心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
手作りが好き!-友だちの作品です。
 このところ、俳句と短歌の勉強?に忙しく、布を使った手作りが全然できていない私。
   従って、今回も(最近ずっと…?)ご紹介するのは、私以外の方の作品です。
   クリックしたら画像が大きくなりますので、よろしければ拡大してご覧下さい。

 先週末から、田舎にお墓参りなどを兼ね、数日間の帰省をしてきました。その折に、高校時代の友人夫妻と我が家の五人で飲んだのですが、その時、友人の奥さんが、手作りのリースをプレゼントして下さいました。
とても素敵なリースですが、ご本人は、もっともっと美しく可愛い方でした。( I くん、いい方と結婚できて、よかったねえ。)早速、我が家の一番目立つところに飾り、楽しかった時間を思い出しています。

    リース    リース横    リース全体


 昨夜、四国から戻って、メールを開くと、keikoさんからたくさんの写真が送られてきていました。先日、キルト展があって作品を出したとかで、「見せてね」という私の依頼に、パソコンの得意な息子さんが帰省したら写真を送るねという話になっていました。
以下に、keikoさんの解説を引用させてもらって、写真のアップをします。

出展したのは銀婚記念に作った「絆」(アーミッシュの町で買った紫の布を生かそうと作った作品なので、アーミッシュのヘックスサインという図柄をキルトラインに取り入れました。)と、季節はずれでしたが「紅葉」です。
その他タペストリー「薔薇」や「紫陽花」「寿ぎ」と、娘に作ったバッグも撮りました。
 「薔薇」「紫陽花」とバッグはキルト誌に載っている作品を参考に、4~5人で相談しながら布を分け合って作りました。(オリジナルではありません。) 


  kirutokizunazentai.jpg   キルト展hanatyu   キルトhanadai  「絆」全体。順に拡大。


  キルト紅葉3   キルトkouyou2tyu   キルト紅葉1dai 「紅葉」全体。順に拡大。


  baradai.jpg    kirutoazisaizentai.jpg   azisaidai.jpg
         「薔薇」                        「紫陽花」全体と拡大。

  キルトkotohogi   kirutobag.jpg   bagwahu.jpg 「寿ぎ」。「バッグ」2点。


 会場の様子
   2008年7月18日~7月22日キルト展の様子。 正面左がkeikoさんの大作「絆」。「紅葉」も大作。

 私は、この間、京都の駅ビルにキルト展を見に行って、「この根気…、私には絶対できないわ。」とため息をついてばかりだったので、keikoさんの頑張りにただただ感心しました。前に、ベッドカバーとこたつかけの写真も携帯で送ってもらったのですが、それも大作でした。前に訪ねたとき、お家にもさりげなく飾ってあって、keikoさんの温かい人柄が、家中にあふれている感じがしました。彼女も、作品同様、とっても美しくて可愛いのですよ。

テーマ:ハンドメイドの作品たち - ジャンル:趣味・実用

心に響く詩歌(歌集)-藤田千鶴歌集『貿易風 TradeWind』
藤田千鶴歌集『貿易風 TradeWind』を紹介します。 

08貿易風カバー    08貿易風本体  藤田千鶴歌集『貿易風 TradeWind』
【本カバー】           【本体】         (砂子屋書房・2007年7月24日刊・3000円)

私が「塔」の大阪歌会に出るようになって、この秋で2年になる。短歌を始めると同時に「塔」に入ったのが、2002年10月。すぐに歌会に出る勇気がなく、何年も「塔」誌で、皆さんの歌に接するだけだった。上手だなあ、素敵だなあと思う方が多く、憧れと畏れだけがふくらんでいた。
今回、ご紹介する藤田千鶴さんも、そんな憧れの歌人のお一人。歌会で実際にお会いして、あまりの可愛さに、すっかり独身だと思っていた私は、子どもさんもおられるし、年齢も私と一回りしか違わないのにビックリ。
しかし、「塔」歴が私より2年長いだけなのに、詠みはもちろん、読みがとても深くて的確で、言葉への繊細なこだわりを毎回感じていました。それもそのはず、童話も書かれ、賞もとられているのですから、優れた表現力をお持ちなのです。
早く紹介したいと思いつつ、発刊から1年も後になってしまいました。3月30日には、京都で歌集『貿易風』の批評会も開かれ、多くのゲストの方の貴重なご意見が聞け、私も大変勉強になったことを書き添えておきます。

