心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く詩歌-北原白秋・高野公彦氏
 北原白秋から高野公彦氏へとゆるやかにつなげてご紹介します。

1月に福岡の柳川を訪ねた折、北原白秋記念館も見学しました。見やすい展示と詳しい解説に、すっかり気分をよくして可愛い本を買いました。

   hakusyunoutaehon2013.jpg

『北原白秋のうた絵本(童謡歌曲集)』より
(著者・北原白秋/絵・西島伊佐雄/発行・北原白秋生家保存会/1000円)

この道
この道はいつか来た道、ああ、さうだよ、あかしやの花が咲いてる。・・・

からたちの花
・・・からたちのそばで泣いたよ。みんなやさしかつたよ。・・・

落葉松
からまつの林を過ぎて、からまつを見き。
からまつはさびしかりけり。たびゆくはさびしかりけり。・・・

帰去来
・・・ふるさとやそのかの子ら、皆老いて遠きに、何ぞ寄る童ごころ。


ここにあげた以外にも、赤い鳥小鳥、あわて床屋、城ヶ島の雨、雨、雨ふり、ちやつきり節、ゆりかごのうた、砂山、待ちぼうけ、ペチカ、などなど懐かしい歌がいっぱい、可愛い絵と一緒に楽しめます。同時に買った絵ハガキセットも素敵でした。帰宅後、北原白秋記念館HPからも購入できることを発見し、嬉しくなりました。

啄木のようなリアルな歌もいいけれど、ロマンのある、言葉に詩情のある白秋の歌も好きな私、もう少し詳しく、でも手軽に読めるものをと思って、昨年の放送ですが、次のようなテキストを手に入れました。

   kitaharahakusyu2013.jpg

NHKカルチャーラジオ詩歌を楽しむ(2012年1月~3月)
高野公彦『北原白秋 うたと言葉と』より、共感を覚えた部分を少し抜粋いたします。

P164白秋の第三歌集『雀の卵』の「大序」を引用して
ここに「真の」という言葉が頻出するのに驚きます。しかし、白秋の短歌観はよく分かります。写生の重要性は自分も認めるが、単なる写実では駄目で、作者の視線は現実の奥にひそむこの世の真相というものに到達していなければならない……。白秋はそのように主張しているのでしょう。

P169・170白秋の「短歌と新風」を引用して
観照というのは、静かに客観的に自然や物などを見つめることを言います。白秋の関心は対象の物それ自体には向けられず、また肝腎の作り手の精神そのものにも向けられていません。大事なのは我と物とのあいだにある微妙な気配なのでありまして、この意味で白秋は「細やかな観照の人」なのです。観照の歌を作るのに必要なのは、物たちの発する気配を敏感にキャッチする感覚と、そしてそれを言葉にあらわす精密な表現技術です。この二つの点で白秋は、近代短歌の中で最も優れた歌人であろうと思います。極論すれば、白秋は直感の人であり、また言葉の人でありました。

ここに書かれていることは、よく分かるし共感を覚えます。自分の力の無さでは、それを実作に生かすということはなかなか困難ですが、理想として常に胸に抱いておきたい短歌観です。
先日の句会の時に、伊丹公子先生が言われた「感受性と表現力のどちらもが大切」という言葉と、ここに書かれている「直感と言葉」というのも、ある意味重なっているなと感じています。

先日、先のテキストを読み、高野公彦氏の北原白秋への理解が深いのは、宮柊二(北原白秋門下生)について学ばれたことと深い関わりがあるなと思っていたところに、次の本が届きました。

   kisuinohikari2013.png

第1歌集文庫(現代短歌社/2013年/700円)
高野公彦歌集『汽水の光』

中古で何万円もの値段がついて手元に持てなかった『汽水の光』が、お手頃価格で、しかも新たな解説(元からの大岡信氏・新しい木畑紀子氏ともに素晴らしい!)付きで、ついに手に入るようになりました。送料80円で、直接出版社から入手可能。

一首目から「歌語(詩語)」と言いましょうか、格調高い調べと想像力を刺激する表現に、うっとりしながら読み進み、「ああ、やっぱり高野公彦氏の歌はいいなあ」とその魅力にはまります。
氏の歌には、詠まれた情景や心情への共感は勿論のこと、何より「言葉への愛情」が感じられるのが、私には嬉しいのです。言葉が単に伝える道具ではなく、いわゆる「言霊」のような力を持っていると言っても過言ではないでしょう。
ご紹介したい歌ばかりなのですが、本をお手元に持って頂きたく、七首にとどめます。

