心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-米原万里さんの本
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友人のTさんは、とてもうまく 「出会い」をつくってくれる。ここ1年ほどだけでも、中国語サークル・映画と洋服の I さん・俳句の K さんと、彼女が作ってくれた出会いは、どれも素晴らしく、私の生活をとても豊かにしてくれている。彼女には感謝の気持ちでいっぱいだ。

そして、また新たな出会いがあった「米原万里さんの本」。「面白いよ。」と貸してもらった三冊が、至る所に線を引きたい面白さで、改めて購入することにした。

なかでも、私が一番気に入ったのが次の本。「時事エッセイ」という分野らしいが、筆者がロシア語同時通訳という職業柄、珍しい話題も多く、頭の良さを感じさせる歯切れのよい文章も心地よい。知識が確かで、「甘くない」のがいい。笑えるロシアの小咄もいい。


 1.『真夜中の太陽』 米原万里著 
(中央公論新社・1400円・2001年発行)(中公文庫560円)


  「本当の理由は?」より
わたしは要介護度四の認定を受けた母と暮らしていて、区のデイ・ケア・サービスを利用しているが、介護保険制度導入以前は無料だった利用料が、今では毎月四万円ほど徴収されるようになった。といって、サービスが向上したかといえば、その逆で、公的支援が大幅に削られているため、福祉現場ではリストラが進んでいて、サービスを受ける側にとっても居心地悪くなっている。
 それでも、政府や識者たちは、
「このまま社会の高齢化が進むと、年金基金も健康保険基金も破綻する」
 と、まことしやかに不安を煽り続ける。
 しかし、本当にそうなのだろうか。
 なぜ、高齢化対策となると、財源、財源と騒ぐのだろう。なぜ、阪神大震災の被災者救援や福祉予算の問題となると、財源がないという理由でとたんに締まり屋になるのだろう。
 そしてそのくせ、なぜ、増税の理由は、いつも福祉なのだろう。
「国際貢献」という名の利権絡みの膨大な軍事支出の際には、なぜ財源が取りざたされないのだろう。なぜ、在日米軍基地への思いやり予算については、むやみに気前よくなってしまって財源の心配をしないのだろう。(「ミセス」2000年10月号)


ほんの一部の引用だが、日頃思っていて、もやもやしていたことを一刀両断、実にすっきり解説してくれる。5年前の文章が、そのまま今もあてはまる、というか、更にひどくなっている現状に、呆れてしまうけれど。


2.『真昼の星空』 米原万里著 
(中央公論新社・1600円・2003年発行)(中公文庫620円)


読売新聞の日曜版に1998年から2001年に連載されたコラムを編集したもの。先の本より、一編ずつが短いため、星新一のショート・ショートのような「オチ」があり、楽しい。
中でも、大笑いしたのが「指導者の頭髪」。クラシック音楽コンプレックスのある私は、初め「指揮者の頭髪」と読んで、「そうか、米原さんも、音楽会のとき、指揮者の髪型が気になるのか!」と、喜んだが、実は「ロシアの指導者の話」。


 (前略) T 教授が甲高い声で次のようにコメントしたのが印象的だった。「ツルツルモジャモジャ理論てのがあるんです。ソ連の指導者は、ツルツルとモジャモジャが交互に来ます。レーニンはツルツル、次のスターリンはモジャモジャ、次に来たフルシチョフはツルツルで、ブレジネフはモジャモジャでしょう。この法則でいくと、次は必ずツルツルの人でしょう。」
(後略)(2000年6月11日)


さて、次の指導者の頭髪がどうであったかは、皆さんの目で!
また、ところどころ挟まれる「箴言」が、真実を突いていて面白い。

「その才能を花開かせる力も含めて才能なのだ。」
「不自由な方が自由になれるのである。」等々。



3. 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』 米原万里著 
(角川書店・1400円・2002年発行)(角川文庫580円)


