるならば
               そのゾウだけ
               マメが いるならば
               その一つぶの マメだけ
               しか ここに いることは できない

               ああ このちきゅうの うえでは
               こんなに だいじに 
               まもられているのだ
               どんなものが どんなところに
               いるときにも

               その「いること」こそが
               なににも まして
               すばらしいこと として


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      まどさんの詩は前から好きでしたが、この年になると前より更に心ひかれます。

テーマ:詩・想 - ジャンル:小説・文学

心に響く詩歌-短歌・俳句の雑誌より
 私の所属している短歌会と俳句会の、若い方々の最近の活躍をご紹介します。

tanka201111.jpg 「短歌」2011年11月号

第57回角川短歌賞次席作品(50首)  海蛇と珊瑚  薮内亮輔(20歳)より

月の下に馬頭琴弾くひとの絵をめくりぬ空の部分にふれて

晩年の姿を残しひとは逝く橋の手摺りを越えて降る雪

窓に背をあてて話せり首すぢは空のけはいを感ずるところ

おしまひのティッシュペーパー引くときに指は内部の空(うつほ)もひけり

眼底に雪はさかさに降るといふ噂をひとつ抱きて眠りぬ

死ぬことはもう識つてゐる小説の挿絵のなかに欅、夕ぐれ

虹、といふきれいな言葉告ぐることもうないだらう もう一度言ふ

光線のながき旅路の終点のひとつに数へたし、ゆふ雲を

忙しき一日よ憶えゐるものは眼鏡のうへの指紋ひとひら

まず一首目を読んで「うまいなあ!好きだなあ。」と思いました。ここに挙げた歌は、言葉も発見も作者の独自性があって、しかも響きに風格があると感じました。また、死というものの本質に迫る歌群に心惹かれました。私も所属する「塔」短歌会の、ホープの一人です。

ここでは具体的なお名前はあげませんが、「塔」には、角川賞、歌壇賞等々優れた短歌の賞の受賞者が何人もおられます。


20122kadan.jpg 「歌壇」2012年2月号

第23回歌壇賞次席作品(30首)  温度差の秋  沼尻つた子(昭46生)より

ながつきの真夏日 ストアの扉からにせものの秋の温度は漏れて

店員用ユニフォームに〈がんばろう日本〉おのれでは読めぬ背中へ刷らる

淡雪のようなる埃をぬぐいたり半年を経し義援金箱

のちの世にわれらを祖先と呼ぶひとのありやレシートの数字うすれぬ

かつて薄野原でありしわがまちの空調の風に髪を梳かるる

迎えたるものをあまねく送りだすストアの扉から秋もまた

所属する「塔」には、いい歌を詠む方が多く、彼女もその中の一人。生活感があって力強く、言葉がふわふわしていないので大好きです。この作品群には、個人的なことも詠まれているのですが、私はここにあげた広い視野を持つ歌がとても気に入りました。普段は買わない「歌壇」ですが、応援している沼尻さんの歌を紹介しなくてはと思って、今回は買いました。

予選通過作品の中に、リンク先の宮岡絵美さん(同郷&同級生の友人夫妻の娘さん)の名前を見つけたのも、嬉しいことでした。その宮岡絵美さんのブログに「世界の大学図書館」というサイトが紹介してあるのですが、とても素敵です。


haiku201111.jpg 「俳句」2011年11月号

第57回角川俳句賞候補作品(50句)  塔   織田高暢(昭33生)より

低く来し蝶またぎけり駅へ急く

我が影と別れて休む木下闇

手ざはりは絹蝙蝠をつまみ出す

帰省子の髪の吹かるるデッキかな

窓たたき搗きしばかりのもち食へと

舞ひ降りて一羽一羽に草青む

私は、二句目と五句目が特に好きです。日常見過ごしがちな何でもないことを詠めるのが俳句だと、改めて思った句群でした。全体を通したテーマがわかりにくかったのが、残念でした。私も所属する「空」俳句会の方なのですが、「塔」という題が、私の所属している短歌会の名前と一緒だったのでびっくりしました。
同誌に伊丹三樹彦先生の俳句(連作8句)が載っていたのも嬉しかったです。

ちなみに私の所属する「青群」顧問の伊丹三樹彦先生は2003年に現代俳句大賞を、「空」主宰の柴田佐知子先生は第7回(平成4年度)俳壇賞を「己が部屋」にて、「空」を私に勧めて下さった高千夏子さんは第43回(平成9年)角川俳句賞を「真中」にて受賞されています。


tanka20111.jpg 「短歌」2010年11月号

前年度、紹介を忘れていましたが、2010年第56回角川短歌賞受賞は、同じく「塔」のホープ、大森静佳(21歳)さんの「硝子の駒」でした。青春時代にしか詠めない、淡く切ない恋の歌です。この号には、河野裕子さんの追悼特集があったので、めったに買わない「短歌」を買ったのですが、中に思いがけなく拙歌集『大空の亀』が紹介してあり、驚くと同時にありがたく思いました。

 「若者応援」に便乗して、青木拓人(たくと)のライブのお知らせ

1月30日(月)京都の老舗ライブ「磔磔(たくたく)」にて。平日の夜なので、なかなか難しいかもしれませんが、京都河原町駅から徒歩3分の近さですので、よろしかったらお出かけください。

2月3日(金)は、umeda AKASOにて。以前バナナホールがあったところです。AKASOの2月のスケジュールに、なんと!「スガシカオ」!行きたい!でも、残念。SOLD OUTでした。

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年1月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



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