心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-2月に読んだ本から(その1)
 2月に読んだ本から(その1)
ご紹介したい本がたくさんあるので、2回に分けてアップします。

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 私の大好きな分野「俳句」「短歌」「古本」

八木 健著『俳句‐人生でいちばんいい句が詠める本』
(主婦と生活社/2008年/1365円)
以前にネット上の「俳句美術館」というのを、リンク先として紹介しましたが、そのサイトの運営をされている八木さんの本です。長い間NHK「BS俳句王国」の司会をされ、それがきっかけで俳句の世界に入られた著者が、初心者が明るく楽しく俳句に取り組めるよう、ポイントをおさえてわかりやすく書かれています。これから俳句をと考えておられる方の、まず一冊目としておススメです。そこに「一日中、五七五の会話で過ごせば、五年分の修業に相当する」という意味のことが書かれていました。試してみる価値大ですね。

前登志夫歌集『大空の干瀬』
(すべて旧字体/角川書店/平成21年)
平成20年4月に亡くなられた著者の、平成15年から18年の作品をまとめた第10歌集である。先日たまたま図書館で見つけ、書名をみてびっくり!平成22年に出した拙歌集『大空の亀』と書名が似ていた…。ずっと昔から私はこの書名を考えていたし、前年度に出た前氏の書名を知らなかったと言えばそれまでだが、今頃になってその不明を恥じている。
前氏の歌は、吉野山に住む自然人の風があり憧れてはいたが、正直私には分からない歌も多く、よい読者ではなかった。しかしこの歌集は、こんな私でも読め、かつ心を惹かれた歌がたくさんあった。旧字体なので、ここは手書きで写そうと頑張ってみた。各季節一首、ここに引いてみる。
ちちははの法要なさずゆく春の山鳥の声ほろほろ聴けり
雲の峯明るきまひる尾根歩む木の寂寥を数へてをりぬ
晩年をもつとも若く生くべしと秋草の野のつゆふみしむる
消えのこる雪ふみしむる人間のやさしき餓ゑを雪は刻めり


岡崎武志『古本道入門 買うたのしみ、売るよろこび』
中公新書ラクレ/2011年/820円
昨今の古本および古本屋(含むネット古書店)事情や、古本を愛する人たち・古本に関わっている人たちの喜びが伝わる、楽しい本だった。奥が深いけれど、浅くても安くて楽しめるのが、古本のいいところで、私もよく利用する。いつか、ここに紹介されているお店に足を運びたいなと思う。ライターの南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)さんの呼びかけで始まった「一箱古本市」というのも面白そう。古本を愛する人たちによる著書が、たくさん出ているのにも驚いた。
著者おすすめの「坂道にある本屋さん」の一つ、神戸の六甲駅から坂を登る途中にあるジャズがBGMの「口笛文庫」、奈良の「ならまち文庫 古書喫茶ちちろ」、最近長野市に増えているという若者による古書のブックカフェなど、元気だったら自分でもやってみたいほどだ。現実には、本屋さんはどこも厳しく、別のバイトをしながら古本屋を維持している人もいるとのことだが、開業セミナーには多くの人が訪れるそうで、私みたいに憧れる人がいっぱいいるんだとわかった。


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 飯島夏樹(世界的プロウィンドサーファー)の本三冊

2002年5月肝臓ガンと診断される。2004年6月余命宣告を受け、2005年2月28日、妻と4人の子を残し38歳で逝去。

『天国で君に逢えたら』
(新潮文庫/平成19年/400円/)
平成16年(2004年)の作品を文庫化したもの。著者の初めての作品で、ベストセラー。若くして末期がんに襲われた著者の体験が、さまざまな登場人物に分身となって表れている。私は先に、続編の『神様がくれた涙』を読んでいたので、そちらの方が作品の完成度が高く、好ましく思われた。ただ、どちらの小説にも共通しているのは、とても明るいということ。それは、著者の心に次のような思いがあるからだと感じた。
P187登場人物シュージの妻の手紙
死を前にした人間の心の中には、ふたつの感情しか湧き出して来ないと、彼(注*末期ガンの夫のこと)は言っていました。あらゆるものへの感謝、すべての人に対する共感だそうです。


