心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
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 俳句のお好きな方へ

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昨日(1月26日)、伊丹先生の俳句サロンのあと、皆さんと一緒に伊丹市の「柿衞(かきもり)文庫」に出かけました。
「柿衞文庫新春特別展」の関連講座ということで、俳人坪内稔典氏の講演がありました。書の評価が高い「河東碧梧桐(かわひがしへきごとう) 」を中心に、正岡子規・高浜虚子のお話をわかりやすくして下さいました。
1時間半の講演の後、展覧会場にて著名な俳人の書を拝見。他にも句集や結社誌、俳人系譜などが展示してあり、ちょうど山口誓子の書いた『俳句鑑賞入門』を読んだ直後だったので、「ああ、あの句がこんな風に書いてある!あの人はこんな優しい字を書くんだ!」とワクワクしながら見学しました。
伊丹三樹彦・公子先生ご夫妻の色紙や、「青玄」創刊号、先生のお話で伺ったことのある「まるめろ」創刊号もあり、皆で感激しました。

伊丹市は、阪神大震災の被害が大きかったのですが、その後すっかり文化的な雰囲気の町にお色直しされ、散策の道は色のタイルが貼られ、一日をゆっくり過ごすのに気持ちのいい場所になっています。
展示会をゆっくり見た後、隣接している「旧岡田家住宅」に出かけ、立派な酒蔵や店舗を係の方の解説を受けながら見物しました。2月2日から1カ月は、お雛様が飾られるそうです。ここ数年実施していた盆梅展は、梅の病気が発生したため中止になったとのことです。
続いて、すぐ傍の「長寿蔵」(白雪ブルワリービレッジ長寿蔵)へ。高い天井と広い室内、地ビールとお料理の美味しいレストランです。お茶だけでもいいですよとのことだったので、優雅な雰囲気を楽しみました。
ここから伊丹駅までは、阪急もJRも歩いて7分ほど。今まで、何度か車で来たことはあるのですが、ここは電車で来て歩きたい町です。伊丹出身、上島鬼貫の俳句の幟が、散策の目印になります。


 新しいリンク先(すべて右列に追加)
「俳誌のサロン」・・・たくさんの新しい俳句を読むことができます。書や俳誌、句集の写真も掲載。偶然ですが、現在、トップページに、「空」主宰の柴田佐知子先生の句が載っています。
「岩崎勇さんのホームページ」・・・伊丹三樹彦先生の大切なお仲間で、素晴らしい写真を撮られます。とても細やかな心配りをされ、人望の厚い方です。
「柿衞文庫のホームページ」・・・今回紹介した「柿衞文庫」について、詳しい情報が載っています。2月にも「特別展」関連講座がありますので、関心を持たれた方はどうぞ。

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心に響く風景-博多駅のライトアップ
福岡1泊2日の旅の最後の写真は、博多駅のライトアップです。

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 【朝の博多駅】

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 【遠くに見える「はかた駅前通り」の並木もライトアップされていて、きれいでした。】

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 【夜の博多駅】

 久しぶりに見たライトアップ。白を基調にした清楚な灯りが、素敵でした。
「空」俳句会の初句会で出かけた福岡でしたが、「空」誌だけで存じあげていた皆さんとお会いでき、とても楽しい旅行でした。初対面と思えないほど、皆さん親しくして下さって、博多弁もなじみやすくて、心が温かくなりました。

 これで、今回の旅の写真は終了です。たくさん見て下さって、ありがとうございました。

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心に響く風景-柳川の町の散策
5回目は、柳川の町の散策です。

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       【下船場近くのお寺の前で。そうだなあと思う言葉が書いてあったので。】

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 【北原白秋生家(復元)。海産物を扱ったり酒造業をしたりの豪商だったが、町の大火で没落。】
            朱欒(ざぼん)生り白秋生家の庭静か

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 【せんべい屋さんにたくさんの猫がいました。】

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               初売や猫八匹の煎餅屋 

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 【ゆっくりと時間の過ぎる町では、猫も幸せそうです。】

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       【柳川藩初代藩主(文武両道で有名)立花家の御屋敷は、洋館も素敵。】

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 【明治43年建築の洋館と和館と広大なお庭。当時使われていた家具が置かれています。】

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 【お雛祭りのとき飾られる「さげもん」がいっぱい吊ってありました。】