これは「本の旅人」1999年~2001年に連載されたもので、「大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した本。チェコのプラハ・ソビエト学校で9歳から5年間を過ごした著者が、その時の同級生三人を訪ねた時のエッセイだ。激動の時代の東欧や他の国民性が、かいま見える。

 ドイツで医者になったリッツアの話より
「病気じゃないかと思うほど街も公共施設も清潔なのは気持ちいいけれど、ここはお金が万能の社会よ。文化がないのよ。チェコで暮らしていた頃は、三日に一度は当たり前のように芝居やオペラやコンサートに足を運んだし、週末には美術館や博物館の展覧会が楽しみだった。日用品のように安くて、普通の人々の生活に空気のように文化が息づいていた。ところが、ここでは、それは高価な贅沢。」


ドイツ人と日本人は、気質がよく似ていると言われるけれど、文化政策の貧困なところまで似ているのかと、愕然としました。見る気の失せるテレビの安易な文化?(と、呼べないものが多い)ではなく、豊かな本物を身近に手軽に、と思います。

引用が多く長くなりましたが、まだの方はぜひご一読を。ちなみに、「Amazonの書評」では、3.2.1の順に、人気があるようです。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント
米原万里さんが癌で死去のニュース
先程知りまして56歳の若さとすでに癌を宣告されてと゜ご冥福祈ります万里さんらしいですね遅ればせながら読んでみたくなりました、万里さんが幼い頃住んでいたプラハはおとずれたことありますがいつかロシアも行きたいです。世界地図も変わりました。普遍的なものは変わらないでしよう いろんな国にいきたいです 亀さん中国語頑張ってくださいね 以前少し勉強しました四声ムズカシカツタ
【2006/05/29 18:57】 URL | クレマチス #- [ 編集]

クレマチスさんへ
クレマチスさん、お久しぶり。プラハは美しいところなのでしょう?

米原万里さんの訃報、私も夕方のニュースで、初めて知り、驚いています。
文章でも、写真でも、とても元気なイメージの方で、今後が楽しみだったのに…。
今も彼女の「ガセネッタ&シモネッタ」という、洒落満載の本をを友人から借りて、読んでいたところなのです。
なかなかこんなに幅広い情報源を持っている人は居ないだろうし、歯切れよく面白い文章を書ける人も居ないんじゃないかしら?

3日坊主の私ですが、この頃は長続きできるようになってきました。中国語も長期戦で。
【2006/05/29 20:05】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

亀さんお返事ありがとうございます
亀さんもいろんな興味とバイタリティーの持ち主さんで文章もお写真も凄く上手で素敵 です。とても魅力的なかたです さて庭の薔薇が、さきはじめました手入れが悪く葉が虫に食われてますけどでも香りがよくて、デンテイベスという名前の一重の繊細な薔薇ですきようは万里さんに捧げましょう。シカシ万里さんには真紅の薔薇の方が似合うか、とも。ひとりひとりいろんな個性がありお互いみとめあい社会の一隅の光となりましようザイツエン再見
【2006/05/29 21:37】 URL | クレマチス #- [ 編集]

ようやく・・・

ナゾの湿疹とチビのお熱でお仕事を休んでしまいました。
・・・とはいえのんびり以外にすることもなく
図書館に予約を入れていた米原さんの本を読んで過ごしました。

おもしろくて、惹かれるところもたくさんあって、一気に3冊読んでしまいました。

素敵な本の紹介をしていただいて、感謝!ありがとうございます。
【2006/06/21 19:57】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimicoさんへ
お久しぶりです。新しい仕事の疲れも出たんだと思います。無理しないでね。

米原万里さんの本、私もTさんに貸してもらうまで読んだことなかったのです。
とても上手ですよね。最近は、癌の闘病記も連載されていたみたいです。

茨木のり子さんといい、米原万里さんといい、元気で前向きで、はっきりものを言われる方が、亡くなられるのは、大きな損失ですね。
【2006/06/21 20:45】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
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