心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本‐坂口恭平著『独立国家のつくりかた』
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山崎 亮著『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる』
(学芸出版社/2011年/1800円)

三浦 展著『第四の消費 つながりを生み出す社会へ』
(朝日新書/2011年/860円)

  この2冊を先に読んでいたので、次にご紹介する本の面白さが増したと思います。
どちらも、未来への希望を感じさせる良書でした。現状を嘆いてばかりでは始まらない…。

坂口恭平著『独立国家のつくりかた』
1人で、0円で国をつくった男の記録

(2012年/講談社新書/760円)

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 最近立て続けに読んだ三冊の本の一つ。私たちの世代とは違う若者たち(それはわが子を見て感じていたことでもあるのだが)の考え方に触れることができ、満更でもないなと思っている。2011年5月新政府を樹立し、初代内閣総理大臣に就任したという著者。
読みながら、岡本太郎とダブらせたり、武者小路実篤の「新しき村」を思ったりしたが、彼の主張の中で特に共感を覚えたのは、「態度経済」というものだ。

『第四の消費』の本でも、これからは「もの」ではなく、「こと」が大切と書いてあったが、そういう時代は思っている以上に居心地がいいのではないかと、私も思っている。ネット社会やバブル社会への反動が、こういう人と人の生の触れ合いを求めるようになるだろうと思っていたが、今現実に若者がそういう道を歩もうとしているのであれば、こんな嬉しいことはない。
【以下、色つき文字は引用部分。】

P112
態度経済は貨幣経済と決別するわけではない。ただそれは匿名化したシステムとはまったく別のレイヤーにあるものだ。もっと抽象度の高い、かつ具体的な経済感覚である。
態度経済というのは、通貨というような物質によって何かを交換する経済ではない。交換ではなく「交易」するものだ。交易。つまり、そこに人間の感情や知性などの「態度」が交じっていることが重要だ。ただの交換ではないのだ。・・・(中略)・・・交易をするには、インターネットでだけ行動しても駄目だ。交易には人間の体が必須なのである。だから、態度経済は必然的に移動を促す。人と人との直接的な出会いを促す。もちろん、それをつないでいるのはインターネットでもいい。しかし、人と人が直接出会う中で、お互いの才能という貨幣を身振りを使って交換する。


 この本を読みながらこんなことを考えていた。・・・

ネット社会になると、その反動で生身の人間同士の付き合いが求められるようになるだろうと、ずっと思っていた。お寺の境内などで定期的に開かれる弘法市や手作り市、また道の駅などでの野菜市など、売り手(作り手)との緩いやりとりが心地いいという経験をする人が増えている。シャッター通りと言われるかつての商店街にも、各商店の持っているノウハウを表に出せば、活路が見いだせるのではないかと感じている。

人通りが戻ってきた天神橋筋商店街も、「30年かけて復活させた。天満繁盛亭の存在も大きい。」と土居会長が話をされていた。天神祭は、官の力を借りず町民の力だけで維持してきた大きな祭りでもある。人々が生き生きと暮らす、その核になるのは「文化」である。

もうひとつ感じていたのは、筆者の家に対する考え方が『方丈記』の鴨長明と似ているなということ。大火災・竜巻・飢饉・大震災・平家による強引な遷都などで、庶民が疲弊していく平安末期の状況と、今の日本を重ねたりしながら『方丈記』を読み直し、改めて「古典の力」を思った。

 *9月のブログでひたすら本紹介に徹し、たまっていた本の紹介が一区切りつきました。

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あんなことこんなこと‐映画「いちご白書」
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 9月26日(水)の朝、仕事に出かけようとしたところに、元同僚の友人から電話が…。
「昨日、いちご白書を見に行ったら、すごくよかった!若い時に見たのとは違う、もっと深いものを感じた。すごく感動した!明日の18時半が最終なので、早く伝えたくて。」とのこと。
彼女とは、感動する映画のタイプが似ているので、これは逃せないと、27日の夕方、夫と待ち合わせて職場から直行した。