文庫版巻末に、奥さんの文章「明けない夜はない」が載っていて、その最後にこんな文があった。
P227
2004年7月30日、この本が単行本が刊行されたその日、病院を抜け出した夏樹は新宿の書店に向かい、店頭で平積みされた本を見て、満面の笑顔でこう言った。
「この本を読んだ方々の心に、愛と優しさとちょっとした勇気の風が一瞬でも吹き抜けたら、僕はもう死んでもいい(笑)」
夏樹は夏樹らしく、最後に大きな仕事をして天国に行った。



『神様がくれた涙』
(新潮社/2005年/1200円)
2004年7月から8月にかけて著者が書き下ろした小説。
がんセンターに設けられた「手紙屋Heaven」で、精神科医であることを隠して手紙代筆屋をしている野々上純一を中心に綴られた物語。日本屈指の外科医二宮先生、先輩ドクターの杉本先生、末期ガンの患者ノブさん、彼らの共通点はヨット。そこに、ガンの検査入院中のサッカー少年雄治や小児ガンの愛ちゃん、ノブさんの家族などが絡み、心に沁みる物語となっている。

P110ノブさんが主治医でヨットの後輩でもある二宮に掛けた言葉
「俺はサボれとかそういうことを言ってんじゃないよ、もちろんベストは尽くす。でも、その結果は決して人が勝手に思い描いちゃあいけないんじゃないかってな、明日どんな風が吹くかわからないようにさあ。」

p120二宮先生から患者さんたちとの接し方で悩んでいた純一へのアドバイス
「『死』は誰にでもいつでも存在して、それは三十年後か半年後かまったく誰にも分からんが、100パーセント必ずやってくる問題だ。この問題は『運命』と言うより仕方ない。これを突き詰めていくと、生きることは『長短の問題』ではなく、その『生き方の問題』ということになる。

*他にもたくさん書き抜いたのですが、ここではここまで…。


『ガンに生かされて』
(新潮社文庫/平成19年/438円)
文末の解説(著者の所属していたサニーサイド社長の次原悦子文)に、出版への経緯が書かれていて、これもよい。余命三ヶ月と宣告された著者が、書くことで余命を九ヶ月に伸ばした事実は、いろんなことを考えさせる。闘病記だが、前向きで明るく、読むほうが逆に励まされる、いい本だった。著者が尊厳死協会に入って書いたという「LIVING WILL(尊厳死の宣言書)」も、参考になった。

P26
ある日、僕の尊敬するスポーツノンフィクション作家小松成美さんに会った。僕が「作家なんておこがましいです…」と恐縮していると、「一冊出したらもう作家よ。作品は赤ちゃんと一緒。しっかり育てていかないと。だからプロモーション活動したり、兄弟作る努力したりして、温めていかないといけないよ。放っておいたりしたらダメ」と強く言われた。


P59 
薬剤から何かの病気に罹患した方の訴訟問題が、テレビで報じられていた。
この問題に対してとやかく言うつもりはない。僕には知識も何もないし、被害者でも加害者でもないから。
しかし、気がかりなことがひとつある。どの人も〝怒りの人〟になっている。〝怒りの人〟を見るのが、あるときから僕はとてもつらくなった。なぜならば、〝怒りの人〟の行きつく先に希望はない。たとえ何か得をしても、幸福も安らぎもないと僕は感じる。最終的に辿り着くべきなのは、受け入れること。結局はそこに行くべきではないだろうか。

P145 著者が出逢ったある人の言葉。(文章)
どんなに美しい言葉を送っても、その言葉にあなた自身が助けられた経験がなければ、相手の心に決して届きません。あなたの生活の中で、生きて糧となり、困難、試練を乗り越えさせてくれた言葉こそ、人にも伝えることができ、人の心に残る言葉となるのです。そうすると、私たちは本当に少ない言葉しか、人を励ますために使うことはできません。

