心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-今年の読書
 今年も締めはやっぱり「本」で…。

 「漱石」関連本
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夏目房之介著 『孫が読む漱石』 (実業之日本社/2006年/1800円)
夏目漱石著 『明暗』 (岩波書店・夏目漱石全集15/新字体1990年/2400円)
水村美苗著 『続明暗』 (筑摩書房/1990年/2060円/旧字体)

水村美苗の書いた『本格小説』が面白かったので、だいぶ前の作品になるが『続明暗』を読みたくなった。漱石の小説は若いときに結構読んだのだが、『明暗』は作者死去により未完ということを知っていたので読まずに来た。
漱石をちゃんと読むのは学生時代以来になるので、まずは『孫が読む漱石』を読んだ。次の一節で、著者の夏目房之介氏に親近感を抱いた。
引用~中学の頃、武者小路実篤の「馬鹿一」ものという、これも浮世離れした小説を好んでいた。要するに俗世間が嫌いだったのだ。まぁ、思春期にありがちなことだけれど。
私も、中学時代「馬鹿一」が大好きで、このように生きたいと思ったのだ。もう一度、大人の目で読み直してみたい。

『明暗』のあらすじは特に書かない。主人公津田の心理状態をやたら詳しく書いているというのが、全体的な印象である。やっと盛り上がって、これからどうなるか?というところで中断しているから、読み手の想像力をやたら刺激する。それとは関係なく、初めのほうにある、主人公の叔父藤井についての説明(p57)が、なんだか漱石自身を揶揄しているようで面白かった。
引用~一種の勉強家であると共に一種の無精者に生れ付いた彼は、遂に活字で飯を食わなければならない運命の所有者に過ぎなかった。

さて、『続明暗』である。これは、装幀・字体・文体と漱石の『明暗』をしっかり頭に入れての続編。ぐいぐいと力強く読み手を引っ張っていく力(勢い)は、こちらの方がある。どういう結論に持って行くかな?と最後まで興味が途切れず面白く読めたのは、さすが。


 息子たちに贈った本
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藤尾秀昭・文/片岡鶴太郎・絵 『心に響く小さな5つの物語』 (致知出版社/2010年/952円)
同出版社から出ている雑誌「致知」の中の巻頭の一文を集めた『小さな人生論』という本の中から、小学生にも読めるように絵とふりがなをつけて抜粋したもの。こちらの原本『小さな人生論』1~4もいい。志の立派な本だと思った。多くの人に読んで欲しい。

小泉幸仁著 『1日1分生きる力-折れない気持ちのつくり方-』 (同友館/2010年/1500円)
当たり前と言えば当たり前のことばかりかもしれないが、いいことが書いてある。きちんと生きようと励まされる思いがした。一つの章が短いので、題名通り1日1分ペースで繰り返し読みたい。
帯文~死ぬこと以外はかすり傷/ここから先の一歩は勇気が要るぞ 自分を変えるのはこのゾーン

ヴィスワヴァ・シンボルスカ詩集 『終わりと始まり』 (沼野充義訳/未知谷/1997年・2010年3刷/1400円)
作者はポーランドの詩人。ノーベル文学賞を受賞した作品が収めてある。久しぶりに、大人向けの、読みやすいが歯ごたえのある現代詩に出会えたという気がした。言葉は平明だが、深くて力がある。


 生き方を考えさせる本
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石井幹子著 『光が照らす未来 照明デザインの仕事』 (岩波ジュニア新書/2010年/960円)
冬になると最近の街はライトアップで賑わうが、その先駆者といえる照明デザイナーの自伝的随筆。自分の才能や興味を見極め、自分の力を試し伸ばすべく、物怖じせず行動していく筆者の姿には、大いに励まされるものがあった。海外に行くことも、会社を興すことも、彼女にとっては高いハードルではないのだと思う。今のライトアップは、彼女の存在がなければ無かったかもしれない。前を向いて生きている人は、かっこいい。

金 美齢著 『凜とした生き方-自分の人生、自分で決める-』 (PHP研究所/2007年・2009年18刷/945円)
この筆者もかっこいい。書かれていることは、すべて納得&共感を覚えることばかり。ただそれをきちんと実行できるかどうかが問われるところだ。本物の大人になれるよう努力したいと思う。
引用~どういう社会であるべきなのか。自分はその社会と、どのように関わって生きていくのか。自分の役割は何なのか。自分の頭で考え、決断することが何よりも必要なことだ。自分をまっとうすることは、そこからしか始まらない。

