心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-高木仁三郎氏の本
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「空」誌にいつも素晴らしいエッセイを載せておられる川上義則氏(元新聞記者)の今号(37号・2011年6月発行)の記事は、いつもにもまして心に訴えかけるものがありました。全文読んでいただきたいのですが、そういうわけにもいかないので、以下に少し引用します。ぜひお読みください。省略した関係で、( )の形で若干私の付け加えがあります。

・・・大惨事となった1979年の米スリーマイル島事故や1986年、旧ソ連のチェルノブイリ事故。国内でもこの二十年間、茨城県東海村のJCO社の臨海事故や福井県敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れをはじめとする重大事故や、事故隠し、データの改ざんが繰り返された。安全神話はとっくに崩壊していたはずではなかったか。
ましてこの国は広島・長崎の記憶をもつ。原発への不安が国民規模の反原発、脱原発の動きに高まりにくかったのはなぜか。・・・繁栄のなかで骨の髄までしみついた私たちの安楽志向が、彼らの強弁(=絶対安全)に耳をふさがせてきたことも否めない事実だろう。

・・・(途中、水俣病と取り組んできた原田正純医師の紹介がありますが、ここでは省略します。原田氏も正義感と実行力のある素晴らしい方です。ぜひ、著書の一読を!)・・・
今回の原発事故で、水俣病と同じ構造が拡大再生産されている。強度の毒物による健康被害と環境汚染。地域経済の崩壊。住民の不安に聞く耳もたぬ隠ぺい体質。そして国策的経営の背後に政府が控えていることだ。・・・安全性の担保を置きざりにしたまま、ただ前のめりの現代科学技術の多くに、人々は生活の利便を超えて、不安を感じている。そのシンボルが原子力なのだ。

こうした時期にこそ、その発言を聞きたかった人物がいる。原子力資料情報室や高木学校を設立、2000年、62歳、志なかばで逝った高木仁三郎(たかぎじんざぶろう)さんだ。東大で核化学を専攻、原子力産業に就職したが、暗に原発推進の旗振り役をさせられることに疑問をもち、大学で教えたあと、反原発に転じ、運動をリードした。
がん死の二か月前、病床で口述筆記を終えた最後の著書『原発事故はなぜくりかえすのか』で、「・・・根本の問題をおきざりにした日本の原子力行政は、もっとひどいところにいくのではないか。最悪の事故のようなものが避けられないかもしれない。とんでもない事態が起こっているようで、かけ値なしの恐怖感が私にはあるのです」と語っている。
(以下、残念ながら省略いたします)

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 この文章を読んで、早速、高木仁三郎氏の本を3冊注文し読みました。何10年も前から、現在の状況をすべて予測され、一生懸命訴えておられたのに、思考を停止して享楽的に生きてきた私たちに、それをきちんと受けとめる力がなかったことが悔やまれます。どうか、より多くの方に、この本を読んでいただいて、未来にこれ以上負の遺産を残さぬよう、皆で賢い国民になりましょう!と訴えたいです。

 高木仁三郎著『原子力神話からの解放-日本を滅ぼす九つの呪縛』 
(講談社+α文庫・762円・2000年に刊行された書物に編注をつけ2011年再刊)

 科学には疎い私にも大変読みやすく、次々とあげられる事実に、夢中で読み進みました。高木氏とは反対の立場である原発推進側の原子力産業会議から基調報告の依頼を受けるというほどの著者による、非常に冷静な文章で、大変信頼できる内容の本です。以下に引用。

これまでに私は、九つの神話(①「原子力は無限のエネルギー源」という神話 ②「原子力は石油危機を克服する」という神話 ③「原子力の平和利用」という神話 ④「原子力は安全」という神話 ⑤「原子力は安い電力を提供する」という神話 ⑥「原発は地域振興に寄与する」という神話 ⑦「原子力はクリーンなエネルギー」という神話 ⑧「核燃料はリサイクルできる」という神話 ⑨「日本の原子力技術は優秀」という神話)について述べてきました。

今、神話化されてきた諸々の事柄を全部きれいに白紙に戻し、根本に立ち戻って、一から点検し直す必要を痛感しています。この時期に出直すということをやらないと、原子力問題だけではなくて、国際的な競争とか、もっとはっきり言えばアメリカの支配力みたいなものに、いよいよ抗しえないような状況に日本は追い込まれていくのではないでしょうか。それは、今、原子力の分野で見えてきていることですけれども、原子力だけではなく、日本全体として当てはまるようなことではないかという気がします。

政府は原発の寿命を当初、四十年くらいと想定してきましたが、・・・あと二十年くらい延長できるんだと言い始めています。・・・これは非常に警戒しなくてはならない状況です。というのは、政府が言うところの高経年化、私が言うところの老朽化がますます進んでくるからです。運転年数が三十年以上の原発は相当老朽化していると思いますし、すでにデータで見たように、いろいろなトラブルが増えてきます。四十年以上になったら、もっとトラブルが増えてくるでしょう。そういうなかで動かし続けることが、思わぬトラブルを生んで大事故につながるだろうという問題があるから、たいへん怖いわけです。