P202
人は、「ありがたいか、おもしろいか」、この二つのどちらかでしか動かないという。


*他にもたくさん書き抜いたのですが、ここではここまで…。


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 向田邦子のエッセイ三冊

『父の詫び状』『無名仮名人名簿』『霊長類ヒト科動物図鑑』
(すべて文春文庫)
こんなに面白く上手いエッセイは初めて!書き出しから最後の一文まで、読者の心をつかんで離さない。小さい活字も苦にならないほど、どんな話が出てくるか楽しみで、一気に三冊読んでしまった。著者自身のせっかちでおっちょこいなところや失敗をベースにしているので、どんな話も笑えてしまう。その上、描写が実に詳しく具体的で、場面がくっきり浮かぶ。テレビドラマの放送作家という印象が強かったので、ドラマが苦手な私は今まで読まず、勿体無いことをしたなと思うのである。直木賞受賞作品が入っている短編集『思い出トランプ』も読みたい。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
お疲れ様です…
前氏の自然詠は確かに奥が深いですね。好きな歌人の一人でした。

飯島氏の残した言葉はどれも含蓄があります。私もがんばろうと思いました。
【2012/02/27 16:38】 URL | kenji #/qX1gsKM [ 編集]

kenjiさんへ
>お疲れ様です…
ほんまにお疲れ様で、昨日は夕食をとるなりバタンキュー。お返事遅くなりました。
年をとると、「たかが風邪」でも、体にこたえることを、久々に痛感しました。年です。
飯島氏は、生の痕跡を残したいと必死だったのだと思います。必死は心を打ちます。
【2012/02/28 17:51】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

銀世界です
雪に弱い東京、降り続いています。
午後は出かけますがバスで行ける所だけど目の前のバス停までも気を付けていきます。

飯島さんのドキュメントを観た事があります。
ドラマ化されたのも観たわ。

不平等な世の中でも「死」は誰にも平等に絶対にやってくるものです。
夫が亡くなった時、夫のいない人生が辛くて「いつ死んでもいい」と思っていました。
でも1人になっていろいろなことと出会いやはり「死」はもう少し後でいいかな、と思うようになりました。

今の「死なせない医学」に疑問を持っています。
先日、会った知人が「夫の母が95才で胃ろうをする事になったの。夫の兄弟たちが決めたんだけど」と言ってました。
それでも生きなくてはならないのでしょうね。

向田さんの本は一時、続けて読んだことがありましたがかなり忘れたわ。
【2012/02/29 10:00】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミン(keiko)さんへ
こんばんは。
お習字から帰宅したら、心温まるプレゼントが届いていました。
手に入るといいなと思っていたので、とっても嬉しいです。ありがとうございます。
今日は、お習字の先生にお願いして、石巻の方に贈る色紙を書いてもらいました。
ピンポイントですが、たった一人でも応援できたら…と考えました。
ベンジャミンさんは、パソコン同好会を通じて、温かい応援ができていて、とっても素敵だなって思います。

>でも1人になっていろいろな人、ことと出会いやはり「死」はもう少し後でいいかな、と思うようになりました。
そうです。そのほうがご主人さまもずっと喜ばれます。
私の兄も、義姉がやっていた通りのお節を、このお正月に作り子どもを迎えていました。
元気に明るくしてくれているのが、天国からも見えていると思うのですよ。

>今の「死なせない医学」に疑問を持っています。
同感です。寿命を全うしていたら、胃ろうまでして生きたくはないのではないかしら…。
『ガンに生かされて』にも、尊厳死のことが出ていて、大事なことだなって思いました。

向田さんの本は、私は今回が初めてで、しかもエッセイばかり。
正直、内容を覚えているというわけではなく、楽しかった感覚だけ残っています。
【2012/02/29 21:36】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年5カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
2014年 9月15日カウンター300000突破 !



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