安野光雅著 『語前語後』 (朝日新聞出版/2008年/1600円)
特に前後の脈絡はなく気ままに書かれているので、つれづれに読むのがふさわしい本。時々、心の琴線に触れる言葉が出てくるのが、この本の魅力。
引用~外から見えない病気や家庭の事情は誰にでもあり、言わないだけで、言いたいことは山ほどあるものだ。そして、誰もが自分の努力で克服してきている。それが先に書いた「誇り」である。
引用~「見えるとおりに描かなくても、そこに描かれた世界とおなじ世界があればおもしろいな」と感じてもらえるような絵を描くために、よく見ることが大切だと言っているのである。


このほかに、講談社創業100周年を記念して出されている「15歳の寺子屋シリーズ」が、いずれも90ページ程度で分量は少ないが、内容が充実していて、若者だけでなく中高年の私でも励まされる、人生を考えるのにとてもいい本だ。


 ある方(=古本屋をされていた本好きの方)に微笑みとともに「書痴」と言われてしまいました。私の小遣いの中で一番出費の多いのは本代ですから、確かに「書痴」に近いかもしれません。といっても、新刊はほとんど買いません。著者の方には印税が入らず申し訳ないのですが、安く手に入る古本をついつい買ってしまう私です。
ちなみにこの9冊の内、借りたのが3冊、中古が3冊、新しいのが2冊×2人分(プレゼント用)、モニターで頂いたのが1冊(毎月感想を載せる予定でしたのに、果たせませんでした)。今年は183冊読了。たくさん読むことより、読んだことを身につけていくことが大切だと思いつつ、活字を追うときの無の境地が心地よく、気がついたらいつも周りに本の山ができているという状態です。
   
  来年は、本棚の整理をちょっと頑張ろう!&もっと外に出て体を動かそう!
   今年一年、ブログを読んで下さって&いろいろ励まして下さって、ありがとうございました。
   来年もお付き合い頂けたら嬉しいです。皆さん、よいお年をお迎え下さい。  


テーマ:最近読んだ本 - ジャンル:本・雑誌

手作りが好き!-プレゼントをありがとう!
素敵なプレゼントをありがとう!

 今年は、歌集を出したことがきっかけで、たくさんの新しいご縁ができたり、今までの友人・知人との親交が深まったりと、嬉しいことがたくさんありました。「ぞろ目」を意識して出した歌集にちなんで、10月に続き、11月・12月も「22日」を指定して贈り物を下さった方が何人かありました。10月に「いろんなプレゼントをありがとうございます。」と書かせて頂いたのですが、その後も、ラ・フランス、みかん、りんご、干し柿、栗饅頭、海老せんべい、ケーキ、お茶、切手、箸置き、ストラップ、本、たくさんの歌を引用して下さったお手紙、拙歌を紹介して下さった冊子など、ほんとに申し訳ないほどたくさんのお心遣いを頂き、感謝しております。
今回は、今年頂いたいろいろなものの中から「手作りが好き!」にふさわしいものを、三点紹介いたします。


       IMG_9992keikosankara2010.jpg 【バッグ外側】

       IMG_9994keikosankara2-10.jpg 【上のバッグの内側】

 keikoさん手作りの「パッチワークのトートバッグ」
「触るたびにパソコンの具合が悪くなり&家族の世話で大忙しのため、最近ブログにご無沙汰です。」という内容のお手紙とともにkeikoさんから送られてきたバッグ。拙歌集の『大空の亀』をイメージして、亀の甲羅のパッチワークで、そして、なんと内側には「空を泳ぐ亀の刺繍」がしてありました!一つ一つの布が小さいので、大変な時間がかかったことと思います。その上、猫の模様やお花の模様など、贈る相手のことを考えた布選び、中敷きや持ち手も、ものすごく丁寧に作ってあって、keikoさんのきめ細やかな心遣いが熱く伝わってくる素晴らしいバッグです。A4版が入る大きさで、使い勝手もいいし、色合いも抜群。とにかくすごい!ありがとう!一生、大切に使わせて頂きます。