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 【奥に見える広い庭には大きな池があって、たくさんの鴨が日向ぼっこをしていました。】

 7000坪の敷地に築かれた立花家300年余の歴史の一部を、資料館で見学しました。お姫様の雛道具が、種類も多く手が込んでいて見応えがありました。小指の爪ほどの大きさの百人一首には、きちんと歌が書かれていたり、台所の道具類が細かく作ってあったり、今あっても楽しいだろうなと思いました。

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心に響く風景-柳川「川下り」
4回目は、水郷柳川の川下りをアップします。

JR博多駅から地下鉄で約5分、天神駅で西鉄電車に乗り換え、特急で約47分で柳川に到着。
川下りのできるお得なセット券を購入。駅で待っているバスで船乗り場へ。(すぐ近くです)

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【ここから70分コーススタート。右の建物は松月文人館という展示館で、料亭「懐月楼」の跡地。】

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   【北原白秋の詩「立秋」の中に、料亭「懐月楼」が出てくるのを記念して建てられた詩碑】

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   【私たちの乗った「こたつ舟」の船頭さんは「いとっち!ITO46」で、のど自慢の楽しい方。】
                船頭の歌が花なり炬燵舟

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   【水が澄んでいて、川面に映る景色も雰囲気があります。】

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   【船頭さんの説明も上手でした。水上売店では、甘酒を買いました。】 
             待ちぼうけ皆で歌つて炬燵舟   

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   【このような狭い橋の下をくぐる時、童心にかえってワクワクしました。】

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   【いとっちさんの声を覚えていて、鴨が近付いてきます。いたるところに白秋歌碑。】
             舟のあと付き来る鴨や川下り

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   【写真が暗くて見えにくいですが、形の美しい橋でした。撮影スポットだそうです。】

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   【沖端で下船。ここからスタートの40分コースも。右側にあるのは、水天宮。】

 冬は、「こたつ舟」といって、布団の掛けられたテーブルの下に、炭の入ったこたつが置かれます。この日の乗船客は滋賀から来られた方と私たちの5人だけ。船頭さんの柔らかい語りと優しい笑顔と暖かい日差しに、のんびりほっこりの心豊かな時間でした。
お雛祭りの時期には、着飾った子どもたちを乗せた舟を繰り出し、それが、毎年、春の市報の表紙になるそうで、2012年の表紙の船頭さんは、なんと「いとっち!ITO46」さん(AKB48を意識して)でした。一緒に白秋の「待ちぼうけ」を歌ったり、いとっちさんの歌もたくさん聞いたりしながらの、寒さも長さも全く感じない楽しい70分でした。

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心に響く風景-キャナルシティ博多
3回目は、キャナルシティ博多を中心に

 博多駅から「キャナルシティ行」のバスが出ていて、何かな?と思っていたのですが、
宿泊したホテルの斜め向かいに「キャナルシティ」があったので、二日目の朝、行きました。
新しい商業施設で、リッチなホテル(ハイアットやワシントン)や映画館とたくさんのお店。
開店前の時間帯でしたが、中国からの観光客も団体でうろうろ。もう少し早く開くといいのにな。

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 【上の階が緑で覆われたビルが、並んで2棟ありました。道路から見えてインパクトあり。】

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 【写真右側がいろんなお店。左側がグランド・ハイアット・福岡。噴水の中の生け花も巨大。】

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 【半球状の建物が面白くて、アップで撮りました。ファッションのお店がたくさんありました。】 

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       【川沿いには清流公園があり、都鳥?がたくさん飛んでいました。】

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 【広すぎて、位置関係も全貌も把握できないまま、その一部分を外から撮ってみました。】

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       【清流公園に移された、昔の遊園地「向島」開園記念の高灯籠】 

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       【高灯籠に記されている、遊園地整備に寄進をした商家の名前】

 人が集まって、町がにぎわうようにという考えで作られた遊園地「向島」と、超モダンな商業施設の「キャナルシティ」。商売の今昔を目の当たりにして、感慨深いものがありました。
JR博多駅から徒歩7分、地下鉄天神駅から徒歩10分という便利な場所に、こんな広大な土地があったのが不思議でなりませんでした。前は何があったのかご存知の方、教えてください。 

