心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-4月・5月に読んだ本から
 4月・5月もたくさんの本を読みましたが、今回は次の2冊をご紹介します。

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水上勉・灰谷健次郎往復書簡24通『いのちの小さな声を聴け』
(1990年・1991年7刷/新潮社/新潮社読書雑誌「波」に連載したもの)

20年以上前に出版された本ですが、原発や水俣病の公害、開発による小動物の死、機械文明の発達により理不尽に奪われる命などを憂える内容は、今もって一つも解決していないばかりか、ますますひどくなっている現状にすべて当てはまり、少しも古さを感じませんでした。良心を持つ人、良識のある人の、心を砕いた文章で、今の人たちにも読んでほしいと思いました。以下に、何箇所か引用します。

水上勉「亀の死ぬ夢」より
農地整備事業に関した文章の中で・・・亀は淵を失い、どこへゆくのでしょうか。「よくなる」ということのうらで、無言の動物たちの生命が失われてゆく、(中略)「雑」のなかに棲む虫たち、それから咲く花たち、稔る果実。ぼくらは、「雑」からはあまり銭になるものは獲れない、獲れても率が悪いときめてかかってきた悪い教育の歴史を思いかえさねばなりません。

灰谷健次郎「いのち遙かに」より
フィリピンのミンドロ島での体験から・・・(茹でて食わせてやると言っていた大きなカニを)抱卵しているから海へ帰す、というのは、島の人にとっては、ごく当り前の日常であり、感情なのでしょう。わたしたちにはそれが驚きなのです。生命への畏敬ということからいえば、日本人は徹底して堕落してしまったということを、思い知らされました。

灰谷健次郎「人間の寸法」より
沖縄の離島でわたしが学んだことの一つに、木も水も、どんな小さな生物もいっさいがっさい、人間の生命と一つだというとらえ方があります。人間の寸法でものを考えるということは、たぶん、このことがその根底にあってはじめて成り立つものでしょう。これを忘れたとき、人はもろもろの罪を犯すのではないでしょうか。

水上勉「橋桁の下を見つめて」より
ぼくは、人間のつくるものは、どこか手ぬきがある、ということを信じています。(中略)原発ドームが、とつぜん、何かの都合で破裂しても不思議はないでしょう。人間がつくるものですから。(中略)瀬戸大橋(*建設犠牲者17名)に何万人の人々が押しよせたか存じませんが、ぼくは橋桁になった島々で、夜もねむれぬ鳥たちとともに生きねばならぬひとにぎりの人々の、くらしについて、眼をすえて生きたいと思います。

灰谷健次郎「魚族の将来」より
良心は振りかざすものではないけれど、生命が損なわれ自然が壊されようとするとき、それに沈黙する文学があるともわたしには思えない。

灰谷健次郎「未来はいつも」より
政治権力をにぎる人、企業の上に君臨する人の生命哲学は、それをもって身を切るほどの峻烈な自己吟味が要求されるはずでありましょうに。中国のようなこと(天安門事件)が起こらなくてよかったと多くの日本人はいいますが、自然破壊と公害によってわが国の生命抹殺は、まことにひどい修羅場を作っていることに人々は思いをいたすべきでしょう。戦車で人間を踏みつぶす行為は誰もが非難しますが、緩慢な虐殺に人々は目をつぶりがちです。

 原発銀座といわれる福井県に住んでいた水上氏は、原発にこだわり、その危険性と恐怖を訴え続けていました。あの東北地方を襲った大地震のあとの福島原発事故を経験しながら、安易に再稼働を口にする人たち、電力不足をことさらに言う電力会社、いったい何を考えているのでしょうか。二度、三度、あのような事故が起これば日本は絶滅する、と言っている学者もいます。今話題の大飯原発で事故が起これば、近畿の水がめ琵琶湖の汚染は避けがたく、あらゆるものの命が脅かされるでしょう。このことは、すべての原発に当てはまります。あらゆる命を守るため、一刻も早く、電力を原発に頼ることはしないと明言すべきだと考えます。昔書かれたこの本を読みながら、今に思いが飛んでなりませんでした。

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岡部 史著『お菓子のうた 甘味の文化誌』
(ブイツーソリューション発行/2012年/952円)

著者は、「塔」短歌会所属の、歌歴三十年余の大先輩。この本は、ご自身の歌集ではなく、さまざまな歌人の、お菓子を詠んだ歌を集めたエッセイです。年齢が近いせいもあって、共感を覚える内容がたくさんありました。ただ、ちょっと違うなと思ったのは、綿あめ(綿菓子)、今川焼(大判焼)、水飴、かき氷といった庶民的なおやつへの思い出。末っ子で自由に育てられた私は、これらのどれにも懐かしい思いが付いてくるのですが、長女には厳しかった母上に育てられた著者にとっては、少々残念な思いが伴うようです。洋風焼き菓子に詳しいのは、翻訳の仕事もされていることが影響しているのかなと思いました。
楽しみながら読ませてもらいましたが、困ったのは、どれも美味しそうで、ついついお菓子を口にしたくなったこと。おなじみのチョコレートからアンパン、いちご大福、おこし、金平糖、ソフトクリーム、寒天まで70種類のお菓子とそれにまつわる歴史や物語が、すてきな歌と共に登場します。以下に少し引用する(前後省略)ように、著者の読みが鋭いのも、この本の魅力の一つです。

ポテトチップス食べつつ塩の手でひらく斎藤茂吉この頃親し  荻原裕幸
この作者もまた、ポテトチップス好きの「ながら族」のようだ。塩と油脂の染みた手で斎藤茂吉の歌集をめくる。嫌な行為ではある。こんな汚れた手では、誰の歌集であろうと触って欲しくない。
でも、作者はこのあたりが狙いのようである。「塩の手」、つまり何かのついでに茂吉の歌を読んでいると強調したいのだ。かしこまって机の上で開いていたのでは見えなかったものも見えてくる、わからない歌も理解できるようになる、と言いたいらしい。


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テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

とても表紙がかわいらしいですね!