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 原田繁昭先生の「インドの絵」
原田繁昭展『魅惑インド』のハガキやポスター、チラシなどをパソコンで制作したお礼にと、絵を頂きました。絵を運んだ人、通訳・翻訳をした人など、すごくお世話になった五人に、一番好きな絵をプレゼントしたいと連絡があり、夫と私がどちらも一番好きな絵だと話していた作品を頂きました。55×70センチの水彩の大作で、わが家のメインの壁に飾っています。インド総領事に花束を渡している写真やDVDなど、今までの私の人生ではあり得ないような記念品も頂いて、ほんとに嬉しく思っています。



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 eちゃん親子からのプレゼント
いつも温かい言葉と楽しいお付き合いで、ほっこりさせてもらっていて、それだけで充分なのに、先日こんな可愛いプレゼントが届きました。京都知恩寺の「てづくり市」に親子で出店をするようになって三周年記念ということで、娘さんが自作のアクセサリーを写真にして作ったカレンダーです。一緒に入っていた小さな靴下が、いかにもeちゃんらしくて、明るく可愛い声が聞こえてきそうです。毎月15日のてづくり市は、抽選なので毎回出店というわけではないそうですが、皆さん、もし出かけられたら「ゆうづつや」さんに寄って、おしゃべりをしてきて下さいね。優しく楽しいお二人とのやりとりに元気が出ますよ。

テーマ:こんなの作りました♪ - ジャンル:趣味・実用

心に響く風景-小春日の小旅行
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  【室内から眺めたお庭】

 12月初めの好天に恵まれた一日、小旅行に誘って頂き、少し遠くに出かけました。
姫路までは電車で、あとは立派な車で案内して頂き、まるで夢のような一日を過ごしました。

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          【池に映る紅葉】

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          【裏庭の紅葉】

関西花の寺二十五カ所の一つ、兵庫県神崎郡福崎町にある「應聖寺(おうしょうじ)」です。
雄大な自然を背景にしたお庭を、たくさんの句碑や何百年も前の墓碑などを拝見しながら散策しました。
二月の節分、六月の沙羅の時期が特にお勧めだそうですが、前の住職の彫られた石像や扁額の書、わざわざ掛けて下さっていた伊丹三樹彦氏の句・書の軸も素晴らしかったです。
時々句会や歌会が開かれるというお座敷で、お抹茶と「沙羅」という名の和菓子を美味しく頂きました。
ここには書ききれないほどたくさんのお話を伺い、その一つ一つが鮮明に心に残っています。

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  【写真の涅槃釈迦も、前の住職が彫られたそうで、お腹の部分はさつきの生け垣です。】
  【この涅槃釈迦を詠まれた伊丹三樹彦氏の句が十句、立派な石碑となって傍にあります。】


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        【パンフレットの一部】

続いて、神崎郡市川町にある「かさがた温泉 せせらぎの湯」に。http://www.seseraginoyu.com/
素朴な食事処で「花かご弁当」を美味しく頂き、同じ敷地にある「思い出博物館」を案内して頂きました。
思っていた以上に充実した素晴らしい博物館で、分野別に四カ所(蝶6000頭、昔の車40台、カメラ800台、民具・農具300点)を、詳しい説明を受けながら見学しました。
懐かしい物もたくさんありましたが、特に「蝶」の展示は美しいし勉強にもなって、感心しっぱなしでした。
温泉は、お湯質が柔らかく温度も入りやすくて気に入りました。
最後に、素敵なご自宅でお茶を頂いて、楽しく満ち足りた一日を終えました。
近くでは螢も見えるそうなので、必ず再訪しようと思っています。

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     【これは装飾額ですが、広い室内に地域別・特徴別にきちんと立派な展示があります。】

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   【1階と2階に、すごい車がさりげなく飾ってあり、驚きました。私はこの青い車が気に入りました。】

 帰りの電車で、「幸せな一日だったわねえ」と話しこんでいたら、目的地である終点駅に着いたのも全く気付かず、三駅ほど戻ってから「あら、なんか変だわね」というような出来事もありました。
ほんとに夢見心地の一日だったのだと思います。