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心に響く風景-福岡市東区の筥崎宮を中心に
2回目は、福岡市東区にある筥崎宮(はこざきぐう)を中心に。

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       【櫛田神社のすぐ横から続く川端商店街。こちらは神社の反対側。】

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       【商店街のすぐ裏手を流れる博多川。水辺の散策ができる。】

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       【筥崎宮参道。幟が三角形で面白い。大宰府名物梅ケ枝餅も。】

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      【アンパンマンが飛んでいた。ドラえもんは逆さ吊り。お面と綿菓子大好き!】

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 【長い列には加わらず。楼門の額は「敵国降伏」。923年創建、鎌倉以降は武士の神様とか。】

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 【ソフトバンクの優勝祈願先として有名。少年野球の子たちが本殿横に並んでご祈祷を拝受。】
                初祈願野球少年整列す

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       【私は、こちらの筆塚の方がご縁があります。】

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 【初句会会場となる料亭の門で熱烈歓迎をしてくれた白猫ですが、飼い猫ではないそうです。】
              白猫の誘(いざな)ふ家へ初句会

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心に響く風景-博多総鎮守の櫛田神社
 年の始めに、九州まで新幹線で行ってきました。1泊2日で2万円弱(阪急トラピックス)。
宿泊付きで現地はフリー、新大阪を早い時間にたち、遅い時間に帰ってくるというお得コース。
たまに旅に出ると、何もかもが珍しく、たくさん写真を撮りましたので、数回に分けてアップします。

福岡博多の総鎮守「櫛田神社」

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       【鳥居】

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 【表門】

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 【本殿には、参拝の人が少し並んでいました。】

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       【おみくじが5ヶ国語ありました。】
              初みくじ自販機にある五カ国語

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       【迫力ある山笠】

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       【これは「巴御前の武勇」。人形がみんな目を剥いて戦っています。】

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       【反対側は、古事記の一場面の「日本の曙」でした。】

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 【力士が持ち上げるという力石が奉納されていました。有名な力士名がずらり。】

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       【珍しい塀が保存されていました。】

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       【裏門。出てすぐ右手から長い商店街が地下鉄駅まで続きます。】 

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季節の詩歌(32)~手紙を読む・書く~
季節の詩歌(32)~手紙を読む・書く~

「空」誌46号掲載の拙文です。長いですので、お時間のある時にでも読んで頂けると嬉しいです。
写真は、本文とは全く関係がないのですが、足に合う靴が手に入って嬉しいので載せました。

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  【元同僚(大先輩)から、今年も立体きり絵を頂きました。新年にふさわしい三枚セットです。】

    ・・・ 読む ・・・

日の暮れるのが早い季節は、わけもなく心細く、人恋しくなる。帰宅して開く郵便受けには、たいていダイレクトメールばかりが入っているのだが、そんな中に手書きの封書や葉書きを見つけると、ほっと心が温かくなる。パソコンや携帯電話からのメールは瞬時に相手に届き、迅速な対応が可能である。だからこそ逆に、時間をかけて届けられる手紙には、大事にしたいものが含まれていると思うのである。

秋灯下金釘流の友の文       笠原 博満

 達筆の人は字を書くのが苦ではないから、比較的頻繁に手紙をくれる。手に自信のない人は「筆不精で」などと言い訳をして、書くことを極力避ける。それゆえ、「金釘流」の友の文は、貴重だ。苦労して書いている友人の顔つきや心の籠った文面が浮かぶ。

秋の灯にひらがなばかり母の文   倉田 紘文

 「ひらがなばかり」の手紙といえば、野口英世の母シカさんを思い出す。作者が受け取ったのも、ひたすら子を思う純朴な母の愛情の溢れた手紙である。どちらの句にも使われている「秋(の)灯」という季語によって、秋の夜の孤独が、その人そのもののような手紙によって慰められているのが分かる。対して、次の歌は、気持ちが届かないばかりか、その失礼さに作者は憮然としている。たとえ悪筆であっても、書き手の見える手紙がほしいのが人情である。

手書き文字の一字だに無き手紙を寄せ返事待つとぞ未知なる人が    辻下 淑子

次の三句は、それぞれの季節感と句の内容が合っていて、手紙を受け取った幸福感が漂っている。相手のために大切な時間を割いて書かれた手紙は、ありがたく嬉しいものである。