写真もとてもきれいです^^

やっぱりうまいですね!普通の人が撮った写真とプロの人ではぜんぜんうつりとか違いますもんねe-420


撮り方にこつとかあるんでしょうか。


私は最近、心理学の本やスピリチュアルな本をよく読むんですけど読書ってやっぱりいいですよね^^心が落ち着くっていうかなにか得るものもありますし、


朋子さんの文章力にはいつもほう~っとなります。


朋子さんってきっと知的な方なんでしょうね!


私も、朋子さんを見習って文章力をつけるため頑張ります★
【2012/05/31 23:10】 URL | kyoka&ryoka #- [ 編集]

kyoka&ryoka さんへ
こんばんは。いつも心あたたまるコメントをありがとう。

>撮り方にこつとかあるんでしょうか。
私は、ド素人なのですが、バランス的には3分の1の位置を意識していることが多いです。
あとは、自分が写真の中に取り込みたいところを、いろいろ角度を考えて入れます。
電線やごみ箱など、枠の中に入っていないか、ちょっと注意するといいですよ。
写す時に出来上がりを予測して撮りますが、できるだけ多めに撮っておきます。

>読書ってやっぱりいいですよね^^心が落ち着くっていうかなにか得るものもありますし、
いい本に出会ったときは、得るものが多くて、ほんとにありがたいなって思います。
文章を書くことには責任が伴うから、その材料をしっかり見たり読んだりしないといけないから、とてもいい勉強になりますよね。頑張ってくださいね。
【2012/06/01 20:06】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

おはようございます
ポテトチップスを食べながら塩の手で本をめくる。
その後ろには意味があったんですね。

関西のこの夏の電力問題が取りざたされています。
あれから1年以上経つのにこうなる事を想定できなかったのでしょうか。
再稼働を容認した人たちの真意が会見では良く分かりません。

今朝もテレビ討論で自民党が民主党を攻撃していましたが自民党だったらどうだったのだろう、どうなるのだろう、とない頭で考えました。
管元総理も出演されてたけどやっぱり彼という人物が分かりません。

昨日から殆ど会話を聞いていません。
今日も明日も予定もないし、(バス2台乗り継いで)30分ほどかけて植物園にバラを見に行くか、もう少し遠いけど高幡不動尊の紫陽花を見に行こうか迷っています。
紫陽花は少し早いかしら。
【2012/06/02 10:23】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミンさんへ
こんにちは。
再稼働、めっちゃ腹立ってます。関西連合の首長は何のために集まってたの!
活断層も危険な地域だし、対策も十分でないのに、何なのこれは!って口惜しくて。

電気代の仕組みも、個人使用と大口用では、使用量と収入に占める割合がおかしいし。
特に、東電や関電など、大口(たくさん使っているのに払っている料金が少ない)の多いところでは、割合が逆転してて、個人使用(使ってる量が少ないのにたくさん払っている)は損してますよね。
おまけに値上げ。東電社員の年収もアップ。東電の責任者は、関連企業に天下り。

今朝の朝日新聞のオピニオンにもありましたが、反対がずっと多いし、経済のあり方も今までのような大量生産大量消費から方向転換すべきチャンスなのに、相変わらずの政財界のひどさ。
自分の国なのに、自分たちの意見が反映されない、この国の情けないあり方、私は何ができるのだろう。

アジサイはまだちょっと早いかな?バラはちょっと終わりかけかな?
中途半端なこんな時期は、美術館?図書館?映画館?本屋さん?気分転換のお買い物?マーマレード作り?
「ブルースター」ってお花がとても素敵な色で、今、買いたいなって思っています。
ベンジャミンさんもいかがですか?
【2012/06/02 12:03】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

おつかれさまです!
灰谷健次郎…若い頃、好きでしたのでなつかしいですね~
【2012/06/04 00:06】 URL | kenji #tHX44QXM [ 編集]


灰谷健次郎は『兎の眼』を読んで泣いてしまったことを思い出しました。
あの小説の中の先生に憧れて教師になった方も多いことでしょう。
原発問題もそうですが、
教育界の上の方たちも自己吟味されて、
本当に子供達に必要な環境を与えて欲しいな、と親世代なので感じます。
【2012/06/04 16:21】 URL | 和み人 #- [ 編集]

kenji さんへ
お久しぶりです。お元気でしたか?
灰谷健次郎『太陽の子』は、確か琉球料理のお店が舞台でしたね。
昔読んで、とても心打たれたことを思い出しました。
【2012/06/04 18:28】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

和み人さんへ
初めまして。コメントありがとうございます。
確か、kyoka&ryokaちゃんのブログで、お名前を拝見したような…。
たどって、和み人さんのブログにも先ほどお邪魔いたしました。
これからもよろしくお付き合いください。

>灰谷健次郎は『兎の眼』を読んで泣いてしまったことを思い出しました。
新卒の女先生が一生懸命教育に取り組むお話でしたね。大好きな一冊です。
「経済」優先の国から、本当の意味での「教育」優先の国になって欲しいと切に思います。
物や便利さではなく、互いを思いやり、自身を最大に生かす生き方こそが大切ですよね。
【2012/06/04 18:36】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年6カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
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