心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-長田弘全詩集
  IMG_4045201506osadahirosizensisyu.jpg 『長田弘全詩集』

『長田弘全詩集』
みすず書房/2015年4月30日第1刷・5月25日第2刷/6000円
 今年の5月3日、76歳で亡くなられた長田弘(おさだひろし)さんの18冊の詩集、471篇の詩を収めた本です。26歳の時の最初の詩集『われら新鮮な旅人』から76歳の書き下ろし「場所と記憶」まで、長田弘さんの静かで穏やかな世界が好きな人にはたまらない一冊です。

 私が長田さんの詩に出会ったのは、45歳の時出版された『深呼吸の必要』から後だったので、若い時の詩集から読み始めると何だか違和感があり、読みづらく感じました。そこで思いついたのが、650ページ以上ある全詩集を後ろから読むこと。そして読み進むうちに、長田さんの言葉の優しさは、何かのっぴきならないものを抱え、辛いことを経験した上での温かさだと気付きました。最後に、20代・30代で書かれた詩を読み、それらが彼の原点で、生の形で表現されていたので、苦しくてついていけなかったのだと分かりました。

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  【菖蒲園は小雨か曇りの日がしっとりしていいですね。】

私が特に好きなのは、55歳以降に書かれている詩群です。なかでも『記憶のつくり方』という散文詩は、長田さんらしさがあふれ、何度読んでも飽きません。手元に置ける本は2冊(普通は1冊ですね…)だけと言われたら、迷わず、この全詩集と歳時記を選ぶでしょう。

 『記憶のつくり方』の「路地の奥」より
 ・・・ひとはひとに言えない秘密を、どこかに抱いて暮らしている。それはたいした秘密ではないかもしれない。秘密というよりは、傷つけられた夢というほうが、正しいかもしれない。けれども、秘密を秘密としてもつことで、ひとは日々の暮らしを明るくこらえる力を、そこから抽(ひ)きだしてくるのだ。・・・


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  【紫系の色が好きだった母(中村富士子)は、女優になりたかったとか・・・叔母の話】

 『詩の絵本』の「最初の質問」より
〔一連目〕
 今日、あなたは空を見上げましたか。/空は遠かったですか、近かったですか。
〔二連目〕
 雲はどんなかたちをしていましたか。/風はどんな匂いがしましたか。
〔六連目〕
 このまえ、川を見つめたのはいつでしたか。/
 砂のうえに座ったのは、/草のうえに座ったのはいつでしたか。
〔八連目〕
 夜明け前に啼きかわす/鳥の声を聴いたことがありますか。
 ゆっくりと暮れてゆく/西の空に祈ったことがありますか。
〔十連目〕
 いまあなたがいる場所で、/耳を澄ますと、何が聴こえますか。
 じっと目をつぶる。/すると、何が見えてきますか。
〔十四連目〕
 時代は言葉をないがしろにしている―
 あなたは言葉を信じていますか。


 本当は全部書きたいほど、どの連の言葉も気持ちも大好き!
この全詩集、大好きな表現がいっぱいで、付箋と線だらけになりました。
沈んでいた気持ちを、静かに慰め、生きよと励ましてくれる、大切な一冊です。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

心に響く本-マルクス・アウレーリウス『自省録』
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 何かにあった時にはいつもこの本を読むと、誰かが書いていて興味を持ちました。

マルクス・アウレーリウス/神谷美恵子訳『自省録』
岩波文庫/1956年第1刷・2007年改版第1刷・2015年第13刷/840円

訳者序より
プラト―ンは哲学者の手に政治をゆだねることをもって理想としたが、この理想が歴史上ただ一回実現した例がある。それがマルクス・アウレーリウスの場合であった。大ローマ帝国の皇帝という地位にあって多端な公務を忠実に果しながら彼の心はつねに内に向って沈潜し、哲学的思索を生命として生きていた。・・・折にふれ心にうかぶ感慨や思想や自省自戒の言葉などを断片的に書きとめておく習慣があった。それがこの『自省録(原題「自分自身に」)』として伝わっている手記(全12巻)である。


