心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
あんなことこんなこと-「賢い国」に
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    【奈良女子大学正門と記念館(講堂)・2013年6月21日雨】

 朝日新聞の毎週水曜日に掲載される天野祐吉さんの「CM天気図」が好きです。
6月12日のコラム〈「強い国」か「賢い国」か〉がとてもよかったので、コピーしてアップします。

CMtennkizu 20130612

「強い国」になるには、最先端の武器をそろえるお金がいる。それには強引な経済成長が必要である。それには原発の再稼働が欠かせないというのが、強い国の宰相の考えなんだろう。
それにくらべたら「賢い国」になるためには、とくにお金はいらない。知恵と品性があればいい。



 「賢い国」ということを思っているとき、6月19日の報道ステーションで、よい特集を見ました。

北海道上川郡下川町がバイオマス産業で、新たな雇用やクリーンなエネルギーを創出し、町の経済も立ち直りつつあるという特集でした。ゲストの元経済産業省官僚の古賀茂明氏が注目している日本のモデルだそうで、下川町長も世界のモデルとして発信したいと話されていました。町役場の人たちが賢そうだったのと、町の皆さんが笑顔だったこと、そして、古賀氏が「世界の主流はこの方向です。原発を売るなんて、日本はなんてダサいことをしているのかと世界は見ている。」と言われたのが印象的でした。

今日のニュースで、安倍総理が原発を世界に売ろうとトップセールスをしているのを、「福島の失敗があるのに、どうしてそんなことができるのか。」と外国の人が呆れ、かつ腹を立てていました。本当の賢さとは何かということを考えずにはおれない、最近のニュースです。


 インドの絵を描き続けている知人に誘われて、日本での任期が終了するインド総領事の講演を聴きに、奈良女子大学に行ってきました。ヴィカース・スワループ氏は、アカデミー賞をとった映画「スラムドッグ・ミリオネア」の原作「ぼくと1ルピーの神様」(原題「Q and A」44カ国語に翻訳)の著者でもあります。

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          【構内のポスター。雨だったので、ビニールで包んであります。】

 小説では、スラムの子どもたちの情熱とたくましさとダイナミズムを描いたそうです。メッセージは「みんなそれぞれの『運・チャンス』を作り出す。努力した者が、栄光を手に入れる。」と話されていました。

「インド、その伝統と変貌」という題で、映像や作成資料を交えた熱心な講演で、全然知らなかったインドのことや、スワループ氏から見た日本の良さにも触れることができました。メモからいくつか抜粋します。

1947年独立した時の識字率は14%、平均寿命は28歳。
現在の人口の60%が、25歳以下。2025年には平均年齢30歳、労働人口68%となる。
23の公用語と2万2000の方言。携帯電話所持者は2012年5月で9億2900万人。
515のテレビチャンネルがあり月額約300円。イギリスにはインド料理店が1万店。
2009年の第15回総選挙では、7億1400万人が82万8804か所の投票所で電子投票等々。
インド人の特質は「ジュガード」=限られた資源の中で何とかするという考え方、生き方。


以前に、知人の展覧会で頼まれて、ゲストで来られたスワループ氏に花束を渡したご縁もあり、今回も知人の強い勧めでスワループ氏との記念撮影。とても穏やかでフレンドリーな方です。

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     【文系の校舎・ここから東大寺大仏殿の屋根が見えます。】

テーマ:今日のつぶやき。 - ジャンル:日記

心に響く詩-「木」の詩二編
 いきなりの夏!「梅雨」はどこかに消え去って、全く雨のないかんかん照りの日が続いています。風はさわやかなのですが、なにしろ日差しがきつくて、日傘を忘れようものなら大変。夏好きの私ですが、さすがにこれだけ雨が降らないと、植物が心配です。【写真は家の周辺】

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木    田村隆一

木は黙っているから好きだ
木は歩いたり走ったりしないから好きだ
木は愛とか正義とかわめかないから好きだ

ほんとうにそうか
ほんとうにそうなのか

見る人が見たら
木は囁いているのだ ゆったりと静かな声で
木は歩いているのだ 空にむかって
木は稲妻のごとく走っているのだ 地の下へ
木はたしかにわめかないが
木は
愛そのものだ それでなかったら小鳥が飛んできて
枝にとまるはずがない
正義そのものだ それでなかったら地下水を根から吸いあげて
空へかえすはずがない

若木
老樹

ひとつとして同じ木がない
ひとつとして同じ星の光りのなかで
目ざめている木はない


ぼくはきみのことが大好きだ


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木は旅が好き     茨木のり子

木は
いつも
憶っている
旅立つ日のことを
ひとつところに根をおろし
身動きならず立ちながら

花をひらかせ 虫を誘い 風を誘い
結実を急ぎながら
そよいでいる
どこか遠くへ

どこか遠くへ

ようやく鳥が実を啄(ついば)
野の獣が実を嚙(かじ)
リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ
小鳥のお腹なんか借りて
木はある日 ふいに旅立つ―空へ
ちゃっかり船に乗ったのもいる

