心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く詩歌(歌集)-人生の大先輩に頂く元気!
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長生きをされている方を見ると、それだけで羨ましくなります。というのも、私は早くに両親・姉妹を亡くしているからなのですが、ことに3月は命日が多く、自分の気持ちも沈みがちになります。
3月8日姉(33歳)、3月29日母(49歳)、3月30日姉(4歳)・妹(1歳)・母の姉(79歳)。「なぜ?3月に、女ばかり……」墓石に命日を確かめたときの衝撃は大きく、今も忘れられません。
長生きをされることで、周りの家族がさまざまな困難や悲しみを抱えられると聞くことも多く、ひと言で「長生きバンザイ!」と脳天気に言ってはいけないのかもしれないのですが、やはり私には素晴らしいことに思えるのです。
今回は、長生きをされ、元気に自立して暮らしておられる方を3人ご紹介します。

zinseiiroiro.jpg お1人目は、100歳の「藍さん」です。小説家になるのが夢で、新聞に時々文章を寄せておられたけれど、50歳のとき進路変更され、今も現役で書道の先生をされています。色紙に揮毫する字が下手で、習うよう勧められたのがきっかけというから驚きです。
老人施設に月3回、ボランティアでお習字を教えに行くのが楽しくてと、明るく元気な声で話されます。色白の美しい方で、髪にも服にもいつも気を配っておられ、感心することしきりです。そんな藍さんのことを、少しだけ短歌にしてみました。

つぎつぎと人を見送り百歳の藍さんは情の薄れしと言ふ

「日が経てば百歳だって治るのねえ」痛みしといふ膝に手を当つ

長生きの秘訣はどうやらアイスらし藍さん毎日コンビニに行く

四時間の読書欠かさぬ藍さんは芥川賞一回より知る

「藍さんの元気もらおう」百歳の話題は尽きず半日過ごす


私の、ちょうど人生の岐路に出会った藍さん、「そうか、50歳からだって新しいことができるんだ!」と、大きな勇気をもらいました。同僚の書の先生である藍さんですが、著書を頂いたのがご縁で、今もお話を聴きに伺ったり、手紙のやりとりをしたりしながら、励ましてもらっています。
好奇心旺盛で、何にでも前向きな姿勢に、弱輩者の私は学ぶことばかりです。


kaninotatebai.jpg お2人目は、80歳を超えて初めての歌集を出された「岩井さん」です。短歌の所属結社は異なるのですが、歌会で、いつもにこにことお話しされる様子が印象的な方です。楽しんで歌を作られているなあという雰囲気があふれている歌集『カニノタテバイ』から何首かご紹介します。

ちょーうれし、今日で阪神八連勝、喜べるとき喜んどこや

人のうえ人をつくらず人のした人をつくらず 天皇おわす

いわばしるたるみのうえにふださがる「ゴルフ場あり飲用不適」

犬の顔人に似るのか人の顔犬に似るのか朝六千歩

義経の御八歳のされこうべ見る人うなずき列すすみ行く

敵襲に山を転げて逃げ落ちぬ八十路を生きて夢怖しなお

年ととも脳の細胞疎になりて過去は未来を追い越し候


阪神ファン、今時の言葉遣い、有名な言葉を使っての風刺、共感の笑いを誘う歌、戦争体験、年をとる寂しさ、……頭と心の柔軟さを、感じさせてもらえる歌集です。


katanoarukumo.jpg お3人目は、初めての歌集を昨秋出された「安井さん」です。お年は?ですが 、歌集のタイトル『肩のある雲』は、78歳のときにできた歌からとられたそうです。歌会や講演会などでご一緒させていただくことが多いのですが、学ぶ意欲にあふれておられます。仕草が初々しくて、私はなぜかいつも「少女のような方だなあ」と思うのです。

触れずとも布の厚みのよみがへる掌を垂りて佇つ軍服の前

樫の幹のうしろに隠れおほせたる積りの鵯ぞ驚かしやらむ

完全失業率に比例してき自死の率職ある人ら集計をせり

欠けそめし月にちかぢかとうつぎ光り亡き子が役目の閂を閉づ

雪の白さに柊は咲くひひらぎは夫亡きわれに鳥のくれたる

まだ来るなと夢に言ひたる亡き夫を又思ひゐる月が見てゐる

こよこよと出て来よと呼ぶ鳥の声うたふやうなりわたしも歌ふ

たまはりて戒名一字あることも娘に言ひ置かむ雨の日の部屋


学徒として軍服を縫った日々、小鳥など小動物への温かい目、社会の矛盾に向けた目、長年の看病の末に亡くなられたご主人、後を託す予定だったご子息の早い死、ご自身の生への覚悟……。生き続ければ生き続けるほど、人は辛い出来事にも出会うわけですが、それに打ちひしがれてしまうことなく、日々の暮らしの中に心温めるものを見つけて前向きに生きておられます。視野が広く、弱者へ心を寄せることのできる人だからこそ、人生を豊かに生きることができるのだなと思いました。