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テーマ:日帰りお出かけ - ジャンル:旅行

心に響く詩歌(歌集)-倉松しん子歌集『海がはこぶ』
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倉松しん子第二歌集『海がはこぶ』 (青磁社/2010年/2500円)  

真っ白な表紙に凹版でタイトル、背表紙の文字は青に近い紺色の歌集で、開くと空の写真が広がります。作者に直接お目にかかったことはないのですが、歌集を一読して、元気な息遣いを感じました。私より少しだけ年上の方なのでしょう、自立していく子どもへの思いを詠んだ歌に共感を覚えました。切なさを詠みつつも暗くならないのは、作者が天性の明るさを持っているからではないかと、思い切りのいい歌を読んで思いました。私なりにテーマを設定して、分類してみました。【写真はすべて、京都長岡京にある光明寺で、この秋撮ったものです。】

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子離れ…

息子に確と云いたきことのある口が魚の尾骨を噛み締めている

子育ては苦手と子らに告白す大雨なれば何でも云おう

その頃は育児相談聞く暇もなくていまごろしみじみと聴く

子の手紙にお母さんへとありて今日母であること思いて過す

夏の夜ふらりと猫に会いに来る息子の背(せな)に〈さびし〉とルビふる

行くでなく帰るといいてパソコンを背負い日本を離るる娘

子の発ちて二番目くらいのさみしさに日暮里駅にふわり降り立つ

睡たくて子の泣くなども忘れにき ときおりわれが泣くことにする

梨ケーキ焼き上がるころに帰りゆく息子の背(せな)を猫らが見詰む

縁結びの効ある野苺生りに生り代りてあさあさこの母が食ぶ


*どの歌も、「私もです!」と声を掛けたい気持ちで読みました。「行く」を「帰る」と言われた時の寂しさを、私も常々感じて、何回か作歌を試みましたので、特に共感を覚えます。自分自身を客観視して、戯画化できるところに、作者の芯の強さを垣間見る思いです。

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表現の妙

スカートのゴムのきつさよ 土曜までがっぷり椅子に穿かせておこう

窓越しの空に腕上げ真昼間を溺るるさまに泳ぎて春過ぐ

生ゴミも積みて近くに引っ越せば夕日が遅れてじわりと従(つ)き来

寝るつもり無けれど深く寝てしまい二時間老いてキッチンに立つ

手づかみに食ぶるも似合わぬ歳となりフォークに刺せり夢やなにかも

雨粒のひとつぶずつに応えいる水面見るうち疲れてしまう


*「がっぷり穿かせる、溺るるさまに泳ぐ、生ゴミも積む、二時間老いる、夢やなにかも刺す、ひとつぶずつに応える水面」、気持ちに余裕があるので、クスリと笑いを誘う発想・表現となっています。作者の真骨頂は、こんなところにあるのではと思いました。

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作者を支えてくれる存在

伝わらぬ言葉いくつかもちて生く猫にはすんすん伝わる 笑みも

沈丁花の匂をはじめて嗅ぐ猫よおまえも母をたっぷり想え

おもいがけぬロックンロールに昼過ぎの床を拭き上げ猫をも洗う

足早に階段下りゆく猫の背のつちのこに見ゆ 電話をせねば


*猫との生活は、心が通うようで慰められたり励まされたり…四首目、わが家のハオも「つちのこ」に見えることがあり、「発見しました!」と言いたくなるので、同類の猫のみならず同類の人間も見つけて、嬉しくなりました。