これには、新しい原発がなかなか建てられない(地元の反対)状況のなかで、今ある原発の寿命を長びかせようとする政府のエネルギー政策と同時に、電力会社にしても、新しい原発を作ると非常に高くついて、電力自由化の時代に生き残れませんから、古い原発を長期間稼働させて、コストを下げたいという事情があります。・・・私たちにとって重要なのは、コストの問題ではなく、何よりも安全性の問題です。


この本1冊だけでも、原発の問題点がいかにたくさんあって、悠長に構えてはおられない状況かということがわかります。これ以上、事がひどくならないうちに、政府と電力会社に、ドイツと同様の英断をお願いしたいと、切に思います。

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  【眠気覚ましのパソコンをやっている私のそばで爆睡をしているミュー】

 高木仁三郎著『プルトニウムの恐怖』
(岩波新書173/1981年・2011年第25刷/760円)

表紙裏より~プルトニウムは、原子番号94の元素で、自然界には存在せず、人工的にのみ合成される。その一族プルトニウム239は半減期24100年の猛毒の放射性物質で、原子力発電の副産物としてできる。

あとがきより~科学技術の問題は、それを成立させる科学的原理や技術的可能性といった側面からだけではなく、すぐれて社会的な文脈の中でとらえられなくてはならなくなってきています。とくに、原子力やプルトニウムの問題は、すでに誰しもが認めるような、核兵器からエネルギーの問題、ひいては私たちのライフ・スタイルや文明の問題へとひろがっています。このような問題について、問題の背景となる科学技術的な基礎を正確に把握し、しかも社会的な光をはっきりと投射しながら考え続ける、というのがこの十数年間私の心がけてきたことでした。


具体的な数値がたくさんあげてあるので、数字の苦手な私にはちょっと読みづらかったのですが、このあとがきにあるように、高木氏の広い視野に立った考えで書かれたこの本に、深い感銘を受けました。原発だけでなく、私たちみんなの生き方が問われています。


 高木仁三郎著『原発事故はなぜくりかえすのか』
(岩波新書703/2000年・2011年第10刷/700円)

表紙裏より~日本中を震撼させたJCO臨海事故をはじめ、数々の原子力施設の事故から明らかになった国の政策や原子力産業の問題、技術者の姿勢を問い、これからの科学技術と人間のあり方を考える。生涯をかけて原発問題に取り組み、ガンで逝った市民科学者・高木仁三郎が闘病中に残した最後のメッセージ。

最後のメッセージより~残念ながら、原子力最後の日は見ることができず、私の方が先に逝かねばならなくなりましたが、せめて「プルトニウム最後の日」くらいは、目にしたかったです。でも、それは時間の問題でしょう。すでにあらゆる事実が、私たちの主張が正しかったことを示しています。なお、楽観できないのは、この末期症状の中で、巨大な事故や不正が原子力の世界を襲う危険でしょう。JCO臨海事故をはじめ事故からロシア原潜事故までのこの一年間を考えるとき、原子力時代の末期症状による大事故の危険と結局は放射性廃棄物がたれ流しになっていくのではないかということに対する危惧の念は、今、先に逝ってしまう人間の心を最も悩ますものです。


内部告発でやっと表に出る事故、数値の改ざん、人間の手が直接触れることなく機械と頭の中だけの計算…どの原発事故も、起こるべくして起きた事故だったのだと、この本を読んで確信しました。自分の仕事に本気で責任を持つ、機械の不備や故障より前に、そういう人間性こそが重要であろうと思いました。著者の最後の思いがこもった名著です。

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  【完璧な半円の虹だったのですが、大きすぎて…。長い時間、屋上で見上げていました。】

 右リンク先の「うみそら居士さんの『原発のない社会をめざして』」に、たくさんの情報が掲載されています。また、前にご紹介した城南信用金庫の吉原理事長や小出助教授の発言を映像で見ることもできます。オススメのサイトです。

テーマ:原発事故 - ジャンル:ニュース

この記事に対するコメント

あの日、7時少し前に息子2をお迎えに行く車の中で進行方向に虹を見つけ、近くのドラッグストアに駐車して、しばらく見惚れてしまいました。
亀さんも、きっと!e-491って思ってました。
雲から立ち上がるようにして、大きくきれいな半円を楽しませてくれましたよねe-266
小学校の図書室に、予算の少ない学校なのですが高価な写真集を毎年購入して、面で並べています。虹の写真集はひそかに人気で、この夏休みの貸し出しのときにも「お母さんがゆっくり見たいって言ってたから」と4年生の男の子が借りていってくれました。
虹・雲・宇宙・海・・・の順に人気です。
桜とシャボン玉の良いのを探しているのですが・・・

