心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本‐『奇跡のリンゴ』
 兄や夫が楽しんでいる家庭菜園の野菜のおかげで、今年の夏はほとんど野菜を買わずに過ごしました。夫の畑は雑草だらけですが、もちろん無農薬。「何もやらない、農薬も肥料も何も使わない農業」で有名な、愛媛県出身の福岡正信氏のビデオを買ったのがきっかけで、野菜を作りたくなったようです。本当は米も作ってみたそうですが・・・。長野出身の夫は、リンゴ農家の農薬のすさまじさを知っていましたし、愛媛出身の私は、若い叔母を農薬散布の被害で亡くしましたから、無農薬には以前から関心がありました。
2006年のNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」で、無農薬のリンゴ栽培に挑み壮絶な苦労の末に、それを成功させた木村さんのとびきりの笑顔を見ました。それ以来ずっと気になっていた彼のことを書いた本を読むことができました。そこに、福岡正信さんの本『自然農法』との出会いが書いてあり、さらに嬉しくなりました。

石川拓治著 『奇跡のリンゴ』
「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録

NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班監修
(幻冬舎文庫/2011年/533円)

  kisekinoringo.jpg

p30
「自殺を考えたっていう若い人からも電話あったな。」・・・彼の経験した苦労や挫折の大きさに比べたら、自分の悩みなんて悩みのうちにも入らないことがわかったと、若者はきっぱり言ったのだそうだ。・・・「うん、とにかく思い直して良かったねえと言ったかな。それからバカになればいいんだよと言いました。バカになるって、やってみればわかると思うけど、そんなに簡単なことではないんだよ。だけどさ、死ぬくらいなら、その前に一回はバカになってみたらいい。同じことを考えた先輩として、ひとつだけわかったことがある。ひとつのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合うことができるんだよ、とな」
ひとつのものに狂えば、いつか答えに巡り合う。木村の言葉は、木村の人生そのものだった。

P165
「リンゴの木は、リンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている。そしていつの間にか、自分が栽培している作物も、そういうもんだと思い込むようになったんだな。農薬を使うことのいちばんの問題は、ほんとうはそこのところにあるんだよ。」

p197
「農薬を使わなくなってわかったことがあるのな。農薬を使っていると、リンゴの木が病気や虫と戦う力を衰えさせてしまうのさ。楽するからいけないんだと思う。クルマにばっかり乗ってると、足腰が弱くなるでしょう。同じことが起きるわけ。それでな、リンゴの木だけじゃなくて、農薬を使っている人間まで病気や虫に弱くなるんだよ。病気や虫のことがよくわからなくなってしまうの。農薬さえ撒けばいいから、病気や虫をちゃんと見る必要がなくなるわけだ。」

p210
「人間に出来ることなんて、そんなたいしたことじゃないんだよ。みんなは、木村はよく頑張ったって言うけどさ、私じゃない、リンゴの木が頑張ったんだよ。これは謙遜なんかではないよ。本気でそう思ってるの。だってさ、人間はどんなに頑張っても自分ではリンゴの花のひとつも咲かせることが出来ないんだよ。手の先にだって、足の先にだって、リンゴの花は咲かせられないのよ。・・・この花を咲かせたのは私ではない。リンゴの木なんだとな。主人公は人間じゃなくてリンゴの木なんだってことが、骨身に染みてわかった。それがわからなかったんだよ。自分がリンゴを作っていると思い込んでいたの。自分がリンゴの木を管理しているんだとな。私に出来ることは、リンゴの木の手伝いでしかないんだよ。失敗に失敗を積み重ねて、ようやくそのことがわかった。それがわかるまで、ほんとうに長い時間がかかったな。」

p233
自然は細切れなどに出来ない。それは、木村があのドングリの木の根元で悟った重要な真理だった。自然の中に、孤立して生きている命など存在しない。自然をどれだけ精緻に分析しても、人はリンゴひとつ創造することは出来ないのだ。バラバラに切り離すのではなく、ひとつのつながりとして理解すること。科学者がひとつひとつの部品にまで分解してしまった自然ではなく、無数の命がつながり合い絡み合って存在している、生きた自然の全体と向き合うのが百姓の仕事なのだ。だから、百の仕事に通じなければならない。