訳者解説より
西暦121年~180年。享年58歳。死の直前、意識朦朧としていたとき「戦争とはこれほど不幸なことか」とつぶやいていたという。彼はなによりの平和愛好者で、戦争は人間性の不名誉であり不幸であるとしており、・・・不幸にして彼の在任中はほとんど絶えず戦争が続き、最期も戦塵の中に遂げなくてはならなかった。
彼は在任中、仁政によって万人の敬愛を一身に集めていたので、死後一世紀の間多くの家では彼を家の守護神の一人として祀っていたという。・・・マルクス・アウレーリウスの統治には彼独特の思想的背景がにじみ出ていた。正義、博愛、社会連帯感情等が彼のなすことを特徴づけていた。

*文中「君」とあるのは自己にたいする呼びかけであって、いわば自己との対話ともいうべきものであろう。

  自省録マルクスアウレーリス マルクス・アウレーリウス『自省録』

私が印を付けた言葉から少しだけ引用。
第4巻
17 あたかも一万年も生きるかのように行動するな。不可避のものが君の上にかかっている。生きているうちに、許されている間に、善き人たれ。
18 隣人がなにをいい、なにをおこない、なにを考えているかを覗き見ず、自分自身のなすことのみに集中し、それが正しく、敬虔であるように慮る者は、なんと多くの余暇を得ることであろう。〔他人の腹黒さに眼を注ぐのは善き人にふさわしいことではない。〕目標に向かってまっしぐらに走り、わき見をするな。

第5巻
1 ・・・いったい全体君は物事を受身に経験するために生まれたのか、それとも行動するために生まれたのか。小さな草木や小鳥や蟻や蜘蛛や蜜蜂までがおのがつとめにいそしみ、それぞれ自己の分を果して宇宙の秩序を形作っているのを見ないのか。
24 普遍的物質を記憶せよ。そのごく小さな部分が君なのだ。また普遍的な時を記憶せよ。そのごく短い、ほんの一瞬間が君に割りあてられているのだ。さらに運命を記憶せよ。そのどんな小さな部分が君であることか。

第7巻
2 ・・・私は物事について自分の持つべき意見を持つことができる。それができるなら、なぜ私は心を悩ませるのだ。私の精神の外にあるものは、私の精神にとってなんのかかわりもない事柄だ。このことを学べ、そうすれば君はまっすぐに立つ。・・・
59 自分の内を見よ。内にこそ善の泉があり、この泉は君がたえず掘り下げさえすれば、たえず湧き出るであろう。


 この大皇帝にも思い悩む嫌なことがいっぱいあったのだと思います。ただ、それに思い煩わされることを忌み、自身を叱咤激励することで乗り越えようとした人だったのでしょう。神や宇宙への壮大な観点、仏教の悟りに通じる無常観、表現を変え自らに幾度も言い聞かせる自省の言葉、ここにはその一部しか書けませんでしたが、どれも魅力的でした。何かがあった時、他人を責めるだけでなく自らを省みる、そんな姿勢が私にも今の時代にも欠けていることに気付かせてくれた一冊でした。

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心に響く風景-大きい景色
 長い間ご無沙汰していましたが、やっと前に進む力が出てきました。

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  【冬の間枯れていた蔦が新しい葉を出し、勢力範囲を広げました!】

 1か月前、唖然とする出来事があり、パソコンに向かう気力が失せていました。その内容を具体的に書ける材料はありますが、その名を記すことすら手が嫌がります。その名を二度と目にしたくもありません。真面目に頑張っている若者たちを翻弄し、夢をつぶす会社にも社会にも未来はないと考えます。心配して何度も拙ブログを訪ねて下さった皆さん、ありがとうございました。

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  【背の届くところに咲く泰山木の花を撮ることができました。】

 この1か月間に読んで、慰められ感銘を受けた本が何冊かあります。近いうちに、ご紹介したいと思っています。世の中は、原発関連・沖縄の基地・憲法違反の安保法案などなど、施政者の言動に不信は募るばかり。人間として一番大切なものを置き去りにした経済優先の社会を、いったいいつまで続ける気でしょうか。ローマの哲人皇帝マルクス・アウレーリウスの『自省録』を、人の上に立つ人に読んで学んでほしいと切に願います。

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  【子どもの時からずっと、「空」に励まされています。】

 「平和を永遠に!」 戦後70年、沖縄「慰霊の日」(2015年6月23日)に祈念します。

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プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年8カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !
2017年 9月26日カウンター343434通過



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