心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く詩歌(歌集)-武田久雄歌集『寒の水』
 武田久雄歌集『寒の水』 (青磁社/2010年/2500円)

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寒い日が続きますが、お元気ですか。今回は、ちょうど今頃の時期のことをいう「寒」を名前に持つ歌集のご紹介です。1月5、6日あたりが「寒の入り」で、2月3、4日頃に「寒のあけ」。この時期の水は腐りにくく、健康にいいとされ、味噌や醤油・酒作りなどに利用されると聞きます。
表紙の写真が、歌集の題とよく合っていて、いいなと思いました。

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魅力ある写生歌がたくさん収められた歌集です。歌に詠まれている琵琶湖は、私もよく訪れるところなので、情景が浮かびやすく、湖北の静かな雰囲気が伝わってきました。作者が暮らしておられる湖北を詠まれた写生歌に、とても心惹かれたので、それらを中心に以下に二十首ほどあげたいと思います。
本当は、琵琶湖の写真を添えたかったのですが、手元に冬の湖の写真がありませんでしたので、かわりに1月に撮った万博の写真を一緒にアップします。この季節の情景を、歌(他の季節も含む)と写真でお楽しみ下さい。
五七五七七のリズムがとてもいい歌ばかりですので、声に出して読まれることをお勧めします。
読み仮名は、こちらで付けたものがほとんどですが、歌に合わせ歴史的仮名遣いにしています。

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          川越えて鼬(いたち)はふかき雪のなか潜ると見えしに頸(くび)もたげゐぬ

          ふる里の小川に返す月光に残り螢が石垣を這(は)ふ

          山裾の湖(うみ)べはかすかな風の吹き葦むらあたりよしきりの鳴く

          灰いろの雲かげふかき沼のみづ湖北は長き冬に入りゆく

          原発の被ばく圏内北の湖雪の降りつつ夜を風が鳴る

          カハセミの止まる枯葦(かれあし)たわみつつ小雨ふる沼暮れふかみゆく

          ダム故に「鷲見(わしみ)」よりここに移り来し老い人畑を黙し耕す

          重なりて冬雲垂れくる余呉の湖(よごのうみ)野小屋に雀の群れて入りゆく

          あと十年われは生きたし湖(うみ)に浮く船打つ波の音限りなく

          ぽつかりと浮き来し鳰鳥(にほどり)暫(しばら)くは動かざりけり秋の日浴びつつ

          IMG_039720111.jpg

          朝やけの隅(くま)なく湖北を照らす野に野菊はひくく川辺に咲けり

          原発に隣り合はすもみづうみのこの夕凪を讃へ吾は生く

          池のべにわが佇(た)つ影を乱しつつ浅瀬の真鴨餌を漁るのみ

          穏やかな水面に映ゆる冬雲の影の重たし鴨の鳴く池

          山越えて県境ちかき祖母の里木を切る音の真上に聞こゆ

          泳ぐ鳥立つ鳥のゐてこの荒るる北湖を終(つひ)とする鳥もゐるべし

          このあたり父の田んぼのありしとこ青鷺(あおさぎ)一羽日溜りに立つ

          風荒き寒の戻りのみづうみに北帰のばさむ鴨のゐるべし

          この村の軒端はいつも芥(ちり)一つ落ちてをらざりわれのふるさと

          刈られたる切藁(きりわら)の上ひかり立ちもそろもそろに蝗(いなご)の動く

          IMG_040320111.jpg

 旅行詠の自然と違って、生活の場所での自然は、すでに作者の一部となっているため、読み手にも深い思いが届きます。自分の暮らす土地に足をつけて生きることは、ある種の覚悟もいりますが、そこから受ける豊かさをとても羨ましく感じました。目に見える場面だけでなく、その場の気温や風の流れなど体感できるものも、これらの歌から受け止めることができました。素晴らしい歌集をありがとうございました。

          IMG_042020111.jpg

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

2807毎日、寒いですね。 今日の短歌で、

このあたり父の田んぼのありしとこ・・・・

田舎のあの風景を思い出し,懐かしく 又,短歌が身近に感じられ

いいですね。

写真の構図とさざんかのきれいな色、お見事、素敵です。

いつも楽しみに 見てます。 癒されます。
【2011/01/14 16:57】 URL | k.s #- [ 編集]

寒中お見舞い申し上げます
大空の亀様

ご無沙汰しております。一年って早いですね。
昨年のお正月明けくらいにこちらにお邪魔させて頂いてあっという間の一年でした。

ほんとうにいつも選りすぐりの短歌・俳句をご紹介くださって、有難いなぁとつくづく
思います。存じ上げない方のが多くてそれがむしろとっても新鮮でそして考えさせら
れますし楽しいですね。

  。原発の被ばく圏内北の湖雪の降りつつ夜を風が鳴る
  。ダム故に「鷲見」よりここに移り越し老い人畑を黙して耕す
  。原発に隣り合はすもみづうみのこの夕凪を讃へ吾は生く
  。山越えて県境ちかき祖母の里木を切る音の真上に木こゆ
 
現実をしっかりと見据えていらして、作者に対する揺るぎない信頼感をもちます・・・。
♪旅行詠の自然と違って・・・・・と亀様のコメントがまた一層こころに響いてきます。
お写真がまた素晴らしい!!