P245
「自然の手伝いをして、その恵みを分けてもらう。それが農業の本当の姿なんだよ。そうあるべき農業の姿だな。今の農業は、残念ながらその姿から外れているよ。・・・どんなに科学が進んでも、人間は自然から離れて生きていくことは出来ないんだよ。だって人間そのものが、自然の産物なんだからな。自分は自然の手伝いなんだって、人間が心から思えるかどうか。人間の未来はそこにかかっていると私は思う。」


  木村秋則さんのどの言葉も、それはリンゴの木にとどまらず、人間(特に子育てや教育)にも当てはまる真実だと感じながら、大変興味深く読んだ本でした。
ちなみに、今、夫が愛読しているのは、木村秋則責任編集 『木村秋則と自然栽培の世界 無肥料・無農薬でここまでできる』 (日本経済出版社/2010年・2011年5刷/1500円)です。

テーマ:オススメの本 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

いい笑顔ですね、表紙。
思わず手にとってみたくなる、素敵な笑顔の木村さん。
これは、買い・・・ですね。

上の息子は高校で「民俗学研究会」に所属していて、そこで畑を作ってます。
米も・・・なのですが、毎年、雀のえさ・・・になってしまうのだとか。

先日、習い事のお迎えの時に下のコが「ハオちゃんのお兄ちゃんのCDにしてe-343」って。
「話の途中」を一緒に歌ってました。
「リピートにしていい?」って言い、何度も歌い「めっちゃ好きや~。飽きないなぁe-266」って。
小学校6年生、12歳。あの歌詞をどんな風にとらえているんだろう?って不思議に疑問に、思うのですが、一言一句も間違えずに覚えて歌いたい・・・って感じに集中している姿に、質問するのをひかえてしまいました。
 
【2012/09/16 05:22】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimicoさんへ
おはようございます。
>思わず手にとってみたくなる、素敵な笑顔の木村さん。
そうなのです。テレビで見たときも、この笑顔に参りました。
中味もよかったです。普段本を読むのが遅い夫が、珍しく一気に読んでいました。

>「リピートにしていい?」って言い、何度も歌い「めっちゃ好きや~。飽きないなぁ」って。
まあ、すごい!本人も喜ぶだろうから転送しておきました。
週末は、あちこちで歌っているみたいです。
レトロなカフェや、オーガニックなお料理の出るカフェが、好きみたいですよ。
あと「野田バル」などの商店街が取り組んでいる催しものなども呼んでもらって。
また近くで昼間、ただで聞ける時があったら、お知らせしますね。

今日はお昼頃、夫が南千里公園であるよっといで祭の円形広場で、手品をするそうです。
私は、家で書の練習に没頭する予定ですが、まずは今読みかけの本を読み終えよう!
【2012/09/16 10:05】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

おはようございます  
木村さんのコメント集…どれもいいコメントばかりですね。無農薬の重要性を認識しました。

野田バル…滋賀もついに、今月は大津バル、来月は草津バルを開催します。
最近は、全国各地で「バル」による地域活性化が増えているようですね。
【2012/09/16 11:24】 URL | kenji #tHX44QXM [ 編集]

kenjiさんへ
こんばんは。
>無農薬の重要性を認識しました。
そうですね。土の力と植物が本来持っている力。
人間がなんでもできると思うところに、自然界への傲慢さが出てしまいますよね。

>最近は、全国各地で「バル」による地域活性化が増えているようですね。
いいことですね。地方のシャッター通りが減って、地元密着のお店が元気になっていくといいなって思います。
【2012/09/16 20:09】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年5カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
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