  ここでは、それらのご意見は横に置いて、私が好きだなと思った歌を、思うがままに載せて、楽しませてもらおうと思っています。歌集を一読、私は「空」のイメージを持ちました。そして、この歌集を紹介するときには、ぜひ「空」の写真を挟みたいなと考えていました。歌と写真のコラボが、うまくいくといいなと思います。

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                                         【南の島の行き帰りに機上から】

ああここは緑の土地だ飛行機が傾くときの窓に思えり
病気のリハビリを兼ねてマウイ島滞在されたときの作品で、歌集トップに置かれています。
私が、この歌集は「空」の歌集だと思ったのは、この歌の印象があるからかもしれません。

   マウイ島は風の島である
さとうきびの一本になる貿易風(トレード)にちぎれるほど吹かれていたら
歌集のタイトルにもなっている歌。私は、マウイ島は行ったことがないのですが、サイパン島に行ったとき、どこにいても絶えず流れている風に驚きました。また、奄美大島に行ったときは、向こう側が見えないほど大きく育ったさとうきびに、圧倒されました。自然があふれるところに立つと、自分も一体化してしまう感じがよく出ている歌で、共感を覚えた一首です。


 続けて、「空」を詠んだ歌をいくつか並べてみます。

缶ジュース飲みほすときに見上げたる空の青さよ空の高さよ
缶ジュースを飲むときって、つい腰に手を当てていませんか?そして、その姿勢は、人をいつもより大きい気持ちにさせ、空と対峙する感じを抱かせるのです。

時間とはほどけるものかゆっくりと空に馴染んでゆく飛行機雲
時間が経つにつれて、空にくっきりとあった飛行機雲がゆるんで、やがてぼやけ、空にとけ込んでいってしまうさまを、とても詩的に詠んでいて、好きな一首です。

屋根のすぐ上まで空はおりてきてただひっそりと雪降らせたる
雪が静かに降るさまを「空はおりてきて」と喩えたところに、作者の才能を感じます。

蝉の声の膜厚く張る青空をヘリコプターが掻き回している
けたたましい蝉の鳴き声を「膜厚く張る」とした表現が秀逸。ヘリコプターの旋回する様子は、まさに掻き回すという感じで、強い音が聞こえてきます。しかし、この「膜厚く張る」という語のために、静寂感すら漂ってくるのだから、不思議です。

空中に隆起あるようゆるやかな波形描きて飛んでゆく鳥
空を見るのが好きで、空を飛ぶものを見るのも好きな人なのだろうなあと、空好きの私は、うっとりと嬉しい気持ちで、これらの歌を読みました。

012sora080721.jpg                                                             【左上に昼の月が見えます。】

 友人や親族など親しい人たちとの別れや別れの予感は、誰もが味わうものですが、ここに挙げた歌も、作者の喪失感や寂寥が心に残り、私もまた、同じ思いに浸りました。歌というのは、相手のことを心の底から思うものだと、いつも感じます。

いつかおばあさん同士になってあのころのこと話したかったよ
友人が早く亡くなるのは辛いです。おばあさんやおじいさんになって、昔話をするのが夢です。

お互いの時間の先にお互いがもういないのを知っている雲
ずっとずっと先まで行くと、どちらもこの世にはいない。天も地もそんなことはお見通しのようです。

ひとりずつ冬に見送りひとりずつ心の椅子に腰を下ろせり
自分より早く逝ってしまった人を、一人ずつ自分の心に住まわせて、時々会話をするのも、日常の中に定着しているようですね。私もです。

白い菊棺に入れて「先生」と呼べば別れは現実になる
この歌の「先生」は、「塔」で慕われていた田中栄先生のことだと思いますが、「先生」「お母さん」など、いちばんよく呼んでいた呼び名を、もう言えなくなる、その最期の悲しみが深く伝わってくる歌で、しんみりしました。
 
 次の二首は、家族でバンコクに旅行されたときの歌で、「塔」五十周年記念作品賞を受賞された連作の一部です。家族と過ごす時間は、年々少なくなるわけで、それを覚悟しての歌には、寂しさと同時に心の底からの優しさが感じられます。慈しみ続けたい家族の愛です。