植うるなら渋柿にせよと老婦いう甘柿一樹は食い切れぬとぞ

星ひとつねだるわたしに地を打ちてここが星だと父の云いにき

このわれを決して嫌いと云わざりし母おもいおり白芙蓉の辺に


*作者は『星の王子さま』が好きで空想壁のある、お父上にとっては少し心配な子どもだったのかもしれませんが、この父上もなかなかのものです。

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心をよぎるものたち

白鷺の傍あゆむ今に水色の付箋をつけて頭(ず)にしまいおく

野の花を待つ鉢に来てまっさきに立ち上がりたるは春女苑なり

風知草を眺めての日日これまでに知らざる風の絶え間なく生(あ)る

この先はよく笑う人を友とせん大き白花咲く樹もよろし

抽斗の中身そっくり捨てたれば春風どんと四角に入りぬ

ひとひらのハンカチ洗う水量に遠くのいのち思う真昼間

転びたるスケーターの母のかなしみが寝付くまで去らず 風のいできぬ

問い合わせの電話の向こうのため口にわが物云いをじわじわ直す

樹の名札に住所も記すべし今日ここに会いたる礼を明日には出さな

空色の洗濯挟み二つ選りシーツをひろびろ大空に留む

自転車の影がわれ乗せ川沿いの家並の屋根大きく越ゆる

前の駅うしろの駅の見ゆる町陽は沿線に細長く照る


*どれもいい歌。私もいつかこんなふうに詠めたらいいなと思って、歌集を読ませていただきました。ありがとうございます。

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テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

あんなことこんなこと-この秋のこと…いくつか
この秋のこと…いくつか

IMG_96981011.jpg 【箕面】


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興福寺創建1300年を記念して、五重塔初層・東金堂後堂の特別公開(10月9日~11月23日)があったので行ってきました。新しくなって、ガラスの妨げなしで阿修羅像に逢えるようになった興福寺国宝館にも入りました。昔、何度も見た阿修羅像ですが、やはりガラス無しは最高です。
大好きな仏像に久しぶりに逢えた記念に、『平城京の仏たち』(金子啓明監修/東京美術/2010年/1000円)を買いました。
奈良町にあるお気に入りの店「天ぷら 飛鳥」で、夢殿弁当を食べたあとは、奈良公園を気ままに散策。南京櫨・銀杏・紅葉が美しく色づき、鹿にもたくさん会え、楽しかったです。公園のいろんな所で、中国からの新婚さんと思われるカップルと写真屋さんの4人組が、しっかりポーズをとって記念撮影をしていました。


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原田繁昭氏の個展「魅惑インド」 (11月23日~28日)オープニング・セレモニーで、ゲストで来られたインド総領事ヴィカス・スワラップ氏に花束を渡しました。思いがけない役目のおかげで、とても穏やかで知的な雰囲気のヴィカス・スワラップ氏と握手までするという嬉しい出来事がありました。
氏は、映画『スラムドッグ$ミリオネア』(第81回アカデミー賞で作品賞など8部門受賞)の原作『ぼくと1ルピーの神様』(2009年/ランダムハウス講談社/800円)を書いた人でもあります。ミーハーの私、帰宅後早速、本を買って読んだのは言うまでもありません。インド社会がよく描けていて、しかも、どんどん読み進めたくなる工夫がしてあって、小説としても面白く読めました。
セレモニー会場が、箕面観光ホテルだったので、早めに出かけ、滝道の紅葉を見たことと、元同僚にたくさん会えたことも、嬉しいことでした。


          matoryosyika.jpg  マトリョーシカ薄2

今年出した歌集の記念にぜひ買いたいと思って予約していた『マトリョーシカ大図鑑』(沼田元氣写真・文/二見書房/2010年/2400円)が、やっと届きました。拙歌集の中にある大切な一首で、マトリョーシカの絵は次男が描いてくれました。歌集を見たTさんが「マトリョーシカの持っているものには意味がありますね。」と書かれていたので、次男に尋ねてみました。次男が言うには、「抱いているものは、家族それぞれが好きなもの」だそうで、「ギターは兄、猫は自分(次男)、花は父、果物は母(私)」だそうです。私は、下絵の段階で何回も見ていたのに、そんな配慮に全然気づいてなくて、自分の大雑把さに呆れたのでした。

子ら生(あ)れし二月はいつも思ひ出をマトリョーシカのやうに取り出す



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 友人と恒例の晩秋の散策。京都国立近代美術館で見た「上村松園展」(11月2日~12月12日)はもちろん素晴らしかったのですが、併設展で初めて知った「三谷十糸子(としこ)」の絵に、二人して惚れ込んでしまいました。京都国際交流会館2階にあるフランス料理レストラン「ルヴェソン ヴェール岡崎」でランチののち、「京都オルゴール堂」に寄って、ミスチルの曲オルゴール版を購入。南禅寺から銀閣寺へ哲学の道を散策。紅葉も美しく、久しぶりの哲学の道は、なんだか学生時代を思い出させる懐かしさに満ちていて、とても幸せでした。
ぜひにという友人の勧めで、大正から昭和初期の時代を感じさせる民家の並ぶ道を抜けて、吉田山の小径を上り、人気のカフェ「茂庵(もあん)」(http://www.mo-an.com/)へ。なんと、以前に来て、満員で入れなかった憧れのカフェでした。
JR京都駅10時集合・18時解散で、たっぷり歩いた豊かな秋の一日でした。ミスチルの歌は、歌詞だけでなくメロディもステキ!先日買ったオルゴール版のCDをうっとり聞きながら、これを書いています。


