心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
あんなことこんなこと―東日本大地震と福島原発事故に思う
 東日本大地震と福島原発事故に思う

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 【桜と欅の芽吹き(赤・緑)】 この平和な日常が被災地に一日も早く戻ってきますよう …

 「まず私も含めて日本人の多くが、〈熱しやすく冷めやすい〉〈流行に乗りやすい〉弱点を持っていることを自覚しておこう。その上で、これからの私たちは、この弱点を反省し克服して、新しい時代を築くべき重要な役目と責任があることを肝に銘じよう。」日々、さまざまな報道に接しながら、そんなことを考えました。

原発については、以前から映画や本などで多くの方が警告を発し、私もその危険性を感じていました。しかし、原発反対の声は、経済優先・地元振興などの声に消され、建設は推進され続けました。私たちの声を反映する唯一の手段といってもいい選挙で、賢明な選択をすること、真剣に考えることが、これからはもっともっと必要になるでしょう。本当にいい政治が行われるためには、有権者と政治家、互いの信頼関係がないと始まりません。

先日、テレビで、イースター島の悲劇(限られた資源の島で、巨石像モアイ作りを競い、その運搬のため森林が破壊され、食糧危機に陥り破滅した)を見ながら、海辺に並ぶモアイ像と、日本の海辺に並ぶ原発とが重なって見えて仕方ありませんでした。原発事故の早急な収束は当然として、脱原発の社会作りをしていかないと、この島の未来はないのではないでしょうか。真実を知っている専門家に大いに発信してもらい、正しい判断材料を得たいと思います。

このたびの大地震に原発事故が伴わなければ、もっと地震被災地の復興に精力が注げるだろうに、報道も行政も「まずは原発」。他への影響の大きさから重要なのは自明のことだし、現場で命を張って努力をされている方には頭が下がります。その上で、やはり原発がなかったならと思ってしまうのです。危険区域となり、そこで訳もわからず飢え死にしていく家畜たち、土壌も海水も汚染され、農畜産業も漁業も叶わぬ人たち、命の基本をないがしろにしてきてしまった私たちの危機を思います。

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        【山桜】

東日本大地震から気になって切り抜いていた朝日新聞の記事の中から、いくつかを以下に引用します(全文ではありません)ので、よろしかったらご覧ください。色つき文字が引用部分です。

4月3日 天声人語
日常というものがかくも微塵に破壊された光景を見たことはないと、遅ればせながら被災地に入って思った。・・・
当事者と非当事者との間にある越えがたい深淵。そこに懸ける言葉を持ちうるのか。「(3・11を)ただの悲劇や感動話や健気な物語に貶めてはいけない」。作家のあさのあつこさんが小紙に寄せた文の一節を、きびしく反芻した。
たぶん私たちも、言葉が枯れ葉一枚の意味も持たない壊滅状態から、ともに歩み出すしかないのだ。深淵を飛び越えたつもりの饒舌は、言葉の瓦礫にすぎないとあらためて思う。


★黙っていることの狡さと、饒舌であることの軽さの間で、傷ついた人たちをこれ以上傷つけることなく、なおかつ何かの力になれる方法はないものかと模索は続きます。ただ「忘れてないよ、気にしてるよ。」ということは、無力な私ですが伝え続けたいと思います。


4月6日 本当の「終わりと始まり」 池澤夏樹(作家)
正直に言えば、ぼくは今の事態に対して言うべき言葉を持たない。
被災地の惨状について、避難所で暮らす人たちの苦労について、暴れる原子力発電所を鎮めようと懸命に働いている人々の努力について、いったい何が言えるだろう。
・・・ぼくは「なじらない」「あおらない」を当面の方針とした。
政府や東電に対してみんな言いたいことはたくさんあるだろう。しかし現場にいるのは彼らであるし、不器用で混乱しているように見えても今は彼らに任せておくしかない。事前に彼らを選んでおいたのは我々だから。
今の日本にはこの事態への責任の外にいる者はいない。我々は選挙で議員を選び、原発の電気を使ってきた。