読ませて頂き有難うございました。慌しくてなかなかパソコンも開けませんが、ときどき
またお邪魔させてくださいね。亀様もご無理のない範囲でこちらのブログを続けてください。

今日は初釜でとても良い時間を過ごして来ました。和敬静寂のお茶の精神漂う中での
一服二服のお茶の味わい。様々なお道具の拝見や皆さんとの弾む会話。お着物姿の
観賞(笑)も楽しくて、日本はいいなぁ、としみじみそんなこんなを感じました。
因みに掛け軸は "瑞雲”でした。
【2011/01/14 17:19】 URL | 初夏 #kQTPVHsk [ 編集]

大空の亀
こんにちは。嬉しいコメントをありがとう。

今日は用があって、高槻市に行ったのですが、駅前で「天然たいやき」というのぼりが目立ち、思わず買って帰りました。v-365
「天然」の価値は「ほかほかぱりぱり」、家まで持ち帰ったのでなくなってしまいましたが…。

自然の豊かな田舎で育ったせいでしょうね、こういう歌に心惹かれます。
青鷺、白鷺…、神社には五位鷺もいました。懐かしいね。

「山越えて県境ちかき祖母の里木を切る音の真上に聞こゆ」
私は、この歌がなんでだかわかんないんだけど、異様に好きなの。
【2011/01/14 17:27】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

初夏さんへ
お久しぶりです。
最初のコメントに返事をして、拙ブログに戻ってきたら、懐かしいお名前が!
たくさん書いて下さって、ありがとうございます。
この歌の作者は、神職についておられる方なので、自然への思いはさらに強いものがあるかもしれません。
琵琶湖の北は、原発をもつ若狭湾も近いので、初夏さんがあげてくださったような歌は、本当に切実なものだと思います。

旅行詠は、本人が感動している分、ただの報告に終わったり、絵はがきのようになってしまうので、やはりよく知っている地域を詠むのが一番感動を呼びますね。
自分の日々の暮らしから拾い上げることが、歌には合っている気がします。

>因みに掛け軸は "瑞雲”でした。
新年にふさわしいですね。絵だと色がきれいだし、書だとバランスがいい字ですね。
我が家は、初釜とはいきませんが、お正月には自己流でたてたお抹茶と和菓子を頂くのが、恒例の楽しみです。
今日は、お抹茶入りの食パンを、パン焼き器で作りました。美味でした。
【2011/01/14 17:45】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


スゴイ…武田さんまで知っていらっしゃるんですね~交友関係幅広いんでビックリです。
先月、滋賀歌会で批評会&忘年会でご一緒しました。
私と違ってとても腰の低い控え目な方です。
私の書いた批評会記が2月号あたりに掲載されるので読んでもらえると幸いです。
【2011/01/14 21:53】 URL | 中村ケンジ #- [ 編集]


寒中にふさわしいお写真ばかりですね。

年賀状を出せなかった方々に寒中見舞いを書いて投函しました。

猛暑だった冬は寒さが厳しいといわれていますがかなり冷え込んでいますね。
日本海側の雪は多いようで大変でしょう。


京都で生まれましたが琵琶湖の記憶にありません。
むかし、家にあった古いアルバムに若い父が琵琶湖に泳ぎに行った写真が数枚ありました。
その中にボートの上で立ち姿で櫂(櫓?)をこぐ写真があり、そこに母が書いたらしい「琵琶湖一周せんとす」とありました。

琵琶湖という字に出会うとその写真を思い出します。
【2011/01/14 22:30】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

中村さんへ
武田さんを直接存じ上げている訳ではないのですが、私の歌集のお返しに、こんなステキな歌集を頂きました。
静かで落ち着いた叙景歌が、ちょうど今の季節にぴったりなので、ブログにアップさせてもらいました。いい歌ですね。
中村さんの書いている「腰の低い控え目な方」という表現を読んで、なるほど歌の雰囲気と重なるなと、嬉しくなりました。
【2011/01/15 10:07】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

ベンジャミン(keiko)さんへ
>寒中にふさわしいお写真ばかりですね。
そうなんです。苦手なはずの寒さなのに、写真に撮ると愛しくなるから不思議です。
四季のある国に生きる幸せを感じます。

>年賀状を出せなかった方々に寒中見舞いを書いて投函しました。
そうかあ、そういう時期ですよねえ。ベンジャミンさんは、フットワークが軽いわ。

琵琶湖には、ご両親の青春の足跡があるんですね。
昨年亡くなられた歌人の河野裕子さんに、次のような歌があります。
たつぷりと真水を抱きてしづもれる 昏(くら) き器を近江と 言へり
琵琶湖の静かな様子と、それを抱える近江、滋賀の歴史も思わせる名歌です。

心を静めたいとき、琵琶湖の水辺に立つと、水のきらめきに、心が安らいでいくのがわかります。海も川も好きだけど、琵琶湖も大好き!
琵琶湖の周辺には、名刹も多いし、自然も魅力的ですので、ベンジャミンさん、今度関西に旅行される時は、ぜひ滋賀県まで足を伸ばしてみて下さい。
私もまだ行き尽くせてはないのですが、行くところすべて好きになるいいところです。
【2011/01/15 10:21】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


万博公園にもこんなにたくさんのアカマツ(写真の色から)があるのですね。
松は本来、条件が悪くてほかの樹種が生えないようなところに育つ習性があります。
暖かいところには常緑樹がありますが、ぼくのところにはなく松や杉の葉の緑はこの季節にありがたい存在です。
【2011/01/19 21:06】 URL | こもれび #hGt.gl.I [ 編集]

こもれびさんへ
こんばんは。
>万博公園にもこんなにたくさんのアカマツ(写真の色から)があるのですね。
そうですねえ、写真に撮ると、たくさんあるように見えますね。
これに、あと少し足すぐらいです…。
でも、EXPO70跡地は、とても自然豊かないい公園になりました。
今、再開発中の、大阪梅田操車場跡地も、緑豊かな公園になることを願っています。
大寒ですね。風邪などひかれませんよう、お気をつけ下さい。
【2011/01/20 18:08】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



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