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 今後行きたいと思っている特別展は、
「筆墨精神-中国書画の世界-」京都国立博物館2011年1月8日~2月20日
「パウル・クレー おわらないアトリエ」京都国立近代美術館2011年3月12日~5月15日です。

    IMG_97031011.jpg 【箕面】

テーマ:日記 - ジャンル:日記

心に響く詩歌(歌集)-榎本久一歌集
榎本久一歌集『されど明日あり』 (雁書館/1992年刊/2200円)

   enomotokasyusoto.png 【カバー】  enomotokasyunaka.png 【本体】

 とても落ち着いた気持ちで読めるいい歌集でした。作者の榎本久一氏には、何年か前に数回伺ったことのある京都歌会で、お目にかかったことがあります。たまたま私が上海旅行から帰ったばかりの時に、榎本氏が上海旅行の歌を出されていたのと、丸顔の穏やかで優しいお顔が、私の父に似ていたのとが嬉しくて、親しみを感じたことを覚えています。
昭和37年から平成元年の500首が収めてあります。長きにわたって詠まれた歌を、ご本人や家族の歴史をたどるように読ませていただきました。

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家族を詠んだ歌

親族のなか父葬る灰うけて佇ち居るきみを離れ見ており

仮面ぬぎて素顔に戻れざる顔を闇に晒して妻は眠れり

器官一つ切除されたるわが妻が野の花いくつ描きてこもれる

二人居の物音もなき部屋に見え遠き野末の花火重なる


*三首目の歌が、私自身の病後(ふだんは描かない絵が妙に描きたくなり、部屋にこもって小さなスケッチブックに何枚も描きました。)と重なり、夫と妻両方からの気持ちが切なく、またしみじみと届きました。



言葉知らぬわがみどり児は出でて来し麒麟にお辞儀しつつ見いるよ

父なればわがおさな女の馬となりお伽の国をいくたび巡る

その顔も吹き昇らせて若者とわが幼女のシャボン玉吹く

遠々に離れいるとも巡り来る汝が生まれし朝霜晴れの朝

遠く住む子の残したる自画像の首の細きを父が見ている


*幼いときから子が自立していくまでを、愛情込めて詠まれた歌の数々。二首目は、私の父の背中とそこに乗った自分のことを思い出しながら、子どもの時の気持ちで、終わりの二首は、子育てをしてきた親の気持ちで読み、豊かな気持ちになりました。


父母
死を見つめ白める父の双の眼よわが生き方を看守(まも)り来し眼よ

わが丈の思わぬ高さ死の激痛了え黙したる母より立てば

嵐来る空の夕べはぼろぼろの雲となり飛ぶ父の母の屍(し)

亡き父母の灰色の愛わが裡に冬の榎となりて枝伸ばす


*亡くなられたご両親のことを詠まれた歌に、「親の前にはずっと子どもである」という人間の真実が読み取れ、共感を覚えました。

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心象風景を詠んだ歌
地下
先ばしるわが靴音を追う如く猶深き地下道へ降りゆく

地下口へ出づべき吾を越えてゆく影の女ら影の男ら


背後
振り向かねどわが背後にありありと疾風と共に遠ざかる景

背後より確かにわれを支えいる十四五本の直なる紫苑


枯草・枯葦・枯原
枯草に雨しみ止まずわが衣服温めいるはわれの体温

遠ざかるものをひたすら見つつ立つ枯葦の波引き潮の波

失踪の果てなる吾や枯原の日照雨(そばえ)の中へ車駆けらす


吾・己
爪ふれて夜のコンクリートを過ぐる音犬も己れの意志もて行くを

吾めぐり敵のみあるを支えとし一日一日を耐えて行くべし

いつしか 獣性喪いたる吾に 渦巻きて夜の霧は流るる

わが熱き時も過ぎたり紅枝垂桜(しだれ)仰げる妻と娘につき歩む

ことわりもなく涙腺を出づるゆえ表面張力水よりまされ


*日々の暮らしの中によぎる思いや、心の深いところで耐えてきたこと、現実か幻想か分かちがたい境界に気持ちが存すること…、さまざまな感情をこれらの歌から読み取りました。自分自身のつかみきれない感情とどう折り合いをつけながら生きていくのか、私はこれらの歌群に教えてもらった気がします。