★私自身は、選挙結果に自分の意志が反映されないことが多いのですが、そのことも含めて、今の世の中とこの状況は私たちの選んだ結果だと思います。

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          【ポピー】

4月6日 東日本大震災「科学技術よ、おごるなかれ」 山折哲雄(宗教学者)
1000年に一度の大地震大津波と未曽有の原発危機に際会していま思いおこすのは、寺田寅彦と岡潔の言葉である。・・・
寺田寅彦(物理学者)・・・日本の自然環境はきわめて不安定であるが、その根本原因は地震と台風にあるという。そのため自然がひとたび荒れ狂うとき、日本列島に住む人々はその猛威の前に頭を垂れ、自然に反抗することをあきらめてきた。むしろその厳父のごとき自然から生活の知恵を学び、日常的な対策を立てて災害に備えるようになった。
それだけではない。そのような生き方の中からいつのまにか「天然の無常」という感覚が育ち、自然の中にカミの声やヒトの気配を感ずるようになったのだと私は理解している。


★三陸津波(明治29年、昭和8年)で大きな被害を受けた地方には、計画的に高台に住まいを移すことで、このたびの難を逃れた地域があると聞きます。行政や住民の英断で、百年先を見越した町作りができたら、新たなモデルとなりましょう。今日(4/30)の天声人語にありましたが、「自然もすごいけど、人間もすごいちゃ。昔から何度も立ち上がってきた」(魚仲買人・鈴木さん)


岡潔(数学者)・・・世に20世紀は理論物理学の時代だったというけれども、それならこの科学の王者はどんなことをやったのか。第一の仕事は「破壊」だった。原水爆の発明がそもそもそうだったのではないか。それにたいして「破壊」に代わるべき「創造」を科学は何一つしていない。それからもう一つ、理論物理学をはじめとする自然科学がやったことが「機械的操作」だった。・・・自然科学は「葉緑素」一つつくることができないのである。
・・・二人の先覚者がその人生の晩年に主張していたことに、今あらためて胸をつかれる。「天然の無常」という認識の深さ、であり、科学技術の限界についてである。


★岡潔氏の言葉を読んだとき、癌末期の父が痛み止めで朦朧としながら「ナポレオンと世界中を回って、戦争は駄目だ!と言ってきたよ。」と、興奮気味に話したことを思い出しました。私の大学入学式のとき、岡潔先生が講演をされ、父が大変感銘を受けていました。私は、どんな話だったか全く覚えていないのですが、もしかしたら、この原水爆の破壊の話をされたのではないかという気がしたからです。非常に強く印象的な言葉で、湯川秀樹博士のラストメッセージ「核と人類は共存できない」と重なるものを感じました。

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4月27日 生きていくあなたへ「うつむかないで深呼吸を」田部井淳子(登山家)
福島県三春町の出身です。「がんばってね」とは言えません。まるで対岸の火事のように聞こえるから。「同じ気持ちでいるよ」。そう伝えたい。
山のテントにこもったまま何日も思うようにいかなかった時、「明日も太陽は昇る。心が参ると体も参る」と考えて健康維持に努めました。両手をこすって温め、ほおを包んでみてください。唾液で口が潤い、ほっとします。靴下を脱いで2人で向かい合い、足の指や土踏まずをもみほぐすと緊張がほぐれます。両手で耳を軽く外に引っ張り、耳たぶをマッサージしても体が温まります。親指と人さし指の間のツボ「合谷(ごうこく)」をぐっと押すと、肩まで刺激が来ます。
もう一つ大事なのは深呼吸です。こういう時こそ、うつむかずにグッと胸を張り、息を吸い込みましょう。冷静になり、考えもうまく回るはずです。
千年に一度の災害を生き延びたのです。被災地を「新興」させてください。できるだけ多くの人にカンパを呼びかけます。