  父は前立腺癌の治療中である
まるでもう来世で会っているような父の横顔舟に揺られて
きっともっと優しくすればよかったと思うのだろう別れたあとに


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 息子さんがおられるようで、母親の目で詠んだものにも、共感するものがたくさんありました。気持ちを子どもに添わせる、心が子どもに近いお母さんだと思いました。

抽選でもらった花火をつぎつぎと宿題みたいに終わらせて九月
花火ってもらったときは嬉しいけど、意外と面倒で、するチャンスがないのです。映画や物語のように、ゆく夏の情緒を感じながらというのにはほど遠く、「はい、次!はい、次!」と慌ただしく、一度に数本持ったりして…、ただ夏休みが終わるまでに終わらせなくてはという一心でした。そんな夏が我が家にもありました。

ちっぽけな私に認められたくてそんなに跳ぶのか汗までかいて
子どもというのは、どの子もみんな親が好きで、認めて欲しくて一生懸命なんですよね。いつだって前向きでひたむきなのが子ども。その痛々しさに、親は辛くなるのですけれど。

「戦争は雨でもあるの」と子に問われボウルにプカプカ苺が浮かぶ
子どもの質問は、いつも思いがけないところからやってきて、親を不思議な世界に連れて行ってくれます。我が家も「この川の魚どこから来たの?」と問われ、その根源的な問いに驚いたことがあります。作者の息子さんは、こう尋ねることで、自分なりの戦争への異議申し立てをしたかったんですよね。

どの夏も覚えておくよ座布団の上で寝ていた幼い夏も
批評会で、小林信也さんが「いちばん好きな歌です。」と言われ、「私も!」と思わず心に叫んだ歌です。座布団というリアルさがよくて、懐かしい昔にほろりとしました。赤ちゃんは、ホントに小さいのです。

 ここには挙げませんでしたが、次の歌のように「ほんとだ!」とか、「私もやってるよ。」と話しかけたくなるような歌がたくさんあり、自分のことのように読ませてもらいました。

万華鏡の底にきらきら花模様忘れるために生まれ続ける
南天と声に出すとき明るくてあらためて二度南天と呼ぶ


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                                                     【南の島の夕暮れ】

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

あんなことこんなこと-夏のおでかけ定番「美術館」
  夏のおでかけ定番は、「やっぱ、美術館でしょ!」

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                        【3枚すべて兵庫県立美術館】

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    【大阪国立国際美術館】    【京都国立近代美術館と上階から見える平安神宮の鳥居】

 最近の美術館や博物館は、併設のレストランやカフェ、ショップなども充実していて、半日ほどのんびりと優雅な時間を持つことができます。特に、都会の夏を過ごすには、温度も快適で、もってこいです。夏休み向けの特別展も多いので、楽しみです。

6/27~8/24 兵庫県立美術館で
                      「冒険王・横尾忠則」

横尾忠則(1936~)の60年代未公開作品から最新絵画までの作品。大変な数の作品群に、才能豊かな人だなあと、圧倒されました。
雑誌や広告のグラフィック・デザイナーとしての緻密な作品の上手なこと!
少年時代に戻って、好きなように描きましたという感じの絵の伸びやかで自由なこと!
楽しくて、元気をもらえる展覧会でした。会場で思わず買った平凡社新書の『隠居宣言』と『横尾流現代美術』の面白かったこと!絵と重なって、頷くことばかりでした。

少しだけ引用します。-もちろん認識も必要なんだけど、芸術が本来持っている力というのは、もっと魔力的な力です。その人の魂を根底からひっくり返す、その人の中核に切り込むような、そういう力だと思う。・・・本来、魂を揺さぶるために、芸術は天から降りてきたものだと思うし、まず自分の身近な生活に対する明確な意識で、芸術に振り回された生活でない生き方を主流にした問題との取り組みだと思う。そのためには芸術の確立じゃなくて、人格の確立が先決になる。芸術を創造する母体としての人間が優先。

    0806横尾忠則チラシ表     0806横尾忠則チラシ裏  【横尾忠則展-兵庫県立美術館】


5/24~6/22 美術館「えき」KYOTOで
               「アンカー展-故郷スイスの村のぬくもり-」

スイスの画家アルベール・アンカー(1831~1910) 日本初の回顧展。ふだんはパリに暮らし、夏だけ故郷に滞在し、一貫して、故郷の村と村の子どもや老人などを描いた人。
名前を聞いたこともなかった人だったので、期待せずに出かけたのですが、人道主義を思わせる公平で優しい目線に、すっかりファンになってしまいました。美術展に行っても、図録はよっぽど気に入らないと買わないのですが、ここに紹介した中では、唯一図録を買った展覧会でした。対象への愛情が感じられる大好きな絵ばかりでした。また見たいです。

