心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-宮部みゆき作『ブレイブ・ストーリー』
bureibuue.jpg bureibuge.jpg 『ブレイブ・ストーリー』

宮部みゆき作『ブレイブ・ストーリー』上・下(角川書店・各1800円/文庫本あり)
SF・ミステリー・時代小説と広い分野の人気作家ですが、人が殺される話が苦手な私は、彼女の作品を今まで読まずに来ました。

今回読んだのは、小学5年生の男の子「亘」(現世)「ワタル」(幻界)が主人公のファンタジーです。TVゲームが大好きという作者らしく、RPGさながらの展開で、TVゲームを全くやったことのない私には、初めのうち抵抗がありましたが、読み進むうち夢中になりました。私にとっては、『ハリーポッター』『ゲド戦記』以来の長編ファンタジー。2006年末に読んだ心に残る1冊となりました。

どこにこんな想像力があるのだろうと思うほど、構築された世界が明確で細かいため、映像がすっと頭の中に浮かんできます。具体的な国や地方が連想できるリアルさがあります。その上、心理描写がうまく、生き方を考えさせる展開になっていて、大人の読者(ただし子どもの心を持った人)も充分引き込む力があります。さすが、うまい!と思いました。

昨夏には、これが映画化され、好評でしたが、上下で1300ページ余りの物語を、どうまとめ上げたか、興味があります。現在、DVDのレンタルあき待ちです。

自分と照らし合わせて、いろいろ感じるところがありました。テーマに触れてしまうかもしれませんが、心に響いた言葉を、いくつか引用します。

「あなたは勇敢じゃ。あなたは優しい。あなたは他者を思いやる。友を思いやる。あなたは善良じゃ。しかし、そのあなたのなかにも、憎しみがあり、妬みがあり、破壊がある。それはどうすることもできぬ真実。目をそらし背を向けて逃げ出すことはできぬ真実。」

「たとえ運命を変えても、僕は変わらないってことに気がついた。僕が変わらなかったら、どれだけ運命だけをいじっても、悲しみも憎しみも失くならない。」

「きっとこのヒトは、いつもこんなふうだったんだ。胸にあるのは自分の言い分だけ。見るものも、自分の見たいものだけ。求めるものも、自分のほしいものだけ。傷つくのも、いつも自分だけ。思いどおりにならないものを捨て、気に染まないものを切り離し、そこにあっても見ないふりをして、ひたすら求めるものはただひとつ。自分が求めるにふさわしいものだけ。それでは何処にも居場所なんかつくれるわけがない。誰の親切も届かなければ、誰に裏切られようと、その兆候を感じることだってできるはずがない。」

本当は、もっといっぱい心に響いた部分があるのですが、これ以上引用すると、読む楽しみを奪ってしまいますね。ここまでにします。どれもこれも自戒を込めて書きました。

清濁・正邪・善悪・美醜・明暗・愛憎・陰陽・悲喜・哀楽・生死・去就・虚実・真偽・光と影…このように対の言葉が多いのは、互いが表裏一体、対になっているからこそ存在している、結局は一つのものであることを示しているのだなと、この長い物語を読んだあと、しみじみと思いました。

負の部分だけでも困るけれど、負の部分がゼロというのが、いい生き方ではないことは、無菌状態で育ったものが、外に出た途端、弱さを露呈することからもわかります。選ばれたいい環境だけが、幸福につながる訳ではない、雑多な中で育てた力こそが、本物の力になる、そんなことも感じさせてくれました。

正負どちらも持ち合わせもった自分であることを忘れず、等身大で現実を生きていかなくてはと思わせてくれる、いい物語でした。新聞にも連載されていたので、すでに読まれている方もあるかと思いますが、たまには物語の世界にどっぷり浸かってみるのもいいものですよ。

hikurasiue.jpg hikurasige.jpg 『日暮らし』

同じく宮部みゆきさんの時代小説『日暮らし』上下(講談社・各1600円)は、同心の井筒平四郎が主人公ですが、11歳の美少年の活躍が楽しく、娯楽色の強い読み物です。これも、物語の世界を創り上げる作者の力を感じさせる作品で、面白かったです。

余談になりますが、この小説の中に「ちろり」という、お酒を燗する容器が出てきます。先月の歌会で、読みの当たった歌に、この「ちろり」があり、全く別の種類の燗する容器を思い浮かべた私は、ピントのずれた解釈をしてしまいました。でも、この失敗のおかげで、「ちろり」を覚えました。この年になっても、知らないことだらけで、お恥ずかしい限りです。

追記1:私は読んでいないのですが、登場人物が重なるので、できれば『ぼんくら』上下を先に読むといいようです。

追記2:先ほどの文で、対になっているものを書き始めたら、面白いほど浮かんできて、止まらなくなってしまいました。先ほどの文に続けて書くのは、どうかと思いましたので、頭の体操を兼ねて、ここに書いてみました。

+-・強弱・諾否・遅速・緩急・鋭い鈍い・好き嫌い・有無・親子・男女・老若・終始・収支・遠近・高低・冷暖・大小・多少・出入・黒白・紅白・天地・昇降・上下・前後・凹凸・濃淡・長短・慶弔・軽重・存亡・自他・主客・新旧・夫婦・父母・兄弟・姉妹・雌雄・乾湿・異同・深浅・昼夜・朝夕・苦楽・浮沈・内外・賢愚・動静・優劣・和洋・本末・得失・疎密・背腹・山川・日月・草木・加減・吉凶・縦横・巧拙・真贋…本を読んでいても、対の言葉ばかり浮かんで困っていました。ここに書いて、やっとすっきり。皆さんも、続きをどうぞ。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
こんばんは
宮部 みゆきさん、私は好きです。
面白かったのは『理由』 『火車』が特に印象に残っています。

でも、、、
『ブレイブストーリー』は挫折しました。
丁度、券を頂いたので映画は観ましたけど。

『日暮し』は買ってあります。
『ぼんくら』を読んでほのぼのとした井筒平四郎や長屋の人達が好きになりました。

宮部さんはそれぞれ違うのですが『ブレイブストーリー』は初期の頃と作風が似てるように思えます。
バーチャルと言うかSF風と言うか。

今年は時間を作って本をいっぱい読みたいわ。
【2007/01/10 20:14】 URL | ベンジャミン #oUPgpoCM [ 編集]

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【2007/01/11 12:56】 | # [ 編集]

ベンジャミンさんへ
ベンジャミンさんも本がお好きなんですよね。
私は、怖いのが苦手で、どちらかというとヤングアダルト系(十代)の本が多いです。
若いときに、どろどろとした大人びたのを読み過ぎた反動で、今はさわやか系が好きです。

「『理由』 『火車』が好きで、『ブレイブストーリー』は挫折」というベンジャミンさんと、私は丁度反対。間をとって、『日暮し』『ぼんくら』は、共に楽しめそうですね。

言葉だけで創り上げた世界に、真実味を持たせるのだから、作家っていうのはすごいです。本人さんも、面白いのでしょうけれどね。

最近読みたい本が次々出てきて、忙しいです。
【2007/01/11 17:54】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

- - さんへ
楽しみにしています!
【2007/01/11 18:02】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


年末に読まれた作品は何なのかな?ってアップされるのをわくわくしながら待っていました。
ブレイブストーリー、夏休みに子どもと一緒にスクリーンで観て、その足で原作を買いに行きました。
息子と先を争って読んでしまいました。

RPG「ドラクエ」ファンの息子と私です。
すんなりとストーリーに入っていけました。
設定も導入部分もRPGで慣れたパターン、大雑把に言ってしまえばあらかじめほぼ見通しのつくエンディング。でも、だから、どうやってたどり着くのかをドキドキしながら楽しめる。

直球に威力のない息子らしく、ワタルよりミツルのほうに肩入れして?作品を楽しんだようでした。

RPGはイロイロ本当にたくさんの種類があるのですが、「ドラクエ」がお気に入りなのは、出会った人・町にいる人とどのように会話を重ねるかでサイドストーリーを知ることができ想像の世界が膨らんでいくところ。最小限の会話でもエンディングにたどり着くことはできるのですが、登場人物の影の部分や過去を知ることで、より楽しめるような仕掛けがたくさん隠されていて、おなじゲームを同時期にしていても見てない場面がお互いにあったり、一度終らせてもう一度トライして気がついたり・・・どの人物とどのタイミングで話をするかでかわっていく枝葉の部分が、本当によくできていて・・・
イトイさんの作られた「MOTHER」もサスガ!って感じに言葉が本当に良く選んであって好きなゲームです。

話がずいぶんそれてしまいました・・・
小学生の男の子が、家族や仲間をたいせつに思いながらどんどん成長していく、すごいセリフがバシバシ決まってしまう。自分の中にあるいろんな思いに気づき葛藤を繰り返しながらも、それを否定せず認めて乗り越えていく。ポジティブなパワーをもらえた作品でした。
DVDでもう一度観ようかな。本ももう一度読んでみようかな。

対になってる言葉、たくさん見せてくれてありがとうございます。
眺めながら「どうしてこの並びなんだろう?逆にしたら・・・どうなんだろう?」って思いました。
時々買って読んでる雑誌に「ちいさい・おおきい よわい・つよい」 「おそい・はやい ひくい・たかい」っていうのがあるからでしょうか。気になってしまいました。

【2007/01/12 09:19】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimicoさんへ
こんにちは、haoは静かにお昼寝中です。

『ブレイブストーリー』、図書館の順番待ちをしていたら、読むのがこんなに遅くなりました。
kimicoさんは、とっくの昔に本も読み、映画も観ておられたんですね、しかも、息子さんと。

ゲーム苦手の私も、さすがに『ドラクエ』は知っていますが、子どもが大きくなると、どんどんそういう若者文化から離れてしまいます。気だけは若いつもりだったんですが…。

イトイさんもゲームの話とか結構好きですね。
宮部みゆきさんも、相当ゲームが好きで、ゲームの攻略本を集めるのが趣味だそうですね。
この辺になると、世代間のギャップか、家庭的な差か、性格や考え方の違いか、とにかくゲームに縁のない我が家です。

「対になってる言葉、眺めながら「どうしてこの並びなんだろう?逆にしたら・・・どうなんだろう?」って思いました。」ってところ、ほんとですね!思ってもみなかったんだけど、確かに気になる。
いいイメージのものが先に来ている例が多いですね。

雑誌の「ちいさい・おおきい よわい・つよい」は、kimicoさんと同じように考えて、問題提起をしているのですね、すごい!

中にいくつかマイナスのイメージのものが先に来ているのがありますが、それは発音上の問題かしら?
それとも、発音は慣れであって、あくまで、意味に重きが置かれているのかしら?誰か、知っている人いないかなあ?

kimicoさんの指摘で、私も、昨秋作った短歌を思い出しました。
高きから低きに並ぶ行進のしんがりの子のときどき走る

私は背が小さかったので、背の高い足の長い人が先頭の行進は、とても惨めな気持ちになるので、嫌いでした。
大きい子が前に来て整然と行進する様子はきれいなのでしょうが、私は嫌いです。
まるで、弱肉強食?長いものには巻かれろ?軍隊みたいじゃないですか。
大から小へと並ぶ行進には、見かけを優先して、弱いもの小さいものの立場に立てない、強者の発想がかいま見られるようで、チビの私の側からはホントに嫌な気分になるものでした。
こんな気持ちを短歌には込めたつもりですが、逆の立場から見たら、どうなのでしょう?

何かを考えるとき、逆の立場なら…と想像するのが、秘かなマイブームです。(一時期この言葉が流行りましたね。)

kimicoさんが時々買われるという雑誌の発想は、好きです。

今、『となり町戦争』を読んでいます。興味深い本です。
【2007/01/12 15:12】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年5カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
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