原発、小出先生の本を読み返しています。頭の中を整理するために。
まだまだ未来ある子どもたちを、どう守っていけるのかも、考えています。
うちの子たちだけじゃなくって、こどもたちみんなを被曝させたくありません。
ここで紹介していただいた本も、次に読みます。
もっともっと、正しい知識をつけなきゃいけないと思っています。
10億もの寄付が匿名でできるくらいに、お金を生むんですよね?役員さんたちだって、すごい高給取りだし。
NOの声がたくさん聞こえているように思うのに、でも、原発廃止にすすんでいかないのは・・・?
気が遠くなるくらいの未来まで、負の遺産を残す原子力発電は、やっぱりNOとしかいえません。
 
【2011/07/22 11:37】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimicoさんへ
kimicoさんも、虹を見ることができたんですね、よかった!
私はちょうど家に帰っていたので、カメラを持って屋上へ。
写真好きの上の階のご主人も来られていて、合計4人で眺めました。
きれいな虹でしたねえ。見た方がたくさん居ると、嬉しいです。

虹の写真集、前に kimico さんが勧めて下さったので、職場と自宅に買いました。
いつもどこでも見られるものじゃないから、虹は心に残るんですよね。
前に、ハワイがきれいって書かれてましたね、いつか見に行きたいです。

>うちの子たちだけじゃなくって、こどもたちみんなを被曝させたくありません。
小さい子ほど影響が大きいですからねえ。
ほんと無責任な政治家や経営者などなどに、腹が立ちます。
民主党は、「原発を推進してこのような事態を作ったのは自民党だ。国民に謝罪しろ。」って、もっと言ったらいいのに。
ものを考えてない人は、またぞろ「民主党は頼りなかったから自民党に」と投票し、うかうかしていると、経団連圧力の下、原発が再開しますよ、怖いなあ…。
「省エネルギー・脱原発・自然エネルギー推進」のための政党が出てくれないかしら。

>NOの声がたくさん聞こえているように思うのに、でも、原発廃止にすすんでいかないのは・・・?
農業・漁業・畜産業は大打撃だけれど、原発で儲けている人がたくさんいるからでしょうね。
国の政策として進めてきたから、まずい事態が生じても国が保障してくれる、という究極の甘えが電力会社にはあるでしょうし、
国には、皆が引き受けたがらない原発を引き受けてくれたという負い目があるでしょうし。
でも、国の保障は、国民の税金から出ているわけで、皆が自分たちの税金の使い道にしっかりものを言うようにならないと駄目ですね。

私は、組織に属したり、政党単位で動いたりするのが好きでないので、とりあえず一人でもできることをと、「さよなら原発」一千万署名市民の会のHPより署名用紙を印刷し、友人・知人に声を掛けて細々とですが、署名を集めています。
こんな小さな積み重ねでも、動かないで後で後悔するよりはましかなと思って…。
自分の周りの人と話をして、原発NOを確認することから、一歩は始まると信じてます。
【2011/07/22 13:56】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

こんばんわ
高木仁三郎さんの本はわかりやすいですよね。
私もだいぶ読みましたよ。

どの本に書いてあったか忘れましたが…
「各原発が2000年~3000年に一度大事故を起こすと仮定すると、世界には500基ほどの原発があるので、結果的に…20~30年に一度くらい、どこかの原発から大量の放射能が撒き散らされる計算になる…」

こういう角度から「原発」を斬る視点が素晴らしかったのですが、残念ながら亡くなってしまいましたね。

拙ブログまでご紹介をいただきましてありがとうございます。
私も、組織や団体などで活動するのがあまり好きではないので、細々と1人でブログを書いて訴えているのですが、原発に疑問を持っている方のお役に少しでも立てるなら、日々の更新の励みとなります。

これからもよろしくお願いいたします。
それにしてもミューちゃん…かわいいですねえ。



【2011/07/29 22:21】 URL | うみそら居士 #- [ 編集]

うみそら居士さんへ
こんばんは。
大雨で、新潟・福島が大変なことになっていますね。
次々と起こる天災や異常気象…、まるで地球が怒っているようです。

>私もだいぶ読みましたよ。
いつものブログも充実しておられるのに、本もたくさん読まれているんですね。
私は、朝日新聞をとっているのですが、今日のオピニオンの孫氏の話、よかったです。
経団連も、もう少し広い視野に立って、目先の利益だけでなく、将来に向けた大きなビジョンを描いてほしいものです。

>結果的に…20~30年に一度くらい、どこかの原発から大量の放射能が撒き散らされる計算になる…
書いてありましたね。原発のゴミも10万年という単位(場合によってはそれ以上)で考えないといけない代物ですし、いいことなんか一つもありません。

>私も、組織や団体などで活動するのがあまり好きではないので、
政党色が前面に出ると敬遠する人も多いので、大切なことでも大きな力にならないことがあります。
ひとりひとりが自覚的に行動し、それが集まって大きな力になるといいですのにね。
住んでいるところで、八月中旬に、原発に関する講演と映画『六ヶ所村ラプソディ』の上映があるので、行ってみようと思っています。
黙っていたり、何もしなかったら、現状肯定ととられますから、ここは頑張らないと。
瀬戸内寂聴さんも、「未来のために、身を挺しても原発をなくす」と言われていましたね。

ミューは、ものすご~い甘えん坊です。
【2011/07/30 20:11】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



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