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自然や他の事物・他者を詠んだ歌

昏れなずむ夏草原に自らの煙照らして野火は燃えつぐ

自らの落葉の青き煙受け冬樹己れを透明にせり



終日を灯せる地下の駅にして朝には朝のすがしさがあり

雨降れる駅に射しくる夕茜一日勤めし一群を染む

雑踏の過ぎたる夜のコンコース刺すがに残りいる義足音


自然
日照りつつ降りいる雪がいくたびも薔薇の莟に影映しゆく

着地点求め窓より入りし絮走る車内を光りつつ飛ぶ

乾きつつ昏れなんひと日草の穂の芒(のぎ)ひと向きに吹かるる声す


世の中
莨吸わぬわれの火鉢に勧誘に来し保険屋が吸い殻を捨つ

被害者われらの指紋採らるるのみにして駅舎荒しの捜索終る

逝く水に透きて散らばう人のためいのち失いしものたちの殻

理髪台に人入れ替り立ち替わる遺髪とならぬ髪を残して


*日々の暮らしの中の、ちょっとした発見や、心の揺らぎを、このような歌の形に留めることができた時、歌人は歌を詠む喜びを覚えます。最初に作者に抱いたイメージが、父と重なったためでしょうか、なんだか父と静かに語らっているような幸せを感じながら読んだ歌集でした。ありがとうございました。

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                         【写真はすべて今秋の万博公園です。】

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

心に響く詩歌-伊丹三樹彦第24句集『続続知見』
伊丹三樹彦 第24句集『続続知見』(沖積舎/2010年7月刊/3000円)

zokuzokutiken.jpg zokuzokutikenura.jpg 【カバー】 zokuzokutikennakaomote.jpg zokuzokutikennnakausiro.jpg 【本体】

 *よろしければ、拡大して、カバーの写真や帯文をお楽しみ下さい。

 伊丹三樹彦氏は、2005年7月に脳梗塞で倒れられたあと、2006年4月より「病後2万句」をめざし日々作句に努められ、見事な回復力で、2010年10月には、「2万句」を達成されました。単純割で1日平均12.26句という数字は、驚異的です。この句集は、『知見』三部作の完成本として、2009年1月から2010年5月までの2560句が収めてあります。たくさんの心ひかれる句の中から、私なりに厳選を重ね、テーマを設けてみました。
*以下の写真はすべて出版記念の絵はがき(写真+俳句:伊丹三樹彦作)より

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〈俳人として生きる〉

盆梅展 俳人顔でおし通す

未使用の言葉幾万 瑞穂の国

燕に仰向くは俳人 あやしむな

白いお髭でいつもお洒落な伊丹三樹彦氏は、見るからに「俳人顔」。好奇心旺盛な俳人にとっては、「盆梅展」のような趣ある催し物も楽しみだし、空を行く燕も軒下の子燕も大いなる関心の素となる。長い人生のほとんどを言葉に費やしても尚、「未使用の言葉幾万」という感慨には、日本語の豊かさ・美しさに心を寄せる作者が、強く感じられる。


〈病後の体、人生を思う〉

お互いに病後の握手 麦の秋

幼児期があっての老年 さくらんぼ

杖突くにも品格おのずから 小春

つくしんぼ 予後は一からやり直し

撫でている 仏にはないのどぼとけ

公園のベンチに委ねた 余生の場

無事に起き 無事に眠れて 四月尽

歩くのが大好きな作者だが、病後は遠出が許されず、近くの公園や家の近辺が、散策の主なコースと聞く。それでも、次々句作ができるのは、深く鋭い観察力と自己を見つめる洞察力と過去に蓄積した多くの見聞が、力となっているからだろう。ここにあげた人生を詠んだ句は、ひよっこの私にはまだまだ詠めない作品群である。


