心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-秋の夜長は長編小説
       IMG_9277201011.jpg 桜

この頃、歌集や句集ばかりで小説に飢えていたので、思い切って長編ばかり連続で一気に読みました。歌集は書かれていない世界を想像しながら読むので、かなりエネルギーを使うし、ややもすると作者の人生を丸ごと受けてしまうしんどさがあります。対して、久しぶりに長い小説を読んで思ったのは、小説は本の世界に入り込むのがたやすく、極端に言うとストーリーを追うだけなので、すぐ無の境地になれすごく楽だということ。本屋さんで、短歌がマイナーで小説がメジャーなわけを、改めて実感しました。


               honkakusyousetuzyou.jpg  honkakusyousetuge.jpg 

水村美苗『本格小説 上・下』
  (2002年/新潮社/1800円・1700円/p469・p412)
作者が米国で過ごした少女時代に出逢った実在する男(東太郎)について、作者はまるで小説のような彼の人生の話を聞く。辛い立場に置かれた幼なじみの男女が互いに心惹かれるという話の原点は、村上春樹の『1Q84』も思わせるが、作品としてはこちらが先。その後の展開への、この原点の切実さも、こちらの小説のほうが勝っていると思う。
近代小説のような言葉の雰囲気と『嵐が丘』のような大作ぶりに、私はすっかり参りました。漢字とかなの配分や紙の質、表紙のウィリアム・モリスの装画などが、本の内容にも私の好みにも合っていて、寝るのも惜しんで読みました。帯には「大人の読者のための超恋愛小説」とあります。朝日新聞の「0年代の小説」にも、あげられていました。


 IMG_9083201011.jpg南京櫨


百田尚樹 著『永遠の0(ゼロ)』
  (2006年/太田出版/1600円/p445)
児玉清の帯文が非常に的確に本の説明をしていたので、それを引用します。
題名から単なるゼロ戦の話かと思ったが、とんでもない。息をつかせぬ展開、予想もつかぬ最後のどんでん返し。戦争の真実、愛の力を見事に描き出した冒険譚にして最高のミステリーに僕は狂喜した。このような本に出会ったのは初めてだ。

戦争物というと、つい悲惨だろうとか、読まねばならないという義務感とかが先に来て、これでは駄目だと思いつつも、正直手に取ることが少ない。この本は、現代の若者(姉・弟)が、特攻で死んだ祖父のことを調べるという設定で、読みやすい工夫がされている。現代にも通じるマスコミや官僚への不信も上手く混ぜながら、私の知らなかった戦争の様子が詳細に述べてあり、小説なんだけれどドキュメント風の良さを感じながら夢中で読んだ。

                 eieinnozero1011.png   201011イブの贈り物

百田尚樹『聖夜の贈り物』
   (2007年/太田出版/1200円)
『永遠の0(ゼロ)』が大好評だった著者の二作目。心温まる愛の物語であるところは、前作と共通するところもあるが、これは恋する大人のための童話(ファンタジー)短編集。クリスマスプレゼントにこんな本をもらったら、女性はぐっとくるだろうな。
「魔法の万年筆」「猫」「ケーキ」「タクシー」「タクシー」「サンタクロース」どれも、気持ちよい結末で、幸せな読後感だった。
ウイキペディアによると、著者は、「大学在学中に『ラブアタック!』に出演し、みじめアタッカーの常連だった」そう。「現在は、放送作家で、人気番組『探偵!ナイトスクープ』構成を手がける」とある。それを知ると、さらに興味がわく。


 IMG_9165201011.jpg 唐楓


宮部みゆき『小暮写眞館(こぐれしやしんかん)
  (2010年/講談社/1900円/p716)
古い「小暮写真館」を購入し引っ越してきた花菱一家(秀夫・京子・英一・風子・光)が中心の話だが、ST不動産の須藤社長と社員の垣内順子も、ある意味キーパーソンである。主人公「花ちゃん」こと英一と、幼なじみの歯科医の息子「テンコ」こと店子力(たなこつとむ)に、同級生の甘味処の娘「コゲパン」こと寺内千春と弁護士の息子橋口などが加わり、不思議な写真の謎を解くというストーリー。深いテーマも含んでいるのだが、高校生が主人公なので青春物としても読め、楽しいエンタメ小説に仕上がっている。700ページもあることを感じさせない展開で、最初から最後まで一気に読めた。