     0806アンカーチラシ表    0806アンカーチラシ裏  【アンカー展-美術館「えき」KYOTO】


4/1~6/29 奈良写真美術館で
          「入江泰吉 大和路巡礼Ⅱ-佐保・西の京」

入江泰吉記念写真美術館なので、いつでも彼の作品を見ることができます。他の観光や用事とあわせて、見に行くのに最適です。ビデオのコーナーで、写真をのんびり見るのもいいですよ。
もう何度も行っているのですが、今回は、中西進・文『入江泰吉 万葉花さんぽ』(小学館文庫・2003年刊・838円)というステキな本を買いました。

     入江泰吉展0805チラシ表    入江泰吉展0805チラシ裏  【入江泰吉展-奈良写真美術館】


4/26~6/8 京都文化博物館で
         「源氏物語千年紀展-恋、千年の時空を超えて-」

ことしは、『源氏物語』が書かれて千年ということで、京都では様々な展覧会が開かれています。ちょうど行った日は、会場で、源氏物語に登場する曲の演奏と舞楽の公演をしていました。絵巻物や屏風など美しい絵がたくさんでしたが、私は写本に心惹かれました。
特に、大島本といって、今の『源氏物語』のもとになった写本は、とても美しい字で惚れ惚れしました。藤原定家の写本は、書き込みがいっぱいでした。600年以上前の文字がきれいに残っているのに感動すると同時に、パソコンの文字はどれぐらい後の人まで読めるのだろうと心配になりました。
伊井春樹・著『源氏物語を読み解く100問』(NHK出版 生活人新書・2008年刊・660円)が、クイズ形式で気楽に読めて、結構面白かったです。
架空の物語なのに、京都には「夕顔の墓」などいろいろ…、現実の場所と重なるところもたくさんあるので、物語とあわせて味わうのだそうです。こういうのを「風懐(ふうかい)」と言って、江戸時代の人も楽しんだのだと、短歌の先輩が教えて下さいました。

     源氏物語千年紀チラシ0805    源氏千年紀チラシ中0805  【源氏物語千年紀展-京都文化博物館】


5/22~7/13 サントリーミュージアム天保山で
                          「ガレとジャポニスム」

ヨーロッパに渡り「ジャポニスム」ブームを起こした日本の作品は、エミール・ガレのガラス芸術などに大きな影響を与えました。今回は、そのような日本の美を感じさせる作品を中心にした展示でした。正直、ガレより北斎がすごい!と改めて思いました。
海の見える大きな窓のあるフロアに、ガレのガラスコップなどが展示してあり、とても贅沢な空間でした。前後左右から見られる展示は、絵と違って自由で面白かったです。
隣の海遊館と通路でつながっているので、余裕のある方は、両方で楽しまれてはどうでしょう。

     gareomote0807.jpg    gareura0807.jpg  【ガレとジャポニスム-サントリーミュージアム天保山】


 ここ数ヶ月に行った展覧会の中から、心に残った順に並べてみました。残念ながら「横尾忠則展」以外は、既に終わっています。
この他、神戸市立博物館の「特別展 ルーヴル美術館展-フランス宮廷の美-」(4/26~7/6)や、個人の展覧会にもいくつか行ってきました。

昨年の夏は、大阪国立国際美術館の「ロシア皇帝の至宝展」、兵庫県立美術館の「巨匠と出会う名画展」、サントリーミュージアム天保山の「ディズニー・アート展」、大阪歴史博物館「ペルシャ文明展」などに行きました。

今年の夏は、興味のあるのが東京で三つも開催され、いいなあと指をくわえているところです。
7/8~8/17 東京国立博物館平成館で「対決-巨匠たちの日本美術」
8/2~12/14 東京都美術館で「フェルメール展」
7/26~9/28 東京都現代美術館で「スタジオジブリ・レイアウト展」