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 バフィー・セント=メリーの「サークル・ゲーム」の主題歌が、メロディも歌詞も胸にどんと響いて、懐かしいだけではなく、今だから分かるよさがある。映像がいい。音楽がいい。若者の描き方にもリアルさがある。
そして何よりずしんと来たのは、クライマックスの体育館の場面。みんなが輪になり、床を手で鳴らしながら合唱するジョン・レノンの「平和を我等に」。体の芯から震えるような感動を味わった。

いつもシビア&クールな評を下す夫も、「よかった!内容もだけど、カメラワークが素晴らしい!今のアメリカ映画よりずっといい。」と絶賛しつつ、「最後はもう少し救いがほしかったな…。」

 「ああ、こんないい映画だったのだ」という余韻さめやらず、帰宅後ワインを飲みすぎて早々に眠ってしまった。
コロンビア大学での実話をもとにしているそうだが、あのあと学生たちはどういう人生を送ったのだろう。挫折して「いちご白書をもう一度」の歌詞みたいな、「もう若くないさといいわけした」ような大人にはなってほしくないな。少なくとも主人公のサイモンとリンダには。

ちなみに「いちご白書」は、1970年スチュアート・ハグマン(28歳)の監督デビュー作。この映画でカンヌ映画祭審査員賞を受賞している。私の青春時代と重なるせいかもしれないけれど、70年代の映画って、いいのが多かった気がする。

「いちご白書」の詳しい情報はこちら。→ いちご白書 森達也監督のコメントが、とてもいい。 

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心に響く本‐ふるさと愛媛と関わりのある方たちの本
 今回は、ふるさと関連で手に入れた本3冊のご紹介です。
どれも豊かな才能を感じさせる良書です。読んで頂けると嬉しいです。

文:大早直美/写真:武田 直『風の散歩道』
(愛媛新聞サービスセンター/2012年/1800円)

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 愛媛県下を回り、素敵な文章を書かれた大早さんは、次にご紹介する犬塚さんと宇和島東高校の同級生で、親友という間柄。高校時代から既に相当な文才があったと、犬塚さんから伺っていますが、地元愛媛にて、ご夫君と「創風社」という出版社をされています。

この本は、2006年4月から2010年3月まで愛媛新聞社発行の月刊『アクリート』に連載されたものをまとめたもので、写真も大きくて美しく見応えがありました。風景の懐かしさはもちろんのことですが、全然知らなかった故郷の歴史を、大早さんの素晴らしい文章で知ることができました。情に流されないきりっとした文章はとても心地よく、紹介された各地を訪ねたい気持ちにさせてくれ、ふるさとが更に好きになりました。



犬塚芳美著『破損した脳、感じる心』
 高次脳機能障害のリハビリ家族学

 (亜紀書房/2012年/1600円) 京都新聞・毎日新聞に広告が掲載されました。

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 犬塚さんは、拙ブログリンク先のトップにある映画紹介ブログ「太秦からの映画便り」の主。個人でブティックを経営するデザイナーでもあるのですが、毎週3本の映画鑑賞、監督へのインタビューなどを熱心にこなし、良質な映画の紹介に努めている美的で知的な女性です。ご夫君は、映画美術を担当されていて、芸術オーラを漂わせているご夫妻というのが、私の印象です。

そのご夫君が、今から2年前の深夜、ほろ酔いかげんで後頭部を強打され、お二人の生活が一変しました。死をも覚悟した日々から、片麻痺と高次脳機能障害を抱えた身となったご夫君を支え、必死のリハビリに励まれた様子が、前向きな彼女の文章で綴られています。
周りの方々が驚くほど短期間で回復(まだ完璧ではありませんが…)できたのは、ご本人の努力もさることながら、彼女の厚い&熱い思いがあったから。同様の障害を克服する努力をされている方にとって、ヒントになることがたくさん載っています。



宮岡絵美著『鳥の意思、それは静かに』
(港の人/2012年/500円) 毎日新聞「詩評欄」で取り上げられました。

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 私の中学・高校時代の同級生夫妻の娘さんの詩集です。先に紹介した犬塚さんと同じ京都工芸繊維大学(私の中では理系の大学という認識です)の卒業生で、公務員をされています。彼女のブログ「miyaさんの生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」には、言葉への豊かな感性が溢れ、若くて柔軟な才能が輝いています。