★ほんとうに役に立ち、心に届くメッセージだと感じ入り、全文引用しました。極限状態を経験したことのある人だから、命を落とさないためにまず何をすべきががよく分かっている、的確で真に温かい言葉だと思いました。


4月27日 「インターネット上で話題 反原発ソング脚光」
斉藤和義さんヒット曲「ずっと好きだった」の替え歌
「この国を歩けば、原発が54基/教科書もCMも言ってたよ、安全です/俺たちをだまして、言い訳は『想定外』」「ずっとウソだったんだぜ/やっぱ、ばれてしまったな/ホント、ウソだったんだぜ/原子力は安全です」

RCサクセッション故・忌野清志郎さん「サマータイム・ブルース」の替え歌
「人気のない所で泳いだら/原子力発電所が建っていた/さっぱりわかんねえ、何のため/狭い日本のサマータイム・ブルース」


★私は斉藤和義さんの歌が昔から好き。「歩いて帰ろう」「歌うたいのバラッド」「僕の見たビートルズはTVの中」…、そして最近はやりの「ずっと好きだった」。CMでも流れていたので、この替え歌をネットで聴いた時、「圧力がかかるのでは?大丈夫だろうか?」と心配になりました。それは、私が広告会社にいたころ、スポンサーのマイナスになるようなニュースが放映を差し止められることがあったからです。
「自粛」の動きにもかかわらず、YOU TUBEでは聴くことができ、この替え歌を歌わずにいられなかった斉藤和義さんの憤りを感じることができます。さまざまな事情で公表は控えているようですが、こういう歌こそがロック魂ではないでしょうか。
AC(公共広告機構)のCMもいいことを言っているのですが、「ずっと同じなのも、みんな一緒なのも、こころ一つなのも、日本は強いのも」、善意であるのは承知の上で、戦争の時の思想統制を連想させて怖いです。ですから、自分の正直な気持ちを、批判も覚悟の上で表現した彼の姿勢が、「一人の自立した表現者の覚悟」として感じられ、好ましく思えました。

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 【花海棠と桜】

4月28日1面 橋本知事「原発新設止めたい」
27日の記者会見で、節電や代替エネルギーを導入する政策を進めることで、関西で使う電力を供給する原子力発電所の「新規建設や、(老朽化した原発の)延長計画にを止めにかかる」と表明した。


★大阪府民として、異議を感じることも多い知事ですが、これには大賛成!節電を心がけ、実現させたいです。


4月29日37面 「脱原発」推進へ金利優遇
原子力発電所事故を受けて「脱原発」を訴えている城南信用金庫(東京)は、脱原発のための預金や融資を5月2日から始めると発表した。太陽光発電などを導入すれば定期預金の利息を年1.0%に引き上げ、導入のためのローンも最初の1年を無利子、2年目以降を年1.0%の固定金利にする。


★行政や金融業界で、このような動きがあるのはとてもいいことですね。太陽光発電には、国や地方行政からの補助金が出たりもしていますが、公共施設にもっと取り入れていくといいのにと思います。原発にかけているお金や電源開発促進税を、地熱発電・太陽光発電・水力発電・風力発電の開発支援に回したら、日本の特性に合った安全なエネルギーが供給できるはずです。火山国アイスランドでは、地熱と水力で電力のほとんどをまかなっているそうです。しかも、その地熱発電の技術は日本から入ったもの。実現に当たっては困難もあるでしょうが、要は、私たちの技術や税金をどう使うかということであり、私たちは賛成・反対などの意見をもっと言っていくべきだし、その後の監視もしっかりやっていかねばならないと思います。

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 【ポピーの丘】 不明者の捜索、被災地の復興に必死に取り組んでおられる皆さんに感謝します。

 どこかつながる映画の話 

予告編を見て必ず行きたいと思っていた映画『アメイジング・グレイス』に、友人と行って来ました。予想どおり勇気を与えられる素晴らしい映画で、久しぶりにパンフレット(よっぽどいい時しか買わない)も買ってきました。色つき文字は、あらすじです。