陽炎やふくらみもちて封書来る    村越 化石

鞦韆に腰かけて読む手紙かな    星野 立子

紅葉明るし手紙よむによし       尾崎 放哉


春のやわらかな日差しが詰まっているような「ふくらみ」のある手紙、暖かな春の日に気持ちを解放させながら「鞦韆」で読む手紙、「紅葉」明りの下で読む手紙、どれもみな、心の温もりが伝わるようだ。

妻の手紙よみつつおもふ互(かた)みなる吾の手紙も悲しかるべし       佐藤佐太郎

作者の妻も歌人である。互いに日頃から情の深さが分かっている相手だ。離れて暮さねばならない事情の中でやり取りする手紙、そこに、互いの想いを汲み取る作者の優しさが、心に残る。昭和二十年の歌と知って、戦火の中、囚われの身となった杜甫の詩「春望」の一節「家書万金にあたる」を思った。目の前にいない家族の安否ほど心配なものはない。

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          【やっと足の指が自由になる靴に出会えました。foot styleの靴。】


長い手紙の終わりの低姿勢つくづく読めばつくづく哀し             東 直子

 あまりにも「低姿勢」である相手の卑屈さも、それを生じさせてしまった自身の存在も哀しいのだ。人から滲み出る謙虚さも尊大さも、その人がたどってきた人生を想像させ、作者は辛いのだと思う。

白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう        斎藤 史

しろい昼しろい手紙がこつんと来ぬ   藤木 清子


 歌にも句にも詠まれている「白い手紙」は、何も書かれていないことを意味しているのだろうが、伝わってくる心情は異なる。歌の方は、新しく始まる春への期待感で明るい。句の方は「しろい」の繰り返し、「こつん」という硬い響きが、作者の空虚感を表しているようで、どこか不安な気配が漂う。

毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである           枡野 浩一

気持ちのとてもよく分かる歌である。一番欲しいのは「あなた」からの手紙なのに、毎日ドキドキしながら郵便受けを開けるのに、ちっとも来ない。失望の積み重ねが絶望となる前に、恋しい人からの手紙が届きますようにと、他人事ながら祈りたくなる。

日溜りに置けばたちまち音たてて花咲くような手紙がほしい          天野 慶

大好きな人からの手紙なら、自然と笑みがこぼれるような言葉が書かれていたら、どんなに幸せだろう。若い作者が素敵な比喩を使って、素直に想いを述べたこの歌、手紙の力を改めて感じさせてくれる。

どこからも手紙来ぬ日の寒夕焼     森 たけ子

あすはよいたよりがあらう夕焼ける   種田山頭火


 誰からも手紙の来ない日は、自分がこの世から疎外されているような寂しさを味わう。「寒夕焼」は自らの焦がれるような想いの表出でもあろう。山頭火の句の「夕焼」を併せて考えると、大きな自然が、「希望を持て」と励ましてくれているようでもある。
そして、何といっても「夕焼」そのものが、自然からの素晴らしい手紙であり、感動を与えてくれる。

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   【甘えん坊のミューは、ハオと一緒の時が一番好き。お母さんみたいに安心するのでしょう。】

    ・・・ 書く ・・・

十八歳で初めて親元を離れた頃、ちょうど流行っていたのが、井上陽水歌・作詞・作曲の「心もよう」である。家族とも友人ともそう簡単には会えない距離で、唯一つながることができるのは手紙であった。生の声を聞くには、公衆電話を利用するしかなかった時代のことである。今とは隔世の感がある。

淋しさのつれづれに 手紙をしたためています あなたに / 黒いインクがきれいでしょう 青い便せんが悲しいでしょう / (中略) /悲しさだけを手紙に詰めて 故郷に住むあなたに送る / あなたにとって見飽きた文字が 季節の中で埋もれてしまう アア…

女性の多くは、インクや便せんの色に気を遣う。相手にも、それを読み取る感性があると信じているからだ。手紙には、相手が目の前に居ないことによる良さと弱点がある。面と向かっては伝えにくいことが書ける半面、受け入れてもらえないのではないかという怖さもある。繰り返し読まれることもあれば、読まずに捨てられることだってある。書く側と読む側には、時間のズレなど様々な条件が介在し、思いがけない齟齬が生じたりもする。歌詞の「見飽きた文字」という語が、二人の今後を暗示している。