すでに干からびてしまっているような私の感性では、なかなか読み切れない詩群なのですが、茨木のり子さんの詩にある「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」を自身に言い聞かせて、ときどき刺激をもらっています。いちばん好きな詩「うたひ手」を以下に引用します。/の部分は、原文では改行です。

月をながめて/うたをうたおう/どこかにいきたい/それだけなのだ

ゆく先々でうたう/あなたのうたを/どこかにいる/わたしのために

わたしとあいたかった/はるかなる約束をした/とおい月日

あなたのために/うたはつづいている/大空を駆ける/数多の地平線を/味方にして/わたしはゆくだろう

過ぎし日の向こう側/待っている日を/夢みるように

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心に響く本‐こうの史代のエッセイと漫画
『夕凪の街桜の国』で好きになった漫画家こうの史代のエッセイと漫画を紹介します。

こうの史代著『平凡倶楽部』
(平凡社/2010年/1260円)

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『夕凪の街桜の国』の印象で、まじめなイメージの強い作者ですが、ユーモラスな面、豊かな感性、深い思索と、さまざまな作者像を知ることができ、親しみがわきました。
子どもがよくやる絵と文字を組み合わせた手紙、チラシの裏や原稿用紙・グラフ用紙などに描いた漫画や絵、描くことにとことんこだわるのは、漫画家の業でしょう。絵はもちろん上手いのですが、ここまで描ける&書けるエネルギーに驚きました。


こうの史代作『この世界の片隅に 上・中・下』
(双葉社/2008年から2009年/各680円)

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 昭和18年から昭和21年の広島(呉)を舞台に、庶民の日常を優しいタッチで描いた漫画。絵を描くのが好きでおっとりした主人公のすずを中心に、家族・友人・親戚・近所の人たちの日々の暮らしばかりでなく、すずと夫の気持ちの揺れを丁寧に描き、最後までじっくり読ませてくれました。ちょっと気をつけて見ると、伏線のような絵があって、それも楽しめました。
声高ではないけれど、一人ひとりをきちんと描くことで、戦争の酷さを伝える素晴らしい作品に仕上がっていると思います。単に反戦平和というようなことではなく、文学作品的な要素を備えていて、好感が持てました。
 

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心に響く本‐『絵本作家という仕事』
自分にその才能は全然ないし、なりたい気持ちもないのですが、素敵だなと思う職業の一つに絵本作家があります。何年も前のことですが、クレヨンハウス江坂店で毎月、絵本や児童文学の作家さんたちのお話を聞く講座に参加したことがあり、その時の作家さんたちの目の輝きが忘れられません。同じ目の高さで、しかも触れそうなくらい近くでお話を聞けた、とても心豊かな時間でした。残念ながら今は、東京店でしかされていないようです。

『絵本作家という仕事』
 (講談社/2012年/1800円)

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 私の大好きな「あらしのよるに」のあべ弘士、「ピンク、ぺっこん」の村上康成をはじめとする15人の絵本作家の素顔を見せてくれる、ほのぼのとした構成の本です。

プロフィール、子どもの頃のこと、作家になった理由やその道筋、毎日の生活、笑顔で幸せそうなご本人の写真、代表作(カラー見開き)、アトリエ(カラー見開き)、絵本の紹介など、各人12ページを割いた充実した内容で、楽しめました。

いちばん素敵だったのは、皆さんのアトリエ!見やすそうな本棚、大きく開いた窓、それぞれのこだわりが、作品の特徴と重なって、とても魅力的でした。絵本作家にはどうあがいてもなれないけれど、こんなアトリエだけは欲しいなあと思ったことでした。

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心に響く本‐『奇跡のリンゴ』
 兄や夫が楽しんでいる家庭菜園の野菜のおかげで、今年の夏はほとんど野菜を買わずに過ごしました。夫の畑は雑草だらけですが、もちろん無農薬。「何もやらない、農薬も肥料も何も使わない農業」で有名な、愛媛県出身の福岡正信氏のビデオを買ったのがきっかけで、野菜を作りたくなったようです。本当は米も作ってみたそうですが・・・。長野出身の夫は、リンゴ農家の農薬のすさまじさを知っていましたし、愛媛出身の私は、若い叔母を農薬散布の被害で亡くしましたから、無農薬には以前から関心がありました。
2006年のNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で、無農薬のリンゴ栽培に挑み壮絶な苦労の末に、それを成功させた木村さんのとびきりの笑顔を見ました。それ以来ずっと気になっていた彼のことを書いた本を読むことができました。そこに、福岡正信さんの本『自然農法』との出会いが書いてあり、さらに嬉しくなりました。

石川拓治著 『奇跡のリンゴ』
「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録

NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班監修
(幻冬舎文庫/2011年/533円)

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p30
「自殺を考えたっていう若い人からも電話あったな。」・・・彼の経験した苦労や挫折の大きさに比べたら、自分の悩みなんて悩みのうちにも入らないことがわかったと、若者はきっぱり言ったのだそうだ。・・・「うん、とにかく思い直して良かったねえと言ったかな。それからバカになればいいんだよと言いました。バカになるって、やってみればわかると思うけど、そんなに簡単なことではないんだよ。だけどさ、死ぬくらいなら、その前に一回はバカになってみたらいい。同じことを考えた先輩として、ひとつだけわかったことがある。ひとつのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合うことができるんだよ、とな」
ひとつのものに狂えば、いつか答えに巡り合う。木村の言葉は、木村の人生そのものだった。

P165
「リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている。そしていつの間にか、自分が栽培している作物も、そういうもんだと思い込むようになったんだな。農薬を使うことのいちばんの問題は、ほんとうはそこのところにあるんだよ。」

p197
「農薬を使わなくなってわかったことがあるのな。農薬を使っていると、リンゴの木が病気や虫と戦う力を衰えさせてしまうのさ。楽するからいけないんだと思う。クルマにばっかり乗ってると、足腰が弱くなるでしょう。同じことが起きるわけ。それでな、リンゴの木だけじゃなくて、農薬を使っている人間まで病気や虫に弱くなるんだよ。病気や虫のことがよくわからなくなってしまうの。農薬さえ撒けばいいから、病気や虫をちゃんと見る必要がなくなるわけだ。」

p210
「人間に出来ることなんて、そんなたいしたことじゃないんだよ。みんなは、木村はよく頑張ったって言うけどさ、私じゃない、リンゴの木が頑張ったんだよ。これは謙遜なんかではないよ。本気でそう思ってるの。だってさ、人間はどんなに頑張っても自分ではリンゴの花のひとつも咲かせることが出来ないんだよ。手の先にだって、足の先にだって、リンゴの花は咲かせられないのよ。・・・この花を咲かせたのは私ではない。リンゴの木なんだとな。主人公は人間じゃなくてリンゴの木なんだってことが、骨身に染みてわかった。それがわからなかったんだよ。自分がリンゴを作っていると思い込んでいたの。自分がリンゴの木を管理しているんだとな。私に出来ることは、リンゴの木の手伝いでしかないんだよ。失敗に失敗を積み重ねて、ようやくそのことがわかった。それがわかるまで、ほんとうに長い時間がかかったな。」

p233
自然は細切れなどに出来ない。それは、木村があのドングリの木の根元で悟った重要な真理だった。自然の中に、孤立して生きている命など存在しない。自然をどれだけ精緻に分析しても、人はリンゴひとつ創造することは出来ないのだ。バラバラに切り離すのではなく、ひとつのつながりとして理解すること。科学者がひとつひとつの部品にまで分解してしまった自然ではなく、無数の命がつながり合い絡み合って存在している、生きた自然の全体と向き合うのが百姓の仕事なのだ。だから、百の仕事に通じなければならない。

P245
「自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿なんだよ。そうあるべき農業の姿だな。今の農業は、残念ながらその姿から外れているよ。・・・どんなに科学が進んでも、人間は自然から離れて生きていくことは出来ないんだよ。だって人間そのものが、自然の産物なんだからな。自分は自然の手伝いなんだって、人間が心から思えるかどうか。人間の未来はそこにかかっていると私は思う。」


  木村秋則さんのどの言葉も、それはリンゴの木にとどまらず、人間(特に子育てや教育)にも当てはまる真実だと感じながら、大変興味深く読んだ本でした。
ちなみに、今、夫が愛読しているのは、木村秋則責任編集 『木村秋則と自然栽培の世界 無肥料・無農薬でここまでできる』 (日本経済出版社/2010年・2011年5刷/1500円)です。

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心に響く本‐『のこされた動物たち』・『だけど、くじけない 子どもたちからの元気便』
 うみそら居士さんのブログから目が離せない私ですが、特に9月5日付け「仏有力紙が告発‐福島原発最悪の事故はこれから」と、9月6日付け「牛は原発事故の生き証人」という記事が、気にかかっています。今回は、東日本大震災と福島原発に関わって出版された本の紹介です。

太田康介著・写真『のこされた動物たち』 
福島第一原発20キロ圏内の記録

 (2011年/飛鳥新社/1300円)

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 福島原発事故による避難勧告で置き去りにされた動物たち。
地震の津波で流された動物たちもたくさんいたでしょうが、せっかく生き延びたのに結局は餓死した犬や猫、殺処分された牛や豚たち。人間の都合で突然見捨てられたのに、飼い主を待ち続けている動物たち。原発がなければ、飼い主たちも飼育場の持ち主も、こんな辛い思いはしなくて済んだのに・・・。
何度も何度も涙で立ち止まって、「ほんとに人間ってひどいよね、ごめんね」と言いながら、でも、きちんと知っておかなくてはと思って読みました。動物たちの目が、姿が、かわいそうでなりませんでした。
動物たちの保護活動をしてくださる方々がいたことと、印税の一部が動物保護ボランティアに寄付されるのが、救いです。


長倉洋海と東北の子どもたち著(写真と作文)
『だけど、くじけない 子どもたちからの元気便』 
 

 (2012年/NHK出版/1600円)

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 南相馬市・宮古市、仙台市、いわき市に住む小学4年生から中学1年の子どもたちの作文と、2011年9月から12月までに長倉洋海さんが撮った子どもたちの写真集です。
印税の一部は、「あしなが育英会」を通じて震災・津波遺児の支援活動に寄付されます。
優しく澄んだ目をしている長倉洋海さんに応えるように、笑顔を見せている子どもたち。言葉には表しきれない辛い思いをいっぱいしているのに、励まされるのは私の方でした。

P38[麻美 10歳]
これから、放射能が少なくなって、友達が、みんな帰って来たら、前よりも、仲良く、勉強や、運動に、一生懸命がんばって、悲しかった思い出を、楽しい思い出に、変えられるように、がんばろう、がんばろう自分。

P122[絵莉菜 12歳]
大人の人たちは、「福島原発」というふうに言う。でも、本当は、東京の電力なのに、福島県がわるいっていっているようで、ちょっとつらいです。


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心に響く本‐あさのあつこ編著『10代の本棚 こんな本に出会いたい』
あさのあつこ編著『10代の本棚 こんな本に出会いたい』
                (岩波ジュニア新書/2011年・2012年第2刷/820円)

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 作家・ジャーナリスト・エッセイストといった人たち13人が、10代の頃出会った本について書いた本。
あさのあつこさんの「はじめに」もとても素敵な文章なのだけれど、私が一番心ひかれたのは、アン・サリー(内科医&シンガー)の「マンホールの暗闇の中で」。小田実さんの『何でも見てやろう』を紹介している項から一部、引用する。

P19 ある一人の老女性歌手がいた。地元の学校で音楽を長年教え続ける先生でもあった。根深い社会構造の問題から若者が足をすくわれてしまうのを、音楽の力によって少しでも救いたいと祈りながら教鞭を取っていた。
彼女の、ジャズのイントロとともに音楽に入り込むその姿勢や眼差し、余計な自意識や計算高さなど、不必要なものがばっさりそぎ落とされたような歌声。純粋無垢な、祈りにも似たその歌声に心から感動し、涙せずにはいられなかった。本当に生きていて良かった、こんな出会いこそ生きる醍醐味だと感じた。
実際足を運んで、目で見て、聴いて、においを感じる、そうすることでしか自分を揺るがすような感動は得られないのだなと感じ入った瞬間だった。

P24 今、私たちは盲目的に現在の便利さを享受しているが、もっと先の世代、さらには将来の地球を度外視したような目前の幸せというのは本物なのだろうか・・・。震災を通して再び人間とは何だろうか、という問いに突き当っている。


 他に、なんだか嬉しかったのは、石井睦美さんの担当したページ。私は彼女の小説が、柔らかくて好き。彼女が高校の授業で出会った寺山修司の短歌や俳句、庄司薫やサリンジャーの小説、のちに大ファンになったという村上春樹。彼女の年齢は書いていないが、どうやら同じ時代を生き、同じような本に興味を持っていたことがわかり、彼女の小説に好感を持つのも自然な流れだったのだと気づいた。

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心に響く本‐三浦しをん著 『舟を編む』
 数年前「電子書籍が広まると、今の出版業界はどうなるか」というのをテーマに講演会が開かれ、岩波書店の方のお話を聞いたことがあった。その時、「広辞苑」の紙の質や厚み・調べる人の指の位置など細かい配慮がなされているのを聞いて、電子辞書ばかり使っている身をちょっと申し訳なく思った。また、しおりひもなどの材料や製本技術や編集者の視点などが失われる危惧を伺い、「本」が何層もの文化を背景として生まれていることに改めて気付かされた。

 今回紹介する本は、そんな辞書を生み出す側から書かれた小説で、2012年本屋大賞に選ばれたベストセラーです。言葉に関心のある人にとっては、共感を覚える部分がたくさんあって、心に残る一冊となるのでは…。前半はなんだか軽い感じでしたが、後半に入ってからよかったです。本の装丁にも注目したいところ。引用の(  )は、登場人物のセリフです。

三浦しをん著 『舟を編む』 
(光文社/2011年・2012年14刷/1500円)

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p203 言葉の持つ力。傷つけるためではなく、だれかを守り、だれかに伝え、だれかとつながりあうための力に自覚的になってから、自分の心を探り、周囲のひとの気持ちや考えを注意深く汲み取ろうとするようになった。(岸辺)

p212 馬締が言うには、記憶とは言葉なのだそうです、香りや味や音をきっかけに、古い記憶が呼び起こされることがありますが、それはすなわち、曖昧なまま眠っていたものを言語化するということです。(香具矢)

p226 言葉は、言葉を生みだす心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。(松本先生)

p257・258
言葉はときとして無力だ。荒木や先生の奥さんがどんなに呼びかけても、先生の命をこの世につなぎとめることはできなかった。
けれど、と馬締は思う。先生のすべてが失われたわけではない。言葉があるからこそ、一番大切なものが俺たちの心のなかに残った。
生命活動が終わっても、肉体が灰となっても。物理的な死を超えてなお、魂は生きつづけることがあるものだと証すもの―、先生の思い出が。
先生のたたずまい、先生の言動。それらを語りあい、記憶をわけあい伝えていくためには、絶対言葉が必要だ。

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心に響く本‐藤原幸一著 『地球の声がきこえる』
 30年前を最後に、姿が見られなくなったニホンカワウソが絶滅種に指定されたと、先日のニュースで報じられていた。他にも多くの動植物が、私たち人間のせいで絶滅の危機にさらされている。かつて称えられた南極大陸の探検も、今注目されている宇宙開発も、人間が人間だけのことを考えて、膨大なゴミを生み出しているという点で、私には大きな疑問がある。
今回紹介する本は、そんな疑問への真っ直ぐな答えだ。自分が人間であることが嫌になるような、悲しく酷い写真が次々現れるが、ひどい環境の中で精一杯生きている動物たちの姿から目をそらしてはいけないと思った。

藤原幸一著 『地球の声がきこえる』 
    生物多様性の危機をさけぶ動物たち

(講談社/2010年・2011年第2刷/1500円)
 