JR東海のトーキョーブックマークで展覧会ツアーというのもいいかもと思いつつ、きっとどれも人気だろうし、並ぶのは苦手なので、多分実現はしないでしょうね。

関西の次の三つは、外せないなと思っています。
7/1~9/15 大阪国立国際美術館で「モディリアーニ展」
9/13~12/7 神戸市立博物館で「コロー展」
9/25~11/3 サントリーミュージアム天保山で「シャガールからマレーヴィチまで」


 この週末は、美術館「えき」KYOTOで開催中の「キルト展」に行くつもりです。
   素敵な情報がありましたら、皆さんも教えて下さいね。

   
 最近のニュースから3つ+1つ

.芥川賞を中国人の楊逸(ヤン・イー)さんの「時が滲む朝」が受賞しました。
選考委員が、「彼女には書きたいことがある。」と語っていたのが、印象的でした。
17日の天声人語に、芥川龍之介の「文章の中にある言葉は辞書の中にある時よりも美しさを加えていなければならぬ」という言葉が引用されていて、心に残りました。

.大分県の「教員採用汚職」は、ここ数年のことでも、大分県だけのことでもなかろうと、自分の体験に照らして思いました。(お金は絡んでいないかもしれませんが…)
三十数年前、故郷の教員試験を受けたとき、筆記試験と同じ日にあった面接で「身内に教員は?」「いません」。「親戚には?」「いません」。「知り合いには?」「いません」。「せっかくいい大学に行ってるのに残念だねえ。」「・・・」。という会話がありました。45倍ぐらいの倍率でしたので、不勉強の私がテストに受かるはずもありませんでしたが、この面接で、「ああ、故郷で教員になるのは永遠に無理だな。」と思いました。

.野茂投手が引退しました。日米通算201勝。大リーグで日本人が活躍するきっかけを作ってくれたパイオニア。あのヌーボーとした顔が、昔から大好きです。ご苦労様でした。

.(7月20日追記)
「日本語はどこから来たのか?」という疑問を探求した国語学者で学習院大名誉教授の大野晋(おおのすすむ)さんが、先日88歳で亡くなられました。
『日本語の起源』『日本語練習帳』がよく知られていますが、私は、高校時代に『日本語の年輪』を読んで、すっかりこの先生のファンになりました。先生の下で、国語学・言語学を学びたいというのが、大学進学を決めた動機だったのですが、東京に下宿して私学となると、経済的にとても無理で諦めました。
その後も本が出ると嬉しくて読んでいましたので、大切な心の師を一人失った気持ちです。

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季節の詩歌(8)&風景-紫陽花づくし
 先週末、小雨の一日でしたが、たくさんの姫紫陽花で有名な神戸森林植物園に行ってきました。
その時の写真に、俳句誌「空」22号に載せてもらった拙文をあわせ、今回は大好きな紫陽花づくしです。
サムネイル版には、生き物が二つ写っています。お時間のある方は、よろしければ拡大してみてください。
珍しい品種もたくさんあったのですが、ここでは少しだけ載せてみました。名前は、来年に期待して下さい。

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          季節の詩歌(8)~紫陽花~
                  
〈美しき球〉

美しき球の透視をゆめむべくあぢさゐの花あまた咲きたり       葛原妙子

あぢさゐの藍のつゆけき花ありぬぬばたまの夜あかねさす昼     佐藤佐太郎
 

この二首は、紫陽花の大好きな私の愛誦歌である。
十七歳まで住んでいた家の裏庭に、青色の大きく立派な紫陽花が群れ咲くのを、毎年楽しみにしていた。色も形も、私の憧れそのものであったような、あの紫陽花を見ることはもうできないが、これらの歌を知ったとき、あの花たちに会えた気がした。
「美しき球」は、多くの花びら(正しくは萼)からできている。その内部に秘められているものを見たいと、誰でも一度は思うのではなかろうか。優しい色をした花の球がたくさん咲いている情景は、人を夢幻の世界に誘い込むような気がする。また、雨の後の湿りを帯びた紫陽花は、まさに「藍のつゆけき」で、うっとりするような麗しさである。その陶酔境を、二つの枕詞と少ない漢字でゆったりと表現した佐藤佐太郎の歌は、調べも美しい。

雨やみてあぢさゐの藍みなぎれる藍の珠より満ちてくる刻       雨宮雅子

この歌は、冒頭の二首を合わせたような歌であるが、時間の経過がはっきり詠まれており、雨によって鮮やかになった藍色に、強い生命力が感じられる。

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葛原妙子や雨宮雅子の歌のように、紫陽花の球体に注目して詠んだ俳句や短歌がいくつかある。