天の川余白を多く書く手紙     沼尻巳津子

天の川という季語から、牽牛と織女の物語を連想した。余白にこそ読み取ってほしい想いがある手紙、受け取った側はどのように読むだろうか。

知らぬ間に文長くなる秋灯下     山本ふみを

寝て書いて長き手紙や種茄子    岸本 尚毅


秋の夜長は、一人の時間を持て余す。いちばん心を許す人に手紙をしたため始めたものの、次々と書きたいことが溢れ、思いがけず長くなってしまった。翌朝読み返して、気持ちの発露に驚くのではないか。

由布に雪来る日しづかに便書く    橋本多佳子

「クロッカスが咲きました」という書きだしでふいに手紙を書きたくなりぬ     俵 万智


季節の移りを感じた時、そのような情感を伝えたい相手がいる。自分と似た感性を持ち、安心して気持ちを委ねられる相手である。「由布に雪」という穏やかな響きや「クロッカスが咲く」明るさがいい。

白鳥の来しこと告げて書く手紙遠き一人に心開きて                道浦母都子

たましひの手くらがりにて人の世のひとりにてがみ書きゐたりけり        高野 公彦


この二首に、手紙は「一人(ひとり)」にあてて書くものであるということを改めて思った。言葉の奥にある、自分の大切な「心」を届けるのである。もしかしたら自分自身だって気付いていない「心」が、語り始めるかもしれない。そういうことも含めて全面的に信頼を寄せることのできる相手なのだ。

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            【履きやすくて歩くのが楽しいfoot styleのブーツ。】

いとけなきものに手紙を書く朝のひらかなばかり善きことばかり           高尾 文子

長き長き手紙を書かむと思ひしにありがたうと書けば言ひ尽くしたり        稲葉 京子

口つけて水道の水飲みおりぬ母への手紙長かりし夜は               岸上 大作


幼い人に書く手紙はひらかなで善いことばかり、感謝の手紙には万感の思いを込めた「ありがたう」、故郷の母への手紙を書き終えたあとに、ほーっと長い息をついて水を飲んでいる作者。さまざまな手紙がある。相手のことを思いながら言葉や文字を使い分けることは、思いやりに満ちた優しい行為だ。

貝のうた一首書き添へ潮にほふ名瀬の街角のポストに落とす            大内須磨子

手に触れしポストの口も夜霧かな   中島 斌雄

二通目の手紙大切いわし雲      ふけとしこ


メールで済ませたのでは絶対味わえない自然との関わりが、手紙にはある。ポストまで足を運ぶ時、手紙には潮の匂い、夜霧の湿り、秋の空気感が添えられる。人の手を経て届くということに、安らぐ。

秋の淡海(あふみ)かすみ誰にもたよりせず  森 澄雄

 自然と交感し合うことで充足している、凛とした作者を思った。すべてを己の懐に入れ、一人で立っているのだ。この潔さに至るには、時間がかかる。
そして今、私が究極の手紙と思っているのは、自分が書いて自分が読む手紙である。アンジェラ・アキ歌・作詞・作曲の「手紙~拝啓十五の君へ~」は、そのことに気付かせてくれた歌である。

「拝啓 この手紙読んでいるあなたは どこで何をしているのだろう / 十五の僕には誰にも話せない 悩みの種があるのです / 未来の自分に宛てて書く手紙なら きっと素直に打ち明けられるだろう」で始まり、
「拝啓 この手紙読んでいるあなたが 幸せなことを願います」で終わる歌、

この歌に救われる十五歳がたくさんいるだろう。合唱コンクールで定番となったこの歌を、皆がとてもいい表情で歌っている。会場の人々も想いを馳せる表情を浮かべ聴き入っている。その誰もが涙ぐんでいることに、連帯感を覚えるのは、私だけではないだろう。感受性の鋭い十代は傷つくことも悩むことも多いだろうが、若い君たちには大きな「未来」が待っているのだよと励ましてくれる、人生の先輩からの優しく温かい応援歌である。

テーマ:俳句 - ジャンル:小説・文学

あんなことこんなこと-新年に思う
 三が日、皆さんはいかがでしたか?私は、けっこう充実した、いいお正月が過ごせました。

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でも、大晦日から一日が終わった瞬間に、次の年が始まるという仕組みが、この年になってもなかなかなじめなくて、ちょっと「…?」となってしまいます。どういうことかといいますと、書き言葉で「明けましておめでとうございます。」は、なんとか大丈夫なのですが、大晦日にも会っているご近所の方に改めて新年のご挨拶をする、その芝居がかったやり取りが照れ臭くて、心の中が「むにゃむにゃ」となってしまい、いつまでも一人前のしゃきっとしたご挨拶ができません。一応頑張って挨拶はします。しますが、「みんなは平気なのかな?」って、いろんな場面で、テレビを見てすら思ってしまいます。皆さんは、そんなことありませんか?そういえば、子どもの時も苦手でした。親は、お正月の準備をほんとにいろいろしてくれて、家族皆で改まって新年を迎えてはいましたし、どれも好きなことばかりでしたが、挨拶だけが…。

三が日は、最初の写真のように、車がほとんど通らず、朝の光が幅広く水面に輝き、空気が清々しくて、いかにもお正月という感じでした。


 今年2冊目のお勧めはこの本です。watasinosukinakonoikku.jpg

柳川彰治編著『私の好きなこの一句』
現役俳人の投票による上位340作品(平凡社/2012年/2600円)

この本は、編著者の柳川氏が全国の俳句結社の主宰・代表に依頼し、アンケート依頼と鑑賞文の公募を同時に実施したものです。「江戸から平成までの俳句作品で最も好きな作品を一句(3点)。それ以外に好きな作品を最多十句(各1点)まで」挙げてもらって、( )の点数を集計したものを、下位から順に340作品掲載してあります。本の半ば以降は、私もすべて知っている句でしたが、著者による解説や公募鑑賞文によって、新たな理解を加えることができましたし、初めて知った句も多くあり、勉強になりました。とても興味深く読めたのですが、その中から特に三句だけ引用します。

湯豆腐やおとこの会話つながらず   橋本榮治
我が家は息子二人と夫に私。男ばかりで皆無口なので、大変共感を覚えました。

稲妻や浪もて結える秋津島      与謝蕪村
原表記は「稲づまや浪もてゆへる秋津しま」です。日本列島は波で囲まれているというスケールの大きな「国誉め」の俳句ですが、あの東北の大震災からは、違った読み方をしてしまいます。いつ津波が起こってもおかしくない活断層だらけの国の海浜を取り巻く原発、それが頭から離れません。

地面から宙(そら)がはじまる福寿草   宮坂静生
~作者は近年「対象に寄り添う」ということを提唱されている。つまり、作者の視点ではなく、対象(福寿草)の視点に立つということである。~と鑑賞文にありました。とても魅力的な句が多く、気になる俳句作家の一人が新たに増えました。何冊か宮坂氏の本を買って読んでみようと思います。


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梅田に用事があって出かけました。阪急百貨店のショーウィンドーを写したら、向かいの銀行の看板が…。

阪急から阪神に行く途中、近くを歩いていた40代と思われる男性二人のうち少々脂ぎった印象の一人が「原発がなくなったら電気代が3倍になるから、なくしてはいけない」など、何の根拠もなく声高にしゃべり、相手の人は黙ったまま。後ろから、私と夫は「電気は節電したらいい。無くていいところにいっぱい使ってる。事故が起きたら、土地を失い、命も健康も危うくなるんやで。」とぶつぶつ。3割か4割だかの得票で8割の議席を自民党が占めて以来、なんだか世間全体に嫌な動きが感じられます。大声で押さえつける物言いをする人には気をつけたいです。

LEDの照明を買いに行った店でエレベーターに乗りました。かなり満員だったのですが詰めたら何人かは乗れたので、私たちのあとにカップルが「すみません」と言いながら乗りました。すると、私の近くにいた若い男の人が「あやまるんやったら乗るな」と、冷たい声で無表情なままぼそっと言い、その人の彼女が「そんなこと言わんとき」とたしなめましたが、私はぞっとしました。降りてから夫に伝えると、夫も「『すみません』というのは、『ちょっと詰めてください』ってことなのに」と、憤慨していました。言葉のままにしか取れない人が増えているのかと、怖くなりました。

もともと梅田などの都会は人が多く息苦しくなるので、よっぽどの用がないと行かない(例えば、家の近くでは、買い取り制の岩波新書を売っていないので、梅田まで行かないと買えないなど)のですが、今回、二つも嫌なことを見聞きして、ますます都会が嫌になりました。消費をあおり、殺伐感が漂っているようで、どうにも…。


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 日本の自然の雄大さと多様性を、大きな写真でたっぷり見せてくれました。とてもよかったです。

安藤忠雄氏が寄せた言葉の中に「撮る苦労が5%、そこにこぎ着けるまでの苦労が95%」と、白川義員氏の言葉(と思います)が引用してありましたが、スポンサー探しから始まって、現地まで行く体力と気力、最後の天候まで、どれだけのエネルギーが要るだろうと思われる、迫力ある写真群に圧倒されました。日本には芸術に関する大きな賞が4つあるそうですが、そのすべてを受けているのは白川氏だけだそうです。それも納得。

テーマ:日々のつれづれ - ジャンル:日記

あんなことこんなこと-謹賀新年
 新年明けましておめでとうございます。

昨年は拙ブログにお付き合い頂きありがとうございました。今年もよろしくお願いいたします。

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「人間の、動物の、植物の、命が大切に守り育てられる」そのような地球となりますように。


 新年最初にご紹介したい本 mizuutikikuo20131.jpg

水内喜久雄著『ステキな詩に会いたくて-54人の詩人をたずねて-』
                              (2010年刊/小学館/1470円)
この本の中にも登場されている、詩人の高丸もと子さんから頂きました。
年末から読み始め、元旦に読了。著者の水内さんと詩人の皆さんのお人柄、そして心のこもった詩の一節、それらがとても優しくて、「詩っていいなあ。生きてるっていいなあ。」と心が温かくなりました。
高丸もと子さんの詩「今日からはじまる」
川崎洋さんの詩「いま始まる新しいいま」
は、新年に読むのにぴったり!気持ちが一新されて、すがすがしいスタートが切れます。

鈴木敏史さんの詩「手紙」は、独りじゃないことを教えてくれるステキな詩です。
ゆうびんやさんが こない日でも/あなたに とどけられる/手紙はあるのです
ゆっくり 過ぎる/雲のかげ/おなかをすかした/のらねこの声も/ごみ集めをしている人の/ひたいの汗も……
みんな手紙なのです/読もうとさえすれば


吉野弘さんの詩「祝婚歌」の一節もステキです。このように生きたいです。
立派でありたいとか/正しくありたいとかいう/無理な緊張には/色目を使わず/ゆったり ゆたかに/光を浴びているほうがいい/健康で 風に吹かれながら/生きていることのなつかしさに/ふと 胸が熱くなる/そんな日があってもいい


 最近お気に入りのBGM「ケニーG」のサックス

kennygcd20131.jpg

2枚組CD「The Essential Kenny G」
      (2006年/BGMJAPAN /3360円)
本人による曲目解説も入っていて、より親しみを感じます。
ちょっと気の乗らなかった年末のお節作りでしたが、このCDをBGMにしながら料理をしたら気分よく進みました。長年作っていると、手が自然に動き段取りもスムーズに行くことが、妙に嬉しかったです。

 メールやブログ上でやりとりのできる方や、正月休みが明けたらすぐに会う方に、またはその逆で、永遠にお会いしそうにない方に、年賀状を出すのはどんなものだろう?と、ここ数年思ってきました。
還暦を迎え、思い切って、できるだけ年賀状を出すことを減らそうと考えました。頂いた年賀状はとても嬉しいし、お返事はもちろん出しますが、こちらから出すことをしなければ、自然に減っていくだろうと思います。寂しくなるでしょうか?でも、それもいいかなって思います。父が還暦を迎えた時に、同じようにしていたことを思い出しました。
年賀状にこだわらなくても、日常のお付き合いや、連絡し合える関係があれば、それでいい。「還暦」というのは、そういう人間関係のリセットも可能にする仕組みなのかもしれません。
年賀状ひとつとっても、皆さんにそれぞれの考えがあることでしょう。さまざまな考えがあることに、今まで以上に気付ける自分になるよう成長していけたらと、自らに願っています。

 皆さん、よいお正月をお過ごしください。  

テーマ:謹賀新年 - ジャンル:日記



プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年6カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !
2017年 9月26日カウンター343434通過



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