心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本―ロバート・ウェストールの本
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今晩は。暑くなりましたが、皆さん、お元気ですか?私は、最近バタバタしていて、なかなかパソコンに向かう時間がとれません。紹介したい本がたくさんたまっていて、ある程度原稿もできているのですが、どうせなら何冊か関連づけてと思っているうちに、タイミングを失してしまいました。それらは、またいずれかの機会に譲るとして、今回は「うまい作家だ。」と思わずうなった、ロバート・ウェストールの本を、読んだ順にご紹介します。

ロバート・ウェストールは、イギリスで人気の児童文学作家で、賞も多く取っているのですが、これらの心情描写の優れた物語を読んでいる子供たちが、イギリスには多くいるというのも驚きです。もともと美術教師だった彼が、自分の息子のために物語を書いたのが最初だったそうです。その息子さんが、事故のため10代で亡くなり、それ以降は自分が天国に行ったとき、一緒に語り合えるように、彼に届けるつもりで書いたそうです。

背景に必ず戦争が出てくるのですが、戦争がメインではなく、人間の生き方・気持ちが綴られているのが、大きな特徴です。少年の絶望的なまでの孤独感に痛みを感じ、また、共感を覚えますが、たいてい大人の誰かが、さりげなくサポートしてくれるところが救いです。少年の気持ちに寄り添って書かれているのですが、決して幼稚ではなく、大人も、というか、大人こそ、読み浸れる本だと思いました。どれも名作です。

 『弟の戦争』(ロバート・ウェストール作・原田勝訳/徳間書店)
湾岸戦争が背景。ぼく、弟のアンディ、両親、先生が主な登場人物。弟が、実にデリケートな少年で、相手を思う気持ち、想像力が強く、相手の気持ちまで引き受けてしまう。その弟を案じる「ぼく」に、医者である先生が言う言葉が印象的でした。
「きみの弟はあまりにも正気だったんだ。だれもが自分と同じ人間だったっていう思いが強すぎたんだよ。狂っているのはまわりの世界の方さ。」優しい人間には、生きづらい世界が広がりすぎているのです。

 『猫の帰還』(ロバート・ウェストール作・坂崎麻子訳/徳間書店)
黒猫ロード・ゴートが、飼い主のパイロット、ジェフリーを求めて旅をする、1940年のイギリスが舞台の話。ドイツ軍の侵攻の中で、戦争によって変わって行く暮らし、その中で黒猫がもたらす偶然の幸福が描かれている。前半は少し乗りにくかったです。

 『海辺の王国』(ロバート・ウェストール作・坂崎麻子訳/徳間書店)
孤独な少年の旅、厳しい現実と温かい大人の存在、非常にうまく書けている小説です。
12歳のハリーは、戦時下爆撃を受け、家族を失う。一人で生きていこうとする彼の前に、飼い主をなくした犬のドンが現れ、助け合いつつ旅をする。途中出会う大人が、良いも悪いも含め、さまざまな生き様を見せてくれる。何人かの心ある大人に助けられ支えられ進むのだが、・・・結末に、少々驚きました。

 『クリスマスの猫』(ロバート・ウェストール作・坂崎麻子訳/徳間書店)
主人公のキャロライが、孫娘に自分の子供時代の話を、生き生きと語る楽しい物語。短くて読みやすく、どちらかというと幼い人向け。詳しく読むと、気になることもいろいろ…。

 『かかし』(ロバート・ウェストール作・金原瑞人訳/徳間書店)
全寮制の学校に通うサイモン、軍人だったが今は亡きパパ、売れっ子画家ジョーと再婚したママ、妹ジェーン、友人トリスが、主な登場人物。夏休み、ジョーの家で過ごすことになったが、敷地には、怖い出来事のあった古い水車小屋がある。小屋の前に並ぶ三体のかかしが、少年の心情を象徴し、『ゲド戦記』の影との戦いを連想しました。少年の孤独感が際だつ、とても上手な物語で、怖いのが苦手な私ですが、一気に読みました。

【7月5日追加】
『ブラッカムの爆撃機』(ロバート・ウェストール・作/金原瑞人・訳/宮崎駿・編/岩波書店)
① 「ブラッカムの爆撃機」 ② 「チャス・マッゼルの幽霊」 ③ 「ぼくを作ったもの」 ④彼の再婚相手(=最初の読者・最大の理解者・最高の支援者)リンディ・マッキネルの特別寄稿「ロバート・ウェストールの生涯」 ⑤本の最初と最後に、宮崎駿・作の漫画「タイスマンへの旅」、全部で五つの作品が入っています。
①は、彼の物語にたびたび登場する第二次世界大戦の時のイギリス空軍の話。遠い国のせいか、日本の同時期のことを書いたものより冷静に読めました。
②は、彼の得意な怖い話です。
③と④の話が彼を知る上で、興味深かったです。③から少し引用します。
「祖父はしっかり種をまいていた。あらゆるものには物語があるし、あらゆるもののあらゆる傷にも物語がある。祖父はぼくにそれを教えてくれた。」

 彼の物語が、妙に人を惹きつける訳が、今までよりわかった気がします。彼の作品は、少年および少年の心を持った人におすすめです。筆力のある作家だと思いますが、読み手の好みはかなり分かれそうです。ちなみに、宮崎駿さんは、彼に共通点を感じたそうです。


テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

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【2007/06/15 21:12】 | # [ 編集]

こっそりさんへ
こちらこそ優しい言葉をありがとうございます。
今読んでいる本『終生ヒトのオスは飼わず』に、
可愛い猫の写真がいっぱい出てきて、ハオの小さい時を思い出し和んでいます。
心を温かくしてくれものに出会って、ほっこりとした一日一日を重ねたいですね。
【2007/06/15 22:34】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


こんにちわ。6月号の編集後記の真中さんもこの本取り上げていてビックリしました。通じるものがあるのね、お二人。7月は仕事と重なり芦屋へは行けないので、大阪歌会に行く予定です。青木さんも行く?そしたら食事も一緒にしようね。明日から帰省するので、今、今月の10首投函してきて、ちょっとホッとしています。じゃあまたね。
【2007/06/16 17:02】 URL | 桶田夕美 #- [ 編集]

桶田夕美さま
6月号の編集後記、私も読んでびっくりしました。
ちなみに私が『弟の戦争』を読んだのは、2004年の12月。
とぎれとぎれで、『かかし』は、つい最近読みました。
真中さんとは、名前が似ているから、偶然一致したのかしら?なんて…。
たぶん子供さんと一緒に読まれているのではないかと、推測しています。
編集後記に書かれている本は、他の方の時も、結構重なるときがあって、嬉しく思うことが多いんですよ。
桶田さん、今回、吉川さんのところで8首も!すごいなあ!
歌会、なんとか頑張って行きたいのですが…、行けたときはお食事もぜひ。

【2007/06/16 18:11】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年4カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
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2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
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