18世紀のイギリスで当たり前のように行われ、貴族階級の懐を潤していた「奴隷貿易」に、若き政治家ウィリアム・ウィルバーフォースは反旗を翻し、少数の仲間と妻とともに、彼の師事するジョン・ニュートンが作詞した「アメイジング・グレイス」を支えとしながら、奴隷貿易廃止のための活動を続ける。国益とみなされた奴隷貿易に反対する者のない中、20年余りの歳月をかけて、ついに奴隷制度廃止という偉業を成し遂げる。世俗にまみれず、人道的見地と正義感から始まった彼の思いが、粘り強く緻密で情熱的な行動によって実現する。
ウィリアム・ウィルバーフォース「見解の違いは仕方ない。だが知らなかったとは絶対に言わせない。」 


映画の役者さん(主役はヨアン・グリフィズ)も魅力的でしたが、何より、これが史実であることに感動しました。そして、これは過去のことではなく、現代社会に、現代政治に生かさなくてはいけない事実だと思いました。


 お知らせ
・・・いろんな人が、自分のできる形で応援できるといですね。というわけで、私は「お知らせ」で応援。

今年の初め案内をいただき、芦屋であった高橋真珠(またま)さんのサロンコンサートを聞きに行きました。
今は香港シンフォニエッタ所属で、海外での演奏活動が多いのですが、この5月に帰国され、
下記チラシのような「東日本大震災支援チャリティコンサート」をされるそうです。
入場料は無料ですが、募金をするので1人1000円以上を目途にということです。
神戸パブテスト教会は、各線「三宮」駅から山側へ「北野坂」を上ります。
詳しくは「真珠日記」(右リンク先より)をご参照ください。

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心に響く本-芹沢光治良『人間の運命』
芹沢光治良『人間の運命』全7巻読破!

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芹沢光治良著『人間の運命』全7巻(1991年/新潮社/全巻セット18000円を中古10000円にて購入)
日本芸術院賞・芸術選奨受賞

 もともと昭和37年から昭和43年に全3部・14巻として書き下ろされたものを、2巻ずつまとめたもので、装幀・字の大きさ・紙すべて良質でいい本です。今は中古でしか手に入りませんが、大変美しい状態で気持ちよく読めました。

芹沢光治良氏といえば『巴里に死す』という程度には知っていたのですが、著作を読んだことはありませんでした。以前に句集をご紹介した伊丹公子さんが師事されていたと知り、興味は持っていたのですが、初夏さんが「『人間の運命』を夢中になって読んだ!」とコメント下さり、「これは読まねば!」と思いました。

かなりの出費になるので、はじめは図書館で借りていたのですが、あまりにも素晴らしい内容に、これは手元に置いておきたいし、多くの人にも読んでほしいと全巻買いました。 芹沢光治良氏の実人生とも重なる主人公「森次郎」の魅力と、明治末期から昭和の終戦に至るまでの事実の重さとに、ぐいぐい引き込まれ1冊500ページほどある本を夢中になって読みました。いつもは小説を読まない夫も夢中になり、夫も私も、どこに出かける時にも、この分厚く大きな本を持って、電車内でも宿泊先でも読み浸りました。今までこんな立派な内容の本を知らなかった自分の不明を恥じると共に、生きている間にこの本に出会えて、本当によかったと思っています。

このブログをやってなければ・・・、伊丹公子さんと出会ってなければ・・・、初夏さんのコメントがなければ・・・、と思うと、この宝物のような本に会えたことが、大変な幸運に思えます。紹介してくださった初夏さん、本当にありがとうございました。

芹沢光治良氏は、日本で最初のノーベル賞受賞者になるのではといわれた方で、あの大江健三郎氏が師と仰ぐ方です。川端康成氏ではなく、芹沢光治良氏が最初に受賞していたら、日本文学が私小説や感覚的で個人的な傾向に偏らず、もっと壮大で思想的にも深い小説の流れができたのではないかと残念でなりません。