喪の列はさみしく長し橋に出てひとびとの耳夕日に並ぶ
朝かぜに思ひゐにけり家一つ焼きてほろびし炎のゆくへ
白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり
(超有名!)
夜ふかくゆめの底ひを照らしたる藤むらさきの雷(らい)にめざめつ
人の世ののちのしづけさ思はしめ朝とびとびの霜のまくら木
橋はいま人影たえて風と死者かよへるごとき空しき明るさ
行きゆきしものの跡なき水のうへほのかに翳(かげ)り春の雪ふる

テーマ:短歌 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
おはようございます  
落葉松…私の一番好きな作品です。

高野氏の「白き露~」一首も一番好きな作品です。

読み応えのある「二大特集」といった感じで良かったです。
【2013/02/03 08:16】 URL | ケンジ #tHX44QXM [ 編集]

ケンジさんへ
コメントありがとうございます。
昨日、今日と暖かかったですね。
日の暮れるのも遅くなってきたし、春が近いのを感じます。

「落葉松」も「白き霧」も素敵ですね。
ちなみに、白秋記念館のアンケートでは、一番人気は「この道」でした。歌えますか?
【2013/02/03 16:58】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


矢絣の表紙が可愛くていいですね。
表紙だけで買ってしまいそう。

いい歌がありますね。
この道、からたちの花は胸にしみます。


先日「東京家族」を観てきました。
みんな優しいの。
でもすれ違う親と子の気持ち。
友人たちと親年代の気持ち、子供年代のこともどちらも分かるわねえ、と。
間もなく親年代に入ります。

何故か白秋の詩を読んでこの映画と重なりました。
【2013/02/04 09:54】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミン(keiko)さんへ
こんばんは。
コメントありがとうございます。

>矢絣の表紙が可愛くていいですね。
ほっとする感じですよね。中の絵も温かくて可愛くて、お気に入りの本の一つになりました。

>いい歌がありますね。
小さい時によく歌った歌の歌詞が、たくさん北原白秋だったのでびっくりしました。
雨雨ふれふれ母さんが…とか、雨が降ります、雨がふる、遊びに行きたし、傘はなしとか、ね。
この道やからたちの花とか、懐かしくていろんなことを思い出し、泣きそうになりますね。

>先日「東京家族」を観てきました。
友だち何人ものお勧めが、「東京家族」と「レミゼラブル」で、まずは「レミゼラブル」へ。
すごくよくて、最後には号泣しそうでした。涙が流れ過ぎてしばらく席から立てませんでした。
ベンジャミンさんの感想を読んで、やっぱり「東京家族」も行こうって思っています。
【2013/02/04 18:00】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


こんばんは

高校生になって、アルバイトを始めて、最初に訪ねたのが、大宰府・長崎・柳川・・・でした。
飛び梅を見て、生きる力の不思議さを、長崎ではオランダ坂の溝の三角に驚き・・・
柳川では白秋の成果の階段が急なのに心奪われ・・・

ず~っとユースホステルに宿泊の貧乏旅行は、とてもとても楽しかった。

まったく迷わず、このたび左記を選んだ15歳だった私に、なぜ?と聞いてみたく思うのですが、さっぱり思い出せません。


変なコだったのね、15歳の時にすでに。




 
【2013/02/04 18:14】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimico さんへ
こんばんは。
コメントありがとうございます。

>高校生になって、アルバイトを始めて、最初に訪ねたのが、大宰府・長崎・柳川・・・でした。
すごい!行動力にびっくりします。だから、外国へも積極的に行けたのね。
私なんて、近場に自転車で出かけるのが唯一の冒険だったのに…
しかも、面白いところに目をつけて、発見があるし。素敵な青春です!
若い時のわくわくどきどき、感受性のアンテナが鋭く反応しているのが分かります。
私は大人になってから、同じところに行きましたが、溝の三角、気がつかなかったなあ。

>変なコだったのね、15歳の時にすでに。
いやいや、すごく羨ましいです。
こんな楽しい15歳の送り方があったんだなって、なんか自分が残念…。
ところで、「レミゼラブル」見ましたか?
コゼットの大人役の美しい娘さん、なんだかkimicoさんに似ていました。
【2013/02/05 20:41】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年5カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
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