心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く詩歌(句集)-伊丹公子さんの句集・詩集
伊丹公子さんの句集と詩集をご紹介します。

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伊丹公子カナダ句集『ARGILLITE アーギライト』

 argillite.jpg  (春陽堂/1994年/2500円)

第九句集で、書名の『アーギライト』はカナダで採れる石の名前より。
1990年~93年、毎夏訪れたカナダでの俳句より100句選び編んだもの。
翻訳は三女のLee凪子さん、カナダの写真16枚は伊丹三樹彦氏による。

バンクーバー
在処(ありど)秘密の石磨く夏 インディアン
Polishing the stones / cut from a cliff / Secret place among Indians
句集名にちなんだ一句。ハイダインディアンは、その秘密の場所にボートを何マイルも漕ぎ辿りつき、絶壁をよじ登って石を採り、その灰色の石が黒くなるまで磨きこみ、そこに先祖伝来の彫刻をほどこすそうです。そういう異文化への驚きと、文化を伝えていくことへの共感が表れた句です。

思想もつかに キャピラノ川を のぼる鮭
As if possessing / a mind of its own / A salmon runs up / the Capilano River
産卵のため命をかけ生まれた川に戻ってくる鮭の行動は、ひたむきで沈黙である故、実に哲学的な姿に見えます。祖先を残すという執念は本能なのですが、思想を持つように思えるのは、懸命な鮭に思いを重ねる作者がいるからです。

ビクトリア
幽霊が出る城 尖塔への闇の濃淡
A haunted castle / Shades of darkness / up to the tower
使われている言葉がどれも、詩的・幻想的な伊丹公子さんのイメージに重なります。現実の情景に、悲しい物語が重なる感じで、想像をかきたてる魅力があります。

カナディアンロッキーの町
暑休家族の幸福同形 カヌー反る
The shape of happiness / is same for every family / rowing a canoe / Summer holiday
夏休みを過ごしに美しいカナディアンロッキーの町に、さまざまな土地からやってきた家族。みな同じように幸せな顔をして、湖に舟を浮かばせ涼しい夏を楽しんでいる。漢字の使い方が絶妙で面白いです。

      IMG_2048201104.jpg

伊丹公子詩集『黒い聖母』

 kuroiseibo.jpg  (沖積舎/2004年/3000円)

1997年~2003年の作詩の中から18篇を選び収めた、第6詩集。
翻訳はLee凪子さん、キャサリン山本さん、写真24枚は伊丹三樹彦氏による。

「ベルギーの聖母子」

死せるキリストを抱いたマリアは / 聖堂の薄闇より昏かった
膝の上のキリストへ / おとしたまぶたは 
ふたたびあげることはないと思われた
幼いキリストを抱いた日の / あの どんな光より眩ゆい瞳を
ふたたび持つことはないと思われた
旅する聖堂で出会った / 死せるキリストを抱いたマリアの前で
私は絶望に似た怖れを抱いた

〈2連目省略〉

聖堂の外へ出ると / ベルギーの春だった
まるで若い日の聖母子のような / 母親と息子が
笑い声をひびかせて / 運河の岸へ駈けていった 
 (1998年3月)

この詩を読んで、あらゆる母親たちが持つ、深くて強い母性愛のことを思った。生の喜び、死の絶望・・・、作者の、マリアの、母親たちの胸中に起こるさまざまな思いが、脳裏に浮かぶリアルな映像とともに感じられた。

      IMG_2081201105.jpg

伊丹公子句集『私の手紙』

 watasinotegami.jpg  (沖積舎/2007年/2800円)

第十三句集で、2002年~2007年の俳句より228句を選び収めたもの。
うち16句を写俳とし、写真は伊丹三樹彦氏、アレン・リー・チェイブーン氏、リー・チャオヤン氏による。
写俳ページの英訳は、リー凪子さんとリー・チャオヤン氏による。

2002年
幼年が 濃密にある 茹卵

ちらちらと花びら 鯛焼の尾が焦げる

2003年
潮の匂いの脂粉 雫して 村芝居

紅貝 月貝 売って 風棲む孤老の店

2004年
『月に吠える』が書かれた部屋だ 薄い酸素

2005年
我慢の優しさ持つ 御嶽の村の馬

2006年
齢たずねあう 梅林のこのあかるさに

牡丹三日咲けば 三日の空の彩

巻いて巻いて 巻貝の夢てっぺんから


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 詩心があって、どの句も大好き!和風・洋風、幼年・老年、日本・外国、etc.どこへだって時空を超えて自由に飛んでいく言葉と心に、わくわくしながら読みました。

テーマ:俳句 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

ロッキー山脈、ベルギーを想い出しながら読ませていただきました。

どちらも私が行った外国の中では再び訪れたいと思う地です。
まるで違う風景ですが感動しました。
ロッキー山脈を8時間バスで移動しましたが飽きずに車窓を見続けていました。
ベルギーは新緑が美しい頃だったのでどこもかしこも絵になりました。
中世の面影がそのまま残っていました。
大聖堂ではたくさんの宗教画を見ました。



ごめんなさい、俳句も詩にも関係ないコメントで。
【2011/06/14 18:20】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミン(keiko)さんへ
>ロッキー山脈、ベルギーを想い出しながら読ませていただきました。
いいですねえ。私はどちらも行ったことがないので、想像だけで読んだのですが、
現地を知っていると、街の雰囲気や自然の風景がリアルに浮かびますよね。私もいつか!
退職したら、気候のいいときや旅費の安いときに行きたいです。それまで元気でいないと…。

>ごめんなさい、俳句も詩にも関係ないコメントで。
いいえ、全然。私の方こそ、俳句や短歌の世界にどっぷりつかって、皆さんにお付き合いさせて申し訳です。
頂いてる本がいっぱいあるもので、紹介しきれなくてアップアップしています。
お花の写真だけでも見てもらえたら、嬉しいです。無理のない程度にお付き合い下さい。
【2011/06/14 22:44】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年6カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
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