私があんまり宣伝するものだから、「読みたい」という方が何人も出てきて、嬉しく感じています。今は出版されていませんが、日本文学の中の重要な作品として、良識ある人の存在の証として、常時手に入るようであってほしいと思います。以前に『夜と霧』を読んだときにも、極限状態における人間に残された信頼できる部分に、深い感銘を覚えましたが、今年は二つも生涯の財産となる本に出会えて、幸せです。

内容は、宗教・貧困・学問・仲間・漁業・恋愛・結婚・戦争・官僚・政治・文学・師弟・友人・親子・兄弟・夫婦・留学・実業・地震・病気・・・人が生きている限り出会うさまざまなことが、五十年にわたる日本と世界の歴史に、主人公の人生を絡めながら描かれています。

「この小説によって、私は人間の宿命を描くばかりでなく、私の世代の生きた証言を後に来る人々に残したいと希っている。」という作者の言葉どおり、立派な証言を受け取ることができた感動で、私はまだその余韻に浸っています。

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    【ガジュマルの若葉】

各巻ごとに心をふるわす言葉に出会い、付箋をはさみ、読書ノートに書き取ったのですが、そのすべてをここに引用すると、大変な量になるので、その一部だけ紹介します。

Ⅰ巻より
P440
「貧困のために眠らないで涙をしぼった夜があったから、私はほんとうに人の心を感ずることも、物の本体をつかむこともできるようになったと思いますよ。その点、貧困だったことを、今は喜んでいます。」(森次郎)

Ⅱ巻より
P431
「お前は気がつかないかも知れないが、お前は相手の身になるという美点を持っているために、ややもすれば、相手に妥協するという弱点がある。弱気と言ってもいい・・・、そのことをよく承知していないと、これから社会へ出て、思いがけない困難にぶつかることがあるからね。」(次郎と親子の契りを結ぶ田部氏)

Ⅲ巻より
P432
「フランスにいる間は、なんになろうと、あせって考えないで、何が好きか、自分の打ちこめるものは何か、それをフランス文化のなかで、じっくり考え、見きわめて・・・、それを掴むまでゆっくりするんだね。人生は長いんだし、掴めたら、それに打ちこみさえすれば必ず希望のことをなしとげられるからね。急ぐことはない。」(次郎が恩人の一人と思っている引田局長)

Ⅴ巻より
P39
「自分が小説を書くというのは・・・生きることであり、死んでも生きようとするような、いのちにかかわることである。」(森次郎)
P204
「君は行動で外へ働きかけるのでなくて、作品によって、外を動かす力をもたなければいかんぞ。」(次郎のよき理解者、黒井閣下)
P505
「ただ自分の暮らしと幸福しか考えないのが、人間生活ではあろうが、その暮らしも幸福も、国の政治にかかっていることには、うっかり気がつかない。」(森次郎)
P521
真面目な若い訪問者に会うことで、自分の生命を少しでも、その人の心に植えつけて、生き残すことだから、自分の創作していることと同じだと、次郎は考えていた。

Ⅵ巻より
P535
わが国(フランス)では、哲学者(この文章の前に、聾唖者の娘を持つ哲学者の話がある)ばかりでなく、あらゆる学者にとって、一般の人々は聾唖者の娘なんだよ。従って、学者は誰でも、その聾唖者の娘にわかってもらえるように、表現や文章にあらゆる努力をするよ。学者だけに解って、聾唖者の娘にわからないような文章で表現する学者は、それだけで、学者としての価値が低いんだよ。・・・あらゆる学者が、そういう努力をしているから、深遠な思想も、真理も、一般の人のものになるんだよ。それが文化というものだものなあ。」(留学先の友人、ラバスール君)

Ⅶ巻より
P74
「野糞をするように、自己の生活しか書かない日本の女流作家にはなりたくない。自分の芸術の世界に、読者を招待するような小説を書くのだ。」(友人の弟の婚約者、明子)
P345
「小説家だから言うのではなくて、人間は男女とも、一生文字で自己表現をしなければならないが、小学校時代に作文でたたきこまれたのと、そうでないのとでは、大変な相違が出ますから・・・そればかりではなくて、アメリカの占領がどれほどつづくかわからないが・・・占領軍が教育についていろいろ指令をして、日本人を変えようとしているが、必ず国語に手をつけたり、小学生に国語を軽んじさせて、学童の心を日本人でなくさせようとすると思うが・・・それに抵抗して、日本人の心を失わせないためには、国語教育しかないと思うので、作文に熱心な先生を是非やとって下さいませんか。」(森次郎)

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  【イチョウの若葉】

 このように一部分だけを取り上げると、真意が伝わらないきらいがありますので、少々ひっかかるところもあるのですが、主人公は実にいろんなことを自分の頭でしっかり考える人なので、彼の出した結論には納得いくことが多かったです。
ここにあげた具体的な引用とは別に、話そのものに大変興味をひかれました。例えば、留学先のヨーロッパでは既に治りやすい病気といわれていた「結核」が、帰国した日本では死の病のまま治療法も改善されず、多くの優秀な人材を失うところ。戦争を回避しようと努力する人々のいる中、政治のまずさで泥沼にはまってしまうところ。どちらも、今の世にも当てはまる教訓を含んでいると思いながら読みました。
付録の冊子の中で瀬沼茂樹氏が「現実主義的な自伝小説や私小説とはちがって、当初から実現すべき理想主義的な理念があって、その実現につとめ、世界に働きかけ、或いは働きかけられて、自己の人間形成に役だっている。主人公森次郎を主として考えれば、当初から目的観念があり、その実現に不断に努力していることは詳説するまでもなく読者には明らかであろう。私が教養小説と呼ぶゆえんである。」と書かれているとおり、読者を真摯な気持ちにさせ、向上心を持たせる小説だと思いました。娯楽や自己の慰めのために読む小説とは、別次元にあります。

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写俳コーナー(3)今年の万博の桜
 花期の短かった今年の桜でした。まだ多くの行方不明の方がいる東北地方の地震被災地、収束まで果てのない混迷の続く原発地、お一人お一人の気持ちや暮らしを想像すると、胸がいっぱいになります。
 震災は戦ではないけれど、脳裏には杜甫の「春望」が浮かびます。「 国破山河在/ 城春草木深/ 感時花潅涙/ 恨別鳥驚心/ 烽火連三月/ 家書抵萬金/ 白頭掻更短/ 渾欲不勝簪」。
 万博の桜に、拙句を添えて、写俳にしてみました。写真も俳句も、まだまだ修行が足りません…。

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        いくたびも四季めぐりきて この桜  (亀)


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        昨日より今日が満開 空晴れて   (亀)


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        幸せのかたちいろいろ 花の苑   (亀)


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        噴水のひかり背にして 紅枝垂    (亀)


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        生きていることの尊さ 花の道    (亀)


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        三十年経たる風格 花なれば    (亀)


 EXPO’70記念に植えられて30年。枝垂れ桜は一箇所に落ち着いて、こんなに堂々とした風格を示しているのに、私はといえば、EXPO’70を見た高校生の時と変わらぬ精神年齢で、風格が出たのは体重ぐらいで…。
お酒を飲んで大騒ぎというのは似合わない、今年の花見でした。敷地のゆったりした万博公園には、車椅子の人、ベビーカーを押す人など、優しい気持ちで接したくなる人がたくさん見受けられます。場所の取り合いを必死にすることもなく、それぞれがお気に入りのところでくつろいでいます。桜の木もたくさんあって、それももちろんいいけれど、こんなゆっくりとした優しさが好きで、毎年一度は必ず行かないと落ち着かないのだろうなと思います。

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心に響く風景-夕桜と和菓子など
 夕桜 

桜は天候や時間帯によって、雰囲気が大いに異なる。
夕方の桜は少し寂しげで、でも
日が当たると怪しい華やかさをかもし出し、とても魅力的だ。
今回は、夕方5時半から6時までに撮った桜を、時間経過に従ってアップしました。