あぢさゐの毬より侏儒よ駆けて出よ   篠原鳳作

あぢさゐの毬(まり)寄り合ひて色づけり鬼(もの)籠(こ)もらする如きしづけさ    高野公彦

白紫陽花そこに霊魂あるごとく      鈴木康世

紫陽花のみな玲瓏をもちきたる      広井和之


「あぢさゐの毬」には、「侏儒(こびと)」が隠れていたり、花の集まった暗がりは、「鬼(霊魂・もののけ)」を籠もらせているようであるという。どちらも、見つからないように息を潜めているのだろう。そう思わせる深閑とした気配が、紫陽花の花群にはある。暗い中に浮かぶ「白紫陽花」に「霊魂」があるように見えるという句も、共感できる。最後の句の「玲瓏」という語は、玉の持つ透明感・清澄感を表し、字形も意味も紫陽花にふさわしい。

あじさいの記憶はいつも弟と拾いてバケツに浮かべし花(はな)毬(まり)      花山周子

あぢさゐを小突いてこども通りけり   小野淳子


こちらの歌と句は、子どもの目に映る紫陽花を詠んだもの。色の美しい、大きな球体の花は、子どもにとっても見過ごしできない存在なのである。

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〈水を好む〉

しかし、何と言っても美しいのは、雨を受け、生気を取り戻した紫陽花の花である。梅雨時、日当たりの悪い場所で、青色に咲く花の姿は、人目を引き、多くの人を魅了する。アジサイの学名に愛妻「お滝さん」の名を付けたシーボルトもその一人であろうが、次に挙げる歌の作者も、紫陽花に魅せられた一人ではないかと、私はひそかに思っている。

あぢさゐの花の花間(はなま)にやはらかく雨ふりしづむ 夕雨夜雨        高野公彦

あぢさゐの花の内部の青淵にしばし泊てゐむ旅ゆくみづは                高野公彦

きらめきてとき過ぐるなりあぢさゐの毬の持つあめ雫しやすく               高野公彦

あぢさゐの花踏みてゐしほそき雨その雨の音ひぐれてつよし               高野公彦


第一回若山牧水賞を受賞した高野公彦は、海にも川にも近い地域に生まれ育った。氏の歌集名には、「水木」「汽水の水」「水行」「水苑」など、「水」の入った名が多い。紫陽花は、「水」との関わりが深い花であるが、こう見ると、氏の歌に、紫陽花の歌が多いのは、偶然ではないような気がする。
夕方から夜へと降り続く雨が、小さな花と花の隙間に、そっと入り込み落ち着くさまを詠んだ一首目。球体となった花の内部には、やがて水の旅を始める雨の滴が、しばし留まっているのだろうという二首目。やがて雨も上がり、朝の光を受けた紫陽花の毬からは、溜まっていた雨が雫していくという三首目。どれも、水の行方を見守る作者の目が優しい歌である。四首目の歌には、静かな中、紫陽花に降る雨を気にかけている作者がいる。紫陽花と雨への、作者の関心は強く、それは愛情と呼びたいほどだ。

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紫陽花やはなだにかはるきのふけふ   正岡子規

また雨を呼ぶあぢさゐの色なりけり    成瀬櫻桃子

ゆあみして来てあぢさゐの前を過ぐ    山口誓子


「はなだ(縹)」は、薄い藍色のこと。学名で「水の器」の意味を持つアジサイは、酸性土であれば、水色、縹色、青色、藍色など、青色系統の花が、アルカリ性の土であれば、紅色系統の花が咲く。
二句目の「雨を呼ぶ」色も青色系統であろう。色が変わるため「七変化」などという別名もあるが、もともと「あぢさゐ」の語源は「集真藍」。本物の藍で染めたような色の花が、たくさん集まって咲くことに由来するという。「ゆあみ(湯浴み)」の後のさっぱりした肌にも、青系統の紫陽花が似合いそうだ。