                          koguresyasinkan1011.jpg

この本の印象に残った言葉から少しだけ・・・
p351須藤社長の言
「生きてる者には、ときどき、死者が必要になることがあるんだ。僕はそれって、すごく大切なことだと思うよ。こういう仕事(引用者注:不動産取り扱い業者)をしてるとさ、この世でいっちばん怖ろしいのは、現世のことしか考えられない人だって、つくづく思うから」
p363弟ピカの言
「ボク思うけど、不登校の子って、学校が嫌なんじゃなくて、学校が怖いんだよ」
p387須藤社長の名言?迷言
「必要なときに、絶妙なタイミングで、会うべきヒトに会うようにできてるんだよね。」
p700の須藤社長の弁
「人生にね、こういうこともある。・・・あるとき、ある場所で、ある人に、自分にとってとても大切なことを知ってもらいたいと思う。どうしても知ってもらいたいと思う。けどね、それを知ってもらったら、もうそれまでのような距離ではいられない、ということがあるんだよ。」


 IMG_9104201011.jpg 南天

  今回は、秋の葉をアップで写したものを中心に載せました。
  今回あげた本は、どれも興味深い力作揃いでしたが、オススメ度は上から書いた順です。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

秋の写真もステキですね~沖縄は紅葉とかなかったからな~

宮部みゆきも昔、読んでいましたね~

ちょっと軽めですが、新津きよみや宮本輝なども息抜きにオススメです。
ぜひ・・・
【2010/11/26 20:53】 URL | 中村ケンジ #- [ 編集]


こんばんは。

亀さんが小説を読まれるのは珍しい感じです。
『本格小説』ってタイトルがおもしろいですね。
知りませんでした。
ウィリアム・モーリスの表紙だなんておしゃれですね。
『永遠の0』は本屋さんで平積みされていたのを見ました。

宮部みゆきさんの本は少年が登場する事が多いですね。
この本は読みたいと思っていました。


いつもながらため息が出るような写真です。
秋を十分感じました。
【2010/11/27 20:35】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

中村ケンジさんへ
こんばんは。
>ちょっと軽めですが、新津きよみや宮本輝なども息抜きにオススメです。
宮本輝の作品はいくつか読んだことがありますが、新津きよみは知りませんでした。
サスペンスやホラーがお得意のようですね。
私は、その分野が超苦手なので、今後もご縁はなさそうです。
宮部みゆきは、どちらかというと少年・少女向きの怖くないのだけ読んでいます。
『永遠の0(ゼロ)』は、中村さんにオススメです。
【2010/11/28 20:27】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

ベンジャミン(keiko)さんへ
>亀さんが小説を読まれるのは珍しい感じです。
そうですね。詩集・歌集・句集や随筆、新書が多いですものね。
実は、小説も読んでいるのですが、なかなかアップしたい作品に、この頃出会えてなくて。
でも、この『本格小説』は、若い頃夢中で読んだ小説の読み方を思い出させる感じで、小説を読む面白さを久々に味わうこができました。
上手い作家だなと思ったので、同じ作家の『続明暗』も中古で買いました。
これは夏目漱石の『明暗』を読み直してからと、ちょっと積んであります。

>宮部みゆきさんの本は少年が登場する事が多いですね。
そうですね。この本も、どちらかというと十代の人向きかなと思いました。
とはいっても、登場人物の年齢が幅広いので、いろんな立場から読めますけれど。
この辺りの設定の仕方が、ベストセラーを作るコツなのかもしれません。

>秋を十分感じました。
ありがとうございます。
春と秋は、写真がいっぱい撮れて、アップが間に合わないです。
冬になっても、まだまだ秋の写真をアップする羽目になりそうです。
【2010/11/28 20:43】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kamenoashioto.blog52.fc2.com/tb.php/432-805be02e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



カテゴリー



最近の記事



最近のコメント



リンク

このブログをリンクに追加する



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カウンター



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード