心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-自選自解の句集3冊
 自選自解の句集を三冊、ご紹介します。

 narahyakkuhosomi.jpg  syahaiteinozisakuannai.jpg  itamikimikosyuzikaihyakku.jpg     amagasakisiminkazoku.jpg


細見綾子『奈良百句』 (1984年/2000円/用美社)

大学時代の同級生(国語国文学科)が、「いいよ」と勧めてくれたので、中古で購入。古い本なので手に入るか心配でしたが、「日本の古本屋」のサイトで1000円(送料別)で買えました。ちなみに、アマゾンでは6225円もしていました…。逆の場合もありますが、マイナーな本を買うときは、お勧めのサイトです。
見開きで右側に一句、左側にその句にちなんだエッセイという形式で、のんびり読むのにふさわしい本でした。中から一句、今の季節にふさわしいものを引用します。

紅梅を面(おも)映えて見し石の上(いそのかみ)            (紅梅 昭和四十八年)

神殿に登る石階の両側に対をなし、一つは淡紅色のもの、もひとつは紅梅、色が断然濃い。世にいう紅梅色とはこれを指すのであろう。あでやかでありながらつつしみ深い。 
面映ゆるごとくその紅梅を見た。春雪の霏々として降る日、神さぶる石上神宮らしい紅梅であった。
富岡鉄斎が若い日の一時期、石上神宮の神官をつとめていたそうだが、鉄斎は紅梅をいかに眺めたか、偲ばれる。
                                                     

私が大学生の頃に詠まれた句かと思うと、なんだかとても身近に感じました。


 IMG_0653201102.jpg


伊丹三樹彦『写俳亭の自作案内』 (1993年/2200円/牧羊社)

拙ブログで「写俳集」を紹介したお礼にと頂きました。「自解100句選」に「写俳文60篇」を加えた、とても興味深い本です。伊丹氏と私のご縁ができるきっかけになった一句をご紹介します。

そぞろ歩(ほ)は善相(ぜんそう)ばかり 梅の花       昭和55年作 『夢見沙羅』

 播州網干には新舞子海岸があり、干潟と汐干狩で有名だった。その背後の綾部山に梅林が造成されるに及んで、いまや一目二万本といわれる綾部山梅林が新名所として喧伝されている。山は国有林だったのを、地元が払い下げを受け、梅園組合を作って、今日の姿にまで育て上げたのだ。
 偶々、梅林に詩歌碑を建てたいという話が、組合と、僕は指導に赴いている「青玄」姫路教室有志との間にまとまり、その要請で一気に作った十数句の中から選んだもの。いま一句、

 杖つくもよし どこまでも梅薫る

の句と共に大きな御影石に刻まれ、山腹の甘酒茶屋のほとりに据えられた。遠くに海景が展け、家島諸島の姿も浮かぶ。そこまでは、ずうっと緩やかな上り道で、老人用には貸杖もある。桜の花見と違って、梅見の客は、心から花を愛する人ばかり。自ら、おだやかないい顔付だ。〈善相〉に、僕の人間肯定と彼岸憧憬がある。                   


この本を頂いたのは、昨年の5月から句会に伺うようになって、何ヶ月か経った頃でした。私が、この句を引用して「空」誌に文章を書いたのは、一昨年末で、掲載されたのは2月。(拙ブログ2010年3月の季節の詩歌15~梅一輪~参照)私が、この句を知ったのは「読本・俳句歳時記」でしたので、「歩(ほ)」が「歩み」となっていました。ここに紹介した文は、まだ読んでなかったのですが、私の脳裏にはくっきりと綾部山梅林の情景が浮かび、そのことを書いたのでした。それを伊丹氏が喜んで下さり、行き来が始まりました。今、改めて『自作案内』を読み、重なる想いに、自分でも驚いています。


 IMG_0659201102.jpg
      

自解100句選『伊丹公子集』 (1987年/1100円/牧羊社)

伊丹公子さんは、村野四郎氏に師事していた詩人でもあるので、ちょっと独特の抒情性高い句を詠まれます。この本を読んでいると、尼崎市が市制七十周年を機に、公害都市から文化都市へのイメージチェンジをはかる活動の一環として、尼崎市民の歌の作詞を依頼されたとありました。「ああ 尼崎市民家族」という歌で、作曲キダ・タロー氏、歌デューク・エイセスで発表会があり、レコードにもなったそうです。聞きたいなあ。