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はじめに~から引用
現在、豊かな生態系が急速に失われつつあることが心配されています。100年ほど前なら、地球上で1年間に1種ほどが滅んでいたスピードが、現在では加速度的に速まり、年間およそ4万種の生物が絶滅していると見られているのです。その原因は、残念ながら、地球上いたるところに侵出してしまった人間による環境破壊によってもたらされています。

昔なら雪に隠れていたであろう、各国の南極基地が捨てていった巨大なゴミの山、そこにある錆びたワイヤーで傷つき、血を流しているペンギンの写真。日本が大量に輸入している昆虫、そして、それを採集し家計を助けるため、不登校になっている子どもたち。観光客の残していったゴミの山にいる、ガラパゴス諸島のイグアナ。全長100キロにも達するはえなわ漁のロープや網と、それに絡まり溺死してしまうオットセイたち…。動物や子どもたちの邪心のない表情が、私たち大人の罪深さを訴えている。

P147~から引用
人類が作り上げた文明は加速度的に進歩し、それにともなって化石エネルギーを大量消費してきた。人類が自然に与える影響は、今では地球全体にまで及ぶ問題になってきている。これは人類だけの問題のみならず、すべての生物の運命を左右する。

 写真家で生物ジャーナリストでもある著者の写真は、人間のすることへの悲しみと、その犠牲になっている動物たちの哀しみに満ちている。皆が一度は目を通し、真剣に考えてほしいことがいっぱい載っている貴重な本である。

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心に響く本‐重松清著 『十字架』
 大津のいじめによる自殺問題から、連日マスコミではいじめに関する報道が続いている。3年前に書かれたこの本の内容が、あまりにも今回の事件と重なるので、驚いた。被害者・加害者(=たいてい加害の認識がないようだが…)という立場だけでなく、見て見ぬふりをしてきた周りの人たちも考えずにはいられない内容である。

いじめ問題は、単に「いじめ」という子ども社会の問題ではなく、原発問題・沖縄基地問題・・・など、「遠い・部外者」などと自らに言い訳しながら、やっかいなことに関わらないようにしている私たち大人社会の反映だと強く感じる。

重松清著 『十字架』 
(講談社/2009年/100周年書き下ろし/1680円)
第44回(2010年)吉川英治文学賞受賞

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 中学二年生のとき、いじめを苦に自殺した同級生。遺書には四人の名前が書かれていた。彼をいじめた同級生三人のうちの二人、親友と書かれた僕、好意を謝られた女生徒の四人の名前だ。僕と女生徒を中心に据え、自殺した少年の弟、両親、彼の周りの人々の気持ちを、さまざまな視点から丁寧に描いた小説である。

「いじめ」を扱った小説というと、「辛い」と拒否反応を起こしてしまう人も多いだろうが、さすが重松清!私は、最初のページからぐいぐい引き込まれ、一気に読み通してしまった。心に響く優れた小説だ。ぜひ多くの人に読んでほしい。

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心に響く本‐岡本太郎著『自分の中に毒を持て』
 岡本太郎著『自分の中に毒を持て 
                  あなたは“常識人間”を捨てられるか』
   表紙に「いつも興奮と喜びに満ちた自分になる 
    あたりまえの人間なんて屁の役にもたちゃしない」
    (青春出版社/1993年・2009年34刷/467円)

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 「芸術は爆発だ!」と叫んでいた頃の岡本太郎さんは、正直わからなかった。目をギョロギョロさせた変な芸術家だと思っていたし、太陽の塔ももう一つ好きにはなれなかった。しかし、あれから40年が経ち、太陽の塔が私の中で大好きな存在になってきたのを機に、岡本太郎さんの本をいろいろ読んでみた。そして、彼は、世間より40年も50年も先を行っていたのだと気づいた。20年前に書かれたこの本が、あまりにも今の世の中に当てはまるのに驚いた。情けないことだが、いいふうに変わってはいない。さらに悪化しているだろう。

彼は、子ども時代からあらゆる本を濫読し、小学校高学年ではトルストイ、ツルゲーネフを夢中で読み、中学では哲学にとりつかれ、パリに留学してからは原書で、スタンダールやニーチェなどを読んだという。大変な読書家だ。しかも、骨がある。彼の言葉が本物であることを確信した。「ほんとうに生きる」というのはどういうことなのか、しっかり考えさせてくれる素晴らしい本である。どの頁にも、彼の力が満ちていて、大いに励まされた。

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心に響く本‐坂本光司著『強く生きたいと願う君へ』
あれこれ忙しくしている間に、ご紹介したい本が、6月分からたまってしまいました。
一気に載せると、またパソコンが調子を悪くしてはいけませんので、1冊ずつぼちぼちと。

坂本光司著『強く生きたいと願う君へ』
(WAVE出版/2012年/1400円)

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 40年にわたり6600社の経営者・従業員を見てきた著者のこの本は、現場を知っている人の言葉なので大変説得力があるし、共感を覚えることばかりだった。この本の中にも人間として尊敬できる立派な経営者が紹介してあるが、もっと詳しい『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズもあわせて読みたいと思う。

「本当に強く生きる」ために大切にすべき十五のことがら
1 「なくてはならない人」になる。それが、「力」をつけることだ。
2 仕事を正しく定義する。そこに、「生きる道」が拓ける。
3 いま戦うことが、強い生き方とは限らない。
4 人の器はみな同じ。そこに、何を入れるかで人生は決まる。
5 全体を見晴らしながら、「目の前の仕事」に全力を尽くせ。
6 現象に惑わされず、常に本質を見極めろ。
7 必ず、自分の眼でみて、自分の手で触れなさい。
8 耳は二つ、口は一つ。「声なき声」に耳を傾けなさい。
9 一%の素敵な人に会いたければ、百%の人々と会いなさい。
10 喜びも悲しみもともにする、そんなチームをもちなさい。
11 「強者」ではなく、「本物」をめざせ。
12 人生に遅すぎることはない。
13 涙の数だけ、人は強くなれる。
14 「痛み」を知りなさい。それが、君に力を与えてくれる。
15 人生でいちばん大切なものを知りなさい。

p101~p103の概略を私がまとめました。
社員の約七割を知的障害者が占める、チョーク業界トップシェアの日本理化学工業の大山さん。ひょんなことから二人の知的障害をもつ少女を雇用することになった大山さんは、当初「施設にいれば楽ができるのに、なぜ工場で働こうとするのか」わからず、ある僧侶に尋ねたそうです。以下は引用です。
僧侶はこう応えました。
人間の幸せは、ものやお金ではありません。人間の究極の幸せは次の四つです。人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、そして、人から必要とされること。愛されること以外の三つの幸せは、働くことによって得られます。障害をもつ人たちが働こうとするのは、本当の幸せを求める人間の証なのです。

P149
「強者」と「弱者」とは絶対的なものではありません。それは、状況によって簡単に入れ替わる相対的なものにすぎません。そして、本当に強く生きるとは、「強者」になることではなく、「本物」になることなのです。

P159
私は、いつも自分に言い聞かせてきました。訂正のきかない過去に思いを馳せるより、明日を夢見て、今日を精一杯生きるべきだ、と。・・・人は、いつでも、思い立ったときから変わることができます。その勇気をもつことこそ、本当に強く生きるということなのです。

P187
「痛み」は誰もが避けたいものです。しかし、「痛み」を経験するからこそ、人の「痛み」を思いやる心、すなわち「利他の心」をもつことができるのです。そして、「利他の心」こそが私たちに「力」を与えてくれるのです。その意味で、「痛み」とは恵みなのかもしれません。

P201
もちろん、「経済」も「利益」も「お金」も大切です。しかし、それらは私たちの生きる目的にはなりえません。私たちがいちばん大切にしているのは、そんなものではないからです。だから、心に蓋をしてはいけません。自分がいちばん大切にしているものを取り戻してほしい。そして、それを大事にして生きてほしいのです。

 いつでも自分の目に触れる状態にしておきたく、たくさん引用しましたが、皆さんにも一度手にして頂きたいなと思う一冊でした。

テーマ:オススメの本 - ジャンル:本・雑誌



プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年1月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



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