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〈生き物への眼差し〉

群鴨の 向きを変えるも一斉に

亀うらら 亀甲文字の世に遠く

飛ぶ鳥にも序列 吾ならしんがりか

とまらねば鳴けず 一樹に蝉の数

耳鳴りも手伝っている 虫の夜

影は地を走っているぞ 伝書鳩

これらの句には、自然体で生き物と一体化した優しさがあり、読み手も同じ目線を持つこととなる。鴨、亀、飛ぶ鳥、蝉、虫の音、生き物の影…、私も日常接するものばかりなので、大変親しみを覚えました。実は、今も虫の音のような耳鳴りを聞きながら、これを書いています。誰か耳鳴りの治し方、ご存知ないですか?


〈植物を愛でる〉

ありなしの流速に乗る 花筏

邂逅の多くは路上 立葵

薔薇園の渦中に浮かぶ 泳ぎもする

落日を真芯にとらえ 彼岸花

丈高きまま 低きまま 枯蓮

土地人の花蔭選ぶ 立ち話

遠くから手を挙げる友 プラタナス

植物だけを真剣に観察した句も、生き生きとして素敵だが、人との関わりの中に配された花も、取り合わせがぴったりで心ひかれる。どの句にも、花が好きで、人が好きで、という作者の温かいお人柄がよく表れている。


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〈人の手になる物への関心〉

狛犬は口開けたまま 黄砂降る

落下点までの上昇 噴水力

斑鳩に三塔揃う 柿日和

吊革の総揺れ 勤労感謝の日

大慈大悲 仏手の水掻き見逃さじ

ルミナリエ その周辺に闇を預け

どの句に詠まれた世界も、言われて初めて気付くといった世界であるが、どれも確かにそうだと得心がいく。物を見る力は、じっと見ることと表現することの繰り返しで磨かれるのだろう。


〈「春」の愁い〉

残されてばかりの長寿 春愁

春昼の何ともなしに 髭撫でて

足先で血は引き返す 春の闇

体調から話すが習い 春の辻

桜まで 桜までよと 生き延びて

来年を言わず 語らず 落花浴ぶ

長生きをすることは目出度いことではあるが、「残されていく」ことでもあり、何とも言えない寂しさがある。寝床で「足先で血は引き返す」んだなと、改めて思っている作者は「独りの人間」であることを噛みしめているのではないだろうか。「桜」は芭蕉の句「さまざまのこと思ひ出す桜かな」や西行の歌「願はくは花のもとに て春死なむ その如月の望月の頃」にも詠まれているように、人生と離れがたい花である。最後の二句は軽い調子で詠まれているが、大病を克服され、90代の日々を悔いなく生きておられる作者であるゆえに、とりわけ深いものがある。


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 巻末の解説に、たむらちせい氏が「三樹彦の句材の得意とするのは、春は梅に桜、夏は蝉、秋は彼岸花、冬は枯蓮」と書かれているとおり、これらの題材への作者のこだわりは相当なものがあります。同じく解説の中にある伊丹公子さんの詩が、おしどり夫婦を彷彿とさせる愛情に満ちていて、とても魅力的です。

現在90歳の伊丹三樹彦氏には、すでに10代で「長き夜の楽器かたまりゐて鳴らず」、20代で「誰がわざや天衣あかるむ花菜など」、30代で「父死して得たり無用の洋杖(ステッキ)まで」、40代で「古仏より噴き出す千手 遠くでテロ」といった代表句があります。これらの句を読むたびに、無駄のない表現と豊かな抒情にうっとりします。

50代で始められた「写俳(しゃはい)」には、現代版「俳画」とも言える芸術性があります。近年、写真と五・七・五の取り合わせを見ることが多くなりましたが、「写俳」の創始者としての伊丹三樹彦氏とその作品は、もっともっと評価されるべきではないかと考えます。なお、80代以降の作には「死ぬために生きる心得 霜柱」といった深い境地のものも多く、80年近く俳句を詠み続けてこられた姿勢に、私は学ぶことばかりです。


テーマ:俳句 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年8カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !
2017年 9月26日カウンター343434通過



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