*参考資料-ネットで発見しました!
「尼崎の歌ザ・ベストテン」というHPに第4位で載っていました。引用します。
『ああ尼崎市民家族』1986年発表のEP盤は非売品。今は尼崎市バスの車内放送で少ししか聞けない幻の1曲に。市制70周年(昭和61年)を記念した市民の歌は「当時はイベントのたびに歌わされました」と思い出のコメントも。浪花のモーツァルトことキダタローが作曲。市バスのメロディでしか知らない若者にも聞かせたい名曲。メッセージ性も強く、市民の歌としての復活がのぞまれる。*とありました。(最初の写真の右端がEP盤ジャケット)


 IMG_0650201102.jpg

永遠は掌(て)に乗るでしょうか 花梨(かりん)の庭      昭和55年作 『ドリアンの棘』

 この句も芹沢光治良先生を訪うた日に作った。永遠などという抽象名詞を使ってあるのは、それがその日の会話の極く日常的な言葉だったからである。先生の話は教条的でなく、率直で、穏やかである。そして永遠という言葉が、他所行きふうでなく使われる雰囲気をもっている。会話といっても話をされるのは多く先生のほうで、私はおききし教えていただく側である。私の話は手紙のほうが書きやすいのでそうしている。永遠についても、さらっと普通に話されたので重ねておたずねした。人間の現実の生命が終わったときも、すっかり無になるのではなく、魂が宇宙のなかにエーテルのように存在するのだというような話題であったと思う。人間の死後のことなど何ひとつ誰も知らないが、どのように思うかも各人の自由であろう。「生きているあいだ、こんなにいろいろのことを考えた人間が、死んだからといって全く無になってしまうとは思えないでしょう」と先生はおっしゃった。私もそう思った。                   


この文章を読んで、豊かな精神世界に生きる師を持つことのできた伊丹公子さんの幸福を思いました。特に最後の言葉は、真摯に生きる姿勢に勇気を与えてくれる、宝物のような言葉だと感じました。句は伊丹三樹彦氏、詩は村野四郎氏と伊藤信吉氏、文章は芹沢光治良氏と、四人の素晴らしい師を得、積極的に学んで来られたことが、伊丹公子さんの心と言葉を磨き、それがまた、次の世代につながっていく、そんなことを思います。


 IMG_0646201102.jpg

 伊丹三樹彦・公子ご夫妻の引用した句は、どちらも偶然、昭和55年作でしたが、実は、この時、同じ駅を挟んで、ご夫妻は南側に、新婚の私たちは北側に住んでいたのでした。どこかでお会いしていたかもしれません。

今回は、自選自解の句集を三冊ご紹介しました。歳時記などで俳句だけを読み、自分であれこれ想像し味わうのも楽しいですが、このように、句の背景を作者自身が書かれた句集も、いろんなことが分かって読みを深めてくれるので、特に初心者には興味を持ちやすいのではないかと思います。

*梅の写真はすべて、昨日(2月19日)万博公園で撮ったものです。枝垂れ梅以外は、見頃になってきました。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
堪能
好きなことをする時間はいっぱいあるのにゆっくり梅を見ていなかった気がします。
午前中に行ったスーパーの近くに梅林があり白梅が満開でした。
そばに行ってみましたが風があるからか私の方には香って来ませんでした。

亀さんのお写真で今年の梅見は終わりかな。
たくさん、有難うございました。
【2011/02/20 12:52】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミン(keiko)さんへ
こんにちは。
まだ冬だわと、のんびりしていたらいつの間にか、すっかり春が来ていました。
ベンジャミンさん、梅はまだこれからもしばらくは楽しめそうですよ。
今日も住宅街をウォーキングしていたら、白梅に出会えました。

昨日、梅林で売っていた甘酒を飲まなかったのが心残りだったので、今日、酒粕を買ってきて作りました。
美味しいものを食べると、元気が出ますね。
【2011/02/20 16:29】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


尼崎の歌…知らなかったです。
今回も面白そうな本がいっぱいですね。

それにしても吹田は自然が多くてなんだか住みやすそうな街というイメージでうらやましいです。
梅…美しいです。

※この3~4日で塔新人賞の30首をムリして一気に仕上げて出したので今、風邪気味ですが、ゆっくり身体休めてまた明日からがんばります。
【2011/02/20 16:31】 URL | 中村ケンジ #- [ 編集]

中村ケンジさんへ
尼崎の歌、また復活するといいのにね。
古い本が多いですが、今時の本と違って、言葉がいいですねえ。

万博公園や家の近くの公園など、自然が多いので気持ちいいです。
中村さんのところも、雄大な琵琶湖が近いのではありませんか?
滋賀県は、なお一層、自然が豊かな気がしますが…。

30首、頑張ったんですね。
風邪しっかり治して、また明日から頑張って下さい。
【2011/02/20 22:09】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


おはようございます。

梅・・・きれいですねe-266
太陽の塔はどんな風に眺めているのかしらん?