人生の大先輩方から、まだまだ学ぶことがいっぱいの私です。

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テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

長寿とまで贅沢は言わないけれど、早すぎるという年齢で死にたくはありません。
今のご高齢の方は、戦争を体験しているので、まだまだ1人でも多くの人に、戦時中や戦前の体験談、平和への思いを伝えてもらいたいものです。
どんなふうに戦争になっていったかを学ぶことは、どうすれば戦争にならないかを考える上で貴重な示唆を与えてくれるはず。
【2008/03/16 11:54】 URL | こもれび #hGt.gl.I [ 編集]

こもれびさんへ
>長寿とまで贅沢は言わないけれど、早すぎるという年齢で死にたくはありません。
同感です。せめて、今までかけてきた年金の元を取るまでは…と、私などは思います。

戦争体験は、本で読むのと違って、直接聞くのはやはり印象が鮮明です。
先日も、歌会の後の二次会で、引き揚げの時の話を伺ったのですが、具体的だから映像が自分の中に浮かんできます。
思い出すのも辛く話したくないという方もおられますが、「頑張って歌にしてくださいね。」と、私たち(相対的に)若い者も時々言ったりします。


【2008/03/16 19:36】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

おはようございます。
私も、父は29年前、母は17年前、弟が3年前に亡くなりました。
どうも、我家は短命のようです。
長生きしたいと思っても、運命に逆らえず、あまり皺くちゃになるまでは
生きたくないな・・・子供に介護をさせたくないな・・・と
この歳になると、考えることはこんなことばかりです。
父や母や弟と同じように苦しまずに、寝たまま逝きたいが本音?
まわりは悲しみますけど、本人は楽ですよね。

それにしても、綺麗なお花!鮮やかで美しく愛らしい(^・^)
大好きな種類のお花がたくさん入っていてパッと春を感じます。
今日は暖かくて良い休日?でもないんです、
今から病院通い、内科と整形外科…やだなぁ~歳だなぁ~(T_T)
【2008/03/17 10:19】 URL | ノロタン #B7q/.fmY [ 編集]

ノロタンさんへ
お花、室内で撮ったので、ちょっと暗くなって可哀想でした。
ベランダに花瓶を出して、撮り直したのですが、なんかそれもわざとらしくて…。
この時期、我が家には、花があふれることが多く、幸せです。
病院は、いかがでしたか?病院通いって、疲れますよね。

ノロタンさんも、早くに身内の方を亡くされたんですね。
お父様とお母様の亡くなられた間が、12~13年?ですね。我が家もです。
この期間を考えると、13回忌とかいうのは、それなりに意味がありそうですね。
我が家も短命の傾向が強く、自分で「佳人薄命」なんて冗談を言っていますが、
最後に残った人は長生きするそうで、心の底ではその言葉を信じてもいます。

最後までどう生きるか、というのは、難しい問題です。
後の人が困らないように、様々なことの整理はしておかないといけないなと思うのですが、なかなか時間がとれません。
いつ意識がなくなるか、先のことはわからないから、できるときにできることから…と、思いはするのですが…。
まあ、まだ、そんなにせっぱ詰まってないって、思っているからなんでしょうね。
【2008/03/17 20:18】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

こんにちは
お彼岸ですね。
今朝(夕べ?)久しぶりに夫が夢に出てきました。
病気になってからの夫で11年間の真ん中あたりの状態の頃の夫でした。
お彼岸なんだなぁ~と朝から感慨深げに思いました。

お元気な高齢の方は存在そのものが嬉しくなります。
反対に全て介護が必要になっても生き続けなくてはならない人たちもいます。
自分の命を決める事は出来ませんが
どのように生きたら元気に年老える事が出来るのか、最近はよく考えます。

亀さんはお若い時に大切な方とお別れになったのね。
その方々の命を頂いて今はお幸せなのね。
【2008/03/18 11:14】 URL | ベンジャミン #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミンさんへ
>お彼岸なんだなぁ~と朝から感慨深げに思いました。
そうですねえ。私もここ数日、友人知人の身内に悲しいお別れが続き、複雑な思いです。
春も秋もやはりお彼岸は、季節の変わり目で、いろんな変化が大きいのかもしれません。

久しぶりのご主人の夢、夢でも会えたら嬉しいけれど、やはり生きていて欲しいですよね。
ここにあげたお三人のうち、女性の方はお二方ともご主人を亡くされています。
お一人目の方は人生の半ばで、お三人目の方は、ベンジャミンさんと同じく10年の介護の後に。
いつも行く病院の先生は「人間は必ず死ぬのだからジタバタしないように」とおっしゃるのですが、そう言われてもねえ。

私は命をいっぱいもらって、いろんな場面で亡くなった家族に助けてもらっています。
いかに生きいかに死ぬかというのは、人生の一番大きな課題かもしれませんね。
【2008/03/18 19:05】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年1月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
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