心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-尾形誠規著『美談の男』
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 【表表紙】                 【裏表紙】

尾形誠規著『美談の男』 (鉄人社/2010年/1400円)
―冤罪 袴田事件を裁いた元主任裁判官・熊本典道の秘密―

 所属している「塔」短歌会の尾形貢氏より頂いた歌集 『水の呼吸』 を拝読していたところ、中にたった一首ですが、ご子息の書かれた本 『美談の男』 の歌がありました。インターネットのアマゾンで調べたところ、「読みやすい文章、真相に迫ろうとする迫力」と、大変高い評価の書評が載っていたので、手に入れて読みました。

 「冤罪袴田事件」を裁いた元裁判官・熊本典道、関係者、友人や家族などへの丹念な取材をもとに書かれていて、ぐいぐい引き込まれ一気に読みきりました。無罪を確信しながら、他の二人の裁判官を説得しきれず、袴田巌さんに死刑判決を下した熊本典道裁判官の苦悩を追う中で、人間の弱さや立派さに触れていくこの本は、大変価値のある内容でした。

脆弱な証拠(警察による捏造とも…)、長期間・長時間に及ぶ拷問と言ってよいほどの自白の強要、マスコミによる残忍な犯人扱い、裁判は正しい判断をしてくれるという思い込み、などなどさまざまな原因によって、多くの人から「冤罪」を指摘されつつも無罪になることなく、30歳での逮捕から77歳の今までずっと拘禁されている袴田さん。

大量の調書をはじめさまざまな条件から無実と確信しながら、袴田さんを法の上で殺してしまった罪に自分を見失っていった熊本さんが、40年後に守秘義務を破り真実を告白したのはなぜか。「美談にはしないで下さい」という条件で書かれたこの本には、熊本さんのいいところも悪いところもそのまま書かれている。


 犯人にされてしまった人の人生は勿論のこと、多くの良心ある人たちの人生までも狂わせてしまう「冤罪」の怖さを、ひしひしと感じた本でした。被害に遭った本人や家族には、早く犯人を捕まえ無念を晴らしたいという思いがあるし、警察や検事にもそれに応えたいという熱い思いがあるでしょう。しかし、人権を蹂躙しては過ちが生じます。人が人を裁くことは、職務の領域を越えた、実はとても罪深いことなのではないかと思えてなりません。

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【阪大構内。右上には昼の月。紫木蓮を見ると、きりっとして格調高い次の歌を思い出します。】

   いにしえの王(おおきみ)のごと前髪を吹かれてあゆむ紫木蓮まで   阿木津 英

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

おはようございます。

さっそく「予約」を入れました。
「美談」ってなぜ?と、今から、不思議な不安でいっぱいです。
袴田事件について、しらなさすぎるから、故の疑問なのかしら。
冤罪という言葉は知っているけれど。
怖い。知るのも、知らずにいることも。

下のコが小学校を卒業しました。
とても素敵な卒業式でした。
いろんな方々の思いのあふれた、ちょっと変わった式でした。
企画・運営する側の思い込みが強いって・・・こういうことなんだな~と。
大人たちの・・・担任団や校長先生、それに保護者の強い思い込みが交錯する中、
教頭先生から閉式が告げられると同時に、児童全員が起立し、
クラスごとに担任の名前を呼び「ありがとうございました」と、その日1番良い声で!
児童たちが自分たちで企画したサプライズが、とてもとても素敵で素晴らしい瞬間でした。

卒業式が終わっても、毎日のように、誰かが玄関のチャイムを鳴らしに来てくれています。
ボールを持って、どこかの公園に、次のチャイムを鳴らしに、消えてしまう息子。
外で遊ぶなんて、いつまでできるもんなんでしょうか?
いまどきの児童は、当たり前のように携帯を持っていて、メールや電話で連絡とるって聞くのに、息子の周りのコたちは、思いつくままチャイムを鳴らして人数増やして走り回っています。
なんだかうれしくって、しあわせだな~って思えます。
 


【2013/03/24 08:35】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimicoさんへ
お早うございます。
桜がほんの少しだけ咲いています。入学式までもつといいですね。
対して、東京は早い!卒業の歌に桜が出てくる訳が分かりました。

>怖い。知るのも、知らずにいることも。
そう、怖いです。いつ誰がまきこまれるかも分からない冤罪。
前に映画「それでも僕はやってない」を見たときにも思いましたが、裁判のことがよりリアルに分かる本でした。
早速、予約してくださったんですね。いい本でしたよ。

>とても素敵な卒業式でした。
良かったですね。
なんであんなに練習を?と、私などは思っていたのですが、先生たちにとっては最後の一瞬までが授業なのだそうです。
子どもたち、保護者の方、先生、皆が感動できて、満足の式ができたら、最高ですね。

>なんだかうれしくって、しあわせだな~って思えます。
室内で過ごす子が多くなって、運動能力が退化していると、先日のニュースでもありましたね。
子どもたちが友だちと元気に外で遊んでる姿というのは、他人の私が見てもほんわか幸せになる嬉しい光景です。
「寒夕焼男の子(をのこ)ばかりが遊びゐる」
kimicoさんの家の近くで、この冬作った句です。
元気にサッカーボールで遊んでいました。とっても楽しそうでした。
拓人も昨日は、外のイベントで歌って、気持ちよかったみたいです。
【2013/03/24 10:27】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]

こんばんは… 
袴田事件…風化しつつある事件ですね。

それにしても、塔にそのような方がいるとは知らなかったです。

有名人の知りあいが多くていいですね。
【2013/03/24 20:09】 URL | ケンジ #- [ 編集]

ケンジさんへ
こんばんは。コメントありがとうございます。
30歳から77歳までの人生を台無しにされたのです。風化させてはいけませんね。

「塔」短歌会の尾形貢氏のご子息で、私もたまたま歌集を読んで本を買っただけなのですよ。直接存じ上げている訳ではなくて…。
ただ「塔」に入っていなければ、ずっと知らないで済ませた本かもしれません。出会えてよかったです!
【2013/03/24 22:00】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


冤罪っていつわが身や身内に起こりうることなのでしょう。

無実なのに人生の大事な時間を拘束される恐ろしさは計り知れません。

「それでも僕はやってない」(確かこんなタイトルでした。)
加瀬 亮主演の痴漢の冤罪の映画でした。
息子はいませんが婿たちの事を心配します。
息子を持つ友人が電車通勤が始まった時に「両手で吊り革につかまっていなさい!」と強く命じたそうです。

支援者がいなかったらひとりで戦うんですよね。
こころが折れてしまいます。
【2013/03/25 09:57】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミン(keiko) さんへ
こんばんは。コメントありがとうございます。

>無実なのに人生の大事な時間を拘束される恐ろしさは計り知れません。
ほんとうに!30歳から現時点で77歳。考えただけで、恐ろしくなります。

>加瀬 亮主演の痴漢の冤罪の映画でした。
この映画もショックでした。お友だちが息子さんに言われた気持ち、分かります。
自分の身を守ることすら容易でない社会って、怖いですよね。

>こころが折れてしまいます。
袴田さんは、お姉さんが太っ腹で支えて下さっていますが、袴田さんご自身は精神的に大変な状況になられているようで、心が痛みます。
なんとか早く再審請求を受け入れて、きちんとやり直してほしいです。
【2013/03/25 18:40】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
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