紫陽花の醸せる暗さよりの雨        桂 信子

藍色の花の集まった日陰は、雨を呼ぶ。紫陽花は、水の好きな花だ。水辺の紫陽花は生き生きとして、美しさが増す。梅雨時に咲く花でよかったなと思う。  

天も地もか黒となして雨の降り紫陽花の花水際に咲く                    都筑省吾

紫陽花はおもたからずや水の上      富沢赤黄男

池や川の畔で、水の方へ茎を伸ばした重たい花が、水面に触れそうになっている様子が、目に浮かぶ。

水鏡してあぢさゐのけふの色        上田五千石

水暗しあぢさゐの花映り澄む        野村泊月


静かな水面に映る紫陽花の影も、また青色であろう。見る者の気持ちも、場面と同じ静寂の中にある。

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〈生き物と〉

紫陽花の花の咲く時期は、生き物たちが活発に活動する時期と重なる。そんな生き物と紫陽花を取り合わせた句と歌を、次に見てみよう。

紫陽花に馬が顔出す馬(ま)屋の口       北原白秋

いのちじめつく紫陽花の咲くあたり       村井和一

曇り日に咲く紫陽花の花の下青年の蛇は埋められゐむ           前 登志夫

紫陽花に吸いつきおりしかたつむり動きはじめて前後が生ず        吉川宏志

紫陽花に雨きらきらと蠅とべり         飯田蛇忽


最初の句には、紫陽花の咲く馬小屋辺りの風景や、生真面目そうな表情の馬と花が並んでいる様子が見える。二句目の「いのち」は、ナメクジだろうか、それ以外の小さな生き物たちもいろいろいそうだ。それらすべての「いのち」を受け止めている作者の姿が伺える。前登志夫の歌も、似たような場所で詠まれているのだが、この「青年の蛇」は、単純に「青年」の年頃の「蛇」と読んでいいのだろうが、さまざまな連想を呼ぶ不思議さがある。これらの句や歌のどれも、花は紫陽花でなければならないと思うほど、それぞれの生き物と花が調和している。
吉川宏志の歌は、目の付け所が面白い。「かたつむり」の進む方向が「前」。当たり前のように決めていた「前後」であるが、本当にそうでよかったのか。丁寧な観察から得るものは多い。飯田蛇忽の句、まだ若い蠅の輝きときれいなさまを詠んで、この季節の生き物の溌溂とした感じをよく表している。

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さて、この季節、生き物の仲間である人間は、紫陽花とどんな関わりを持つのだろう。

紫陽花の花を見てゐる雨の日は肉親のこゑやさしすぎてきこゆ       前川佐美雄

紫陽花や親と住みゐる幸不幸      橋本風車

紫陽花や身を持ちくづす庵の主     永井荷風


雨の日は外出がままならず、ゆったり過ごすことも多い。そのおかげで、体や心の疲れがとれ、しっとりとした気持ちになる。そこに親がおり、目に優しい紫陽花が庭に見えるとなれば、現状にどっぷり浸りたくなるのも人情であろうか。こう並べてみると、物語の一つも作れそうである。

森駈けてきてほてりたるわが頬をうづめむとするに紫陽花くらし      寺山修司

過ぎゆくは紺の歳月 紫陽花のめぐりの闇のなまあたたかし        小野興二郎


この二首、ともに紫陽花の花群の暗さ・闇を詠みながら、妙に人間臭いのは、「ほてる頬」、「なまあたたかい闇」という表現のせいだろう。青春の不安感を思い出させる歌である。

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あぢさゐやきのふの手紙はや古ぶ    橋本多佳子

花の色の変化から、時の移りの速さが思われる。

紫陽花やはかなしごとも云へば云ふ   加藤楸邨

紫陽花のふふむ雨滴を揺りこぼす言はば言葉がすべてとならむ      河野裕子

嘘いくついいわけいくつ吐きて来しくちびるに花花は紫陽花         藤原龍一郎

何ということなしに言ってしまう言葉。しかし、言葉を口にした瞬間から、人は言葉にとらわれる。言葉が真実を伝えきれるわけではなく、かえって、たやすく嘘をついてしまうのも、言葉の怖さである。
言葉と紫陽花の色の、はかなさに思いがゆく。

ほほえみの裾がめくれて退屈な紫陽花が見ゆ陽にふくれつつ           吉川宏志
エミリといふ名にあこがれし少女期あり紫陽花濡るる石段くだる          栗木京子
思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花           俵 万智


最後の三首は、従来とは違った方向で詠まれた紫陽花の歌である。新しい取り合わせが、紫陽花の別の姿を見せてくれそうな予感に満ちている。

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テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
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