心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-帚木蓬生の小説
帚木蓬生(ははきぎほうせい)の小説

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水神 すいじん』
(上)4刷 285ページ (下)3刷 281ページ
帚木 蓬生(著) 各巻1575円 2009年刊行・新潮社・時代小説
新田次郎文学賞受賞にふさわしい、力強くまじめに前向きに生きる人々の物語。

江戸時代、筑後川の近辺にありながら、高台で水不足に苦しむ江南原と呼ばれる地域の村が舞台。五人の庄屋が財産、生命をかけて郡役所、近隣の村、百姓などを説得し、筑後川を堰きとめて水路を作り村々に流す大事業を成し遂げる物語。「打桶」と呼ばれる、朝から晩まで毎日、川の水を桶で汲み出して田んぼに流す仕事を続ける二人の百姓(元助と伊八)とその庄屋(助左衛門)を中心に、話が進んでいく。当時のお百姓さんたちの生活がリアルに描かれている。

お百姓さんたちの労力、立派な庄屋の存在(高田村庄屋山下助左衛門〈地図作成〉、菅村庄屋猪山作之丞〈文才ある能筆家〉、今竹村庄屋重富平左衛門〈武士と遠縁〉、清宗村庄屋本松平右衛門〈薬草に詳しい医師〉、夏梅村庄屋栗林次兵衛〈助左衛門の娘婿〉)、理解ある老武士(久留米藩士菊竹源三衛門)、これら皆の協力があって初めて成し遂げられた事業に、深い感銘を受けた。今まで見過ごしていた水路や、建設の苦労を書いた石碑も、この本を読んだ後では違って見えてくると思った。

本好きの友人、時代小説好きの兄に「いいよ、ぜひ!」と勧められて、初めて読んだ作者だったが、丁寧な作風と庶民への深い愛情に裏打ちされた文章に、力量を感じた。私からも強くお勧めします。


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国銅 こくどう』
帚木 蓬生(著) 新潮文庫2006年刊 単行本は新潮社2003年刊
上432ページ、620円 単行本は317ページ
下447ページ、620円 単行本は320ページ

長門の榧葉(かやば)山で、都に献上する銅をつくるため、懸命に働く人々。まず、その命がけで過酷な労働に驚く。どこに配置されても一生懸命努力し真面目で熱心な、若き主人公、国人(くにと)は、その人柄ゆえに、よい出会いが多い。なかでも薬草や文字の知識を与えてくれた僧、景信(けいしん)との出会いは重要である。

やがて、若者を含む村人15名は、大仏の造営の命を受けて奈良へ旅立つ。その旅も命がけの厳しいものである。東大寺の大仏建立のため、のべ何十万人もの人夫が、このように全国各地から大事業に駆り出されたのだ。大仏を作るための過重な労働の日々も、人々は体を酷使して懸命に働く。任期の3年は5年になり、もっと長期の人も居るが、任期を終え故郷に帰る道は、往路以上の困難に見舞われる。

こちらも感動大作。最近の小説のように気楽には読めないが、読んでよかったと思える本だ。現在の奈良の大仏は、2回の消失により再建されているが、一部、天平時代のものが残っているという。こういう建造物を、時の権力者の側からではなく、労働力としてかり出され懸命に働いた人たちの魂がこもったものとして、これからは見ていきたい。

上P199より
お前たちひとりひとりがお前たちの主だ。お前がお前の燈火だ。自分の燈火で自分の足元を照らすがいい。

下P159より
お前に特に厳しくしたのは見込みがあったからだ。教えありて類なしと言う。人は何を学んだかで決まる。地位や境遇や貧富貴賤はとるに足りないというのです。・・・苦しむことを好きになれば、その仕事からも好かれるようになる。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

ハイサイ!

今回の本は少し難しそうですね~
【2010/07/13 23:06】 URL | 中村ケンジ #- [ 編集]


帚木さんの本は難しそう。
「水神」は書店で目にした事がありますが色合いから手に取りませんでした。

そうとう、読み応えがありそうですね。
機会があったら・・・
図書館から本が届いた、とメールが来ました。
私も時代小説です。
「信長の棺」加藤廣著 初めて読む人です。

今日は夏休み前、最後の陶芸です。
雨が降りませんように。
【2010/07/14 10:17】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

中村ケンジさんへ
こんばんは。
二冊とも、主人公が若者で、最初から最後まで登場しますので、彼になりきって読むと、すっと話の中に入って行けます。『カデナ』より、易しいかも。
【2010/07/14 22:29】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

ベンジャミン(keiko)さんへ
こんばんは。
こちらは激しく降ったり、止んだりでした。陶芸、いいですねえ。

>帚木さんの本は難しそう。
ちょっと取っ掛かりがしんどいかもしれませんが、いったん話に入るとぐいぐい引き込まれます。
二冊それぞれに違った深い感動があるのですが、最後の方は、正直、号泣しそうでした。
そういうところは、『沈まぬ太陽』と似ているなって、思いました。
ただ、こちらは、二冊とも、嫌な人が出てこないので、安心して読めます。
>機会があったら・・・
どうか機会がありますように…。

>「信長の棺」加藤廣著 初めて読む人です。
私、時代小説では、藤沢周平、司馬遼太郎ぐらいしか知らないのです。どんな人でしょうね。

【2010/07/14 22:41】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


帚木蓬生、まだ読んだことがありません。
かなり本を読んでいるつもりですが、まだまだ足りませんね(笑)
最近、初体験だったのは北村薫。
やっぱり体験してみないと、損することは多いと実感しました。
【2010/07/16 21:21】 URL | こもれび #hGt.gl.I [ 編集]

こもれびさんへ
>帚木蓬生、まだ読んだことがありません。
私もこの本が初めてでした。
昔、新田次郎の『強力伝』などを、力を入れて読んだ覚えがありますが、今回の本も力が入りました。
私のイメージしているこもれびさんに、これらの本は気に入って頂けそうな気がします…。
北村薫さんは、子ども向けからミステリー、詩歌と守備範囲が広く、本好きの方ですね。
私も、まだまだ知らない作家がいっぱいです。特に、外国は全然手が回りません。
【2010/07/16 23:17】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
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