心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
恩師の俳句-句集『岬の春』
 現在、入院中のS先生(高校時代の恩師)に代わって、ご子息が先生の俳句を句集にまとめられ、この夏、出版されました。「冊数に余裕はあるのですが、どなたに送ったらよいか分からなくて…」と伺ったので、十五冊ほど預かり、同級生や先生にゆかりのある方に送らせてもらいました。皆さんからの感想が、病床のよい慰めになっていると、先生をはじめご家族のみなさんが喜んでおられました。

   misakinoharu.jpg 『岬の春』 こじんまりとした優しい雰囲気の句集

夏の章から
せせらぎの音の底より螢湧く
川のある町に生まれ育った人にとって、蛍にまつわる思い出はどこか甘くて切ない。「せせらぎの音の底より」という把握が、蛍の命の源を思わせて、素晴らしい表現だ。 

柏餅母の匂ひとふるさとと
私のふるさとでは柏餅を包むのは、柏葉ではなく、艶々とした丸い「山帰来(さんきらい)」の葉だったが、先生のところはどうだったのだろう。この葉を見ても柏餅を食べても、母=ふるさとを思い出す。

秋の章から
青春を過ごしし町を霧包む
川霧が大量に発生し、橋上を行く時、一緒にいたはずの友すら見えなくなった。拙句にも「川霧の橋上に友見失ふ」というのがあるが、青春を過ごした、霧に包まれる盆地の町は忘れ難い。

木犀の香をはさみ置く夜の日記
一仕事終え、ほっとした時、金木犀の香が漂うのに気づき、癒されることがよくある。この句は、五七五に選ばれた言葉が完璧で見事だ。

冬の章から
毛糸編む妻ふくよかな指の先
この句集には「妻」「母」を詠んだ句が、比較的多く出てくる。先生を支えて下さる、とても大切な、そして大好きな存在なのだと思う。温かくて優しく細やかな句だ。

人消えし闇に白雪降りつもる
暗闇に白く積もっていく雪、