>生きているあいだ、こんなにいろいろのことを考えた人間が、死んだからといって全く無になってしまうとは思えないでしょう

うん。形をかえて、どこかに存在してくれているんだ・・・って私も思います。
心の中に、急に存在がよみがえってくる瞬間があるんですけれど、そんな時はすぐそばで見守ってくれているように感じます。


梅とかコスモスとか、群れて咲く花が大好きなんです。
一輪でも可憐で美しい花ですけれど、群れてなお美しい。
それぞれに違う色だけれど、たくさんの花で別の美しさも見せてくれて。
週末は下の子がマラソンに参加するので、自然文化園で楽しんできます。
お写真を拝見していて、なんだか、待ち遠しくなっちゃた。
 
 
【2011/02/22 08:07】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimicoさんへ
こんばんは。
>週末は下の子がマラソンに参加するので、自然文化園で楽しんできます。
ちょうど梅は今年一番の見頃になっていると思います。マラソンも頑張ってね。

今日は、とってもいい天気だったので、一時間休暇をとって、万博の中を通って帰宅しました。
平日だというのに、人がけっこういて、皆さん、梅の花を嬉しそうに眺めていました。
梅の香りも気持ちよくて、先週末より更にいい具合に咲いていましたよ。
木蓮かなあ、つぼみがふくらんできていました。水仙もきれいでしたよ。
近くにいい公園があって、私たち、幸せですね。

>生きているあいだ、こんなにいろいろのことを考えた人間が、死んだからといって全く無になってしまうとは思えないでしょう
なんかかっこいいですよね、この言葉。それに、生きる勇気を与えてくれる気がします。
言葉って、言葉にしない強さもあるけど、言葉にする強さもありますね。
【2011/02/22 18:13】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

芹沢光冶良
おはようございます。

「自選自解」・・・作者ご自身が解説してくだってて歌を幾重にも楽しむことが出来て
幸せです。
また亀様の解説もいつもながら見事でため息をついています。

”芹沢光冶良”様、日本ペンクラブの会長さんなどもされましたね。伊丹公子様の師
であられたのですね。

『人間の運命』は学生時代に一日一冊を読んでいました。本当に懐かしいです。
今も変わらずによりよく生きていきたい!そう思い続けている土台に、若き日にこの本
との出合いがあったことは大きいと思っています。
そして、伊丹公子様の 「永遠は掌に乗るでしょうか 花梨の庭」 この年齢になって
なおさらに”わかる”気がします。

思いがけず芹沢光冶良様のお名前に反応いたしました。
若い時期に尊敬できる人物や優れた本と出会うことは後々に大きな意味をもちますね。

【2011/02/25 09:41】 URL | 初夏 #hFEj5StE [ 編集]

初夏さんへ
こんばんは。
とても暖かい一日で、昼間は窓を開けていても平気でした。春ですね。

>『人間の運命』は学生時代に一日一冊を読んでいました。
すごいですねえ。ちょうど出版された頃だったのでしょうか。
調べたら、芹沢光冶良氏の自伝的大作とありました。
残念ながら、私は読んだことがなかったので、初夏さんのコメントを見て、早速図書館に予約を入れました。(7巻もあるので、とりあえず1巻だけ…)

>若い時期に尊敬できる人物や優れた本と出会うことは後々に大きな意味をもちますね。
学生時代、私も相当本を読んだはずのなのに、初夏さんと芹沢光冶良氏の著作のような出会いはありませんでした。
少しだけ、あの本!といえる本があるにはありますが、ほぼ皆無と言っていいほどです。
若くて生意気な私は、学ぶ姿勢に欠け、素直に受け入れる用意がなかったのだと思います。

この年になってやっと、素直に学ぶ楽しさがわかってきたのではないかしら…。
もう一度きちんと体系立てて学び直したいですけれど、受け身的な講義形式だと、自分の性格を考えるとやはり無理でしょうね。
遠回りでも自分で模索していくしかないかなと感じています。やっかいな性格です。
【2011/02/25 19:18】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kamenoashioto.blog52.fc2.com/tb.php/450-15d6c904
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

尼崎市民「助けて!尼崎のイメージが悪くなったの!」

1 :番組の途中ですがアフィサイトへの転載は禁止です:2012/12/24(月) 09:13:50.06 ID:ohtJmSP/0● ?2BP(5000)尼崎の“悲劇”…主犯格自殺の連続変死事件で「風評被害」の訴え「私は兵庫県尼崎市で 【2ch】ニュース速報嫌儲版【2012/12/24 12:00】

プロフィール

大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



カテゴリー



最近の記事



最近のコメント



リンク

このブログをリンクに追加する



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カウンター



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



ブログ内検索



RSSフィード