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 いただいた和菓子など ~3月・4月~

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「糊こぼし」・・・奈良に住む友人がお水取りの季節にちなんで送ってくれた和菓子「糊こぼし」。椿の花の形の生菓子も箱も、お水取りらしい風情がありました。抹茶で美味しく頂きました。奈良市もちいどのセンター街「萬々堂通則」のものです。
 
「ひな豆」・・・月遅れのお雛祭りの時、ふるさと愛媛の各家庭で、餅あられと落花生を水飴で固めて作ります。「まめいり」とも言い、内子町の人気市場「からり」でもたくさん売っていました。これは、菓子店が作ったもので、昔のご近所さんが、ものすごくたくさん送ってくださいました。とても懐かしかったです。

「坂の上の雲」・・・同名で「ポエム(母恵夢)」と似た味のものが、「一六本舗」から出ていますが、これは「坊ちゃん団子」でおなじみ「うつぼ屋」で作っている蒸し菓子です。小豆の部分と伊予柑ピール入りのしっとりしたカステラ状のものとの組み合わせが、上品で大変美味でした。高校の同級生が送ってくれました。どちらの「坂の上の雲」も、司馬遼太郎記念館が松山市にできてからの新作だと思いますが、こちらの方が私の好みです。

*3月に頂いたふるさとのデコポンやたくさんの伊予柑も、ありがとうございました。とても美味しかったです。

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お知らせ-第二回天神祭短歌大賞
今年も募集あります!「天神祭短歌大賞」

お知らせを送っていただいたので、アップします。皆さん、ぜひ応募して祭の船に乗ってください。
去年より選者さんがお一人増えたのと、応募料が要るようになった…のが、変わった点ですね。
大阪府下在住に限りませんので、他府県の方もどんどん応募して、天神祭を盛り上げてください。

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  【賞名】 第二回 天神祭短歌大賞
  【テーマ】祭
  【募集規定】何首でも応募可(未発表に限る)
  【応募方法】ハガキ、応募フォーム、FAX、封書に
  1.短歌 2.短歌に添えてひとこと 3.名前 4.年齢 5.性別 6.電話番号
  7.メールアドレス(あれば) 8.ご住所 9.応募料の払込日 を明記
  【応募料】1首1,000円(郵便振替00970-3-232956、天神祭短歌実行委員会)
  【賞】グランプリ(天神祭船渡行のペア乗船券(6万円相当))ほか
  【応募先】FAX:06-6352-3592 06-6352-3592  
  住所:〒530-0041大阪市北区天神橋3-5-1おかげ館天神祭短歌実行委員会 宛
  【選者】香川ヒサ、東直子、高田ほのか、土居年樹
  【お問合せ】アドレス:honoka0730jp@yahoo.co.jp 
        電話:06-6352-6164
  【URL】http://honokapoem.web.fc2.com/tenjin_tanka_2011.html
  【締切】23年6月20日
  【発表】23年7月17日短歌大会にて

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 【4月の歌会のあと、天満橋を渡り大川沿いの夜桜を見物しました。天神祭の舞台になる川です。】

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写俳コーナー(2)4月・京の桜
今年は、雪柳の白・連翹の黄・若葉の緑、桜と多彩な色が一気に見頃を迎え、まるで信州の春のようです。
  東日本大震災と原発事故で辛く苦しい春ですが、花の明るさに少しでも皆が元気になるといいなと思います。

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        【竜安寺駐車場の枝垂れ桜。石庭の桜が有名。閑静な寺。】

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        三代を 女主(おんなあるじ)や 花の傘    (亀)  

4月14日追記:この句は最初、「三代の女主や花の傘」と素直に作りましたが、この枝垂れ桜の幹を見ていると、もっと屈折した感じにしたくなりました。そこで、「三代を女主で花の傘」にしましたが、「で」が説明的で気になり、結局「三代を 女主や 花の傘」に。助詞の使い方で、句の世界が変わってしまうので難しいです。

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         【平野神社の枝垂れ桜。境内の桜が有名。庶民的な神社。】       

         こぼれくる花のひかりを留(とど)めんか  (亀)


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         胸にすむ人と一日(ひとひ)を桜狩    (亀)

4月14日追記:こちらは「胸にすむ」が甘いかなと思ったのですが、結句を「桜狩」とワイルドな「狩」を入れて微調整。結句が、最初は「花見かな」だったのですが、さらっと流れる感じで物足りなく、次に「花見酒」にしてみたら、酔いつぶれそうだし、写真とくっつき過ぎだし…、で、「桜狩」。まだ、満開の時期ではなかったので、花を探し訪ねる感じで合うかなと思いました。

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 森山直太朗「さくら」が、今年はいちばん心にしみます。

       僕らはきっと待ってる 君とまた会える日々を
       さくら並木の道の上で 手を振り叫ぶよ
       どんなに苦しいときも 君は笑っているから
       挫けそうになりかけても 頑張れる気がしたよ
                ・・・・
                さくら さくら いざ舞い上がれ 
                永遠にさんざめく光を浴びて
                さらば友よ またこの場所で会おう さくら舞い散る道の上で

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写俳コーナー(1)4月・海
 海をぼんやり眺めるのが好きです。水面に光があたってきらめくと、さらに嬉しくなります。だから、海の写真もいっぱいあります。でも、3月11日におきた東日本大震災で、東北地方太平洋岸を襲った大津波の映像を見てから、ブログに海の写真を載せることが辛く、躊躇われました。
でも、昨日(4月1日)の朝刊に、津波で家を失った双子の海渡くんと海成くんが、8年後20歳になる自分に向けたメッセージに「でも、海は、とても大切です。きれいで、きれいで、ぼくはとても好きです。」と書いているのを読んで、勇気づけられました。海は自然の脅威を見せつけたけれど、海が悪いわけではないのです。

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楽しいことや嬉しいこと、気持ちのいいことを書きたいブログなので、正直、大震災・大津波・原発問題と厳しく辛い状況の中で、貴重な電気を使ってまで、自分の気持ちを表現する意味はあるだろうかと考えていました。
また、読書とパソコンのしすぎで、目と腕の疲労が蓄積し体調不良になっていたり、病状の悪化している叔父のことが気になったり、パソコンのフリーズ(これは埃取りの掃除をしたらなおりました)もあったりで、しばらくブログをお休みしていました。
その間も拙ブログを訪ねてくださって、ありがとうございます。今日から、ゆっくり再開いたします。今回から新企画、伊丹三樹彦先生が40年以上前から取り組まれている「写俳」をまねて、そのコーナーを新しく設けます。
ど素人で未熟ですが、発表することで成長できたらと思っていますので、よろしくお付き合いください。

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         釣れずともよし 父と子に春彼岸   (亀)

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実は、季語に問題があります。「彼岸」と言えば「春」、秋の彼岸には「秋彼岸」と「秋」をつけます。歳時記を調べたら「春彼岸」の例句が二句ありましたので、思い切って使いました。「彼岸日和」なら問題はないのですが…。父と子が春の陽ざしを受けて並んでいるというだけで、心惹かれます。


          遠くにて祈るほかなく白木蓮   (亀)

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この写真は、まだ堅いつぼみ(もしかしたら、辛夷かも)ですが、少しふくらんだ白木蓮のつぼみは、まるで合掌をしているように祈りの形をしています。木にいっぱい蝋燭の色をした白木蓮を見たら、人間だけでなく植物も祈っているような気がしました。東日本大震災で被災された方々、故郷で闘病中の恩師と叔父、手を握って励ますこともできず、ただ心を寄せるばかりです。

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          海を愛し海に生きる人々に、穏やかで豊かな日々が早く戻ってきますように。

テーマ:ある日の風景や景色 - ジャンル:写真



プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年5カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



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