ポトンと落ちた種子が
〈いいところだな 湖がみえる〉
しばらくここに滞在しよう
小さな苗木となって根をおろす
元の木がそうであったように
分身の木もまた夢みはじめる
旅立つ日のことを

幹に手をあてれば
痛いほどにわかる
木がいかに旅好きか
放浪へのあこがれ
漂泊へのおもいに
いかに身を捩(よじ)っているのかが


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 木のことを詩にした素敵な作品を二つ見つけました。特にアンダーラインのところが好きです。以前から心惹かれていた木と野の草ですが、近年ますます好きになって、自然の中を歩いていると、それだけで気持ちが満たされていきます。新緑が濃い緑になると寂しくなるなと思っていたのですが、夏の元気な木々は豊かな緑蔭をつくってくれて、やっぱり素晴らしい。芽吹き、新緑、万緑、紅葉、落葉、裸木…と、木は一年中そばにいて心を癒してくれます。

テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

心に響く本-朝井リョウ著『何者』&この頃しきりに思うこと
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        【動物写真家岩合光昭さんの猫番組を見ながら我が家の猫たちを撮影】

 このごろしきりに思うこと。
 
活断層上(地震国)の原発、核廃棄物・汚染水の処理が行き詰っている原発、放射能による被害が農漁業をはじめ広範囲に及ぶ原発、事故による補償額を入れると膨大な費用となる原発・・・と、ちょっと考えただけでも問題点だらけの原発を、現政府は「早期再稼働」「外国への輸出」と信じられない行動をとっています。

東北大地震のあと、無惨に死んでいった動物たちの姿を思い浮かべるだけでも、いちばん大事なのは「儲けること」(誰が儲けるのかという視点を忘れてはいけません。)ではなく、「いのち」であることは、当たり前のことであるのに、政府主導の経済はとんでもない方向へ進んでいます。円安や株高を一部の大企業や富裕層は喜んでいるかもしれませんが、中小企業や農漁業従事者の大変さをニュースで知るたびに、誰のための政治かと思います。

先日の大阪市長の下品な暴言を追及しようとした市議会も、結局、「再度市長選をする」という脅しに負けてしまいました。選挙の仕組みに大いなる問題があり、なかなか民意が反映されない状況がありますが、選ばれた側(たとえば今の大阪市長)は、「民意の結果」だと胸を張ります。ただ愚痴るだけでは変わらない、ましてや、誰かが何とかしてくれるでは変わらない。一人ひとりが意識を高く持ち、民意を選挙に反映させない限り、世の中はよくならないと思います。不穏な動きが活発化している9条と96条のことも、心配でなりません。


nanimono.jpg 朝井リョウ著『何者』(新潮社/2012年・2013年4刷/1500円)

第148回直木賞受賞。彼の作品を読むのは三作目(『桐島、部活やめるってよ』→『少女は卒業しない』→『何者』)だが、書くたびに上手くなっていると感じました。今回の作品は、心理描写が丁寧で、とてもよかったし、ストーリーだけでなく、ちょっとした情景描写も味がありました。1989年生まれの彼、いったいどこまで進化&深化するのか、とても楽しみです。

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にのみやたくと(二宮拓人)が主人公(語り手)、主な登場人物は他に、コウタロー(光太郎)、瑞月、理香、隆良、ギンジ、サワ先輩。

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P16 俺は星と星をつないでいくように、スーパーの中を慌ただしく動く。俺が歩いたところを線で繋いでいけば、「ひとり暮らし」という星座ができそうだ。

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P108 夕方に差し掛かろうとしている二月の午後三時の電車の中では、目的地に向かおうとしているのか家に帰ろうとしているのか、どちらか分からない人たちがマフラーの中に顔の下半分を仕舞い込んでいる。
 
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 「就活」の大変さやずらっと黒いスーツの若者が並んだ映像などを、新聞やテレビで見ることが多く、「就活」の話とは知っていたので、正直読むのがしんどいかもしれないと後回しにしていました。

なぜ皆が同じかっこうをして会社訪問をしたり、会社に入ることを「就職」と考えるのだろう、もっと違う生き方もあるのではないかと、どうしても私は「就活」を批判的に見てしまい、なんとか「就活」せずに働く方法はないかと考えるタイプでしたし、集団で同じことをするのは今も嫌いです。

この小説の上手さは、私のように「就活」と一括りにものを見てしまう人間に、「就活」の背後にある一人一人の事情を見せてくれ、考えさせ、私の愚かさにも気付かせてくれました。今どきの若者を描きつつ、昔も今も変わらない人間の弱さや強さを見せてくれる、普遍的な小説に仕上がっていて、好感が持てました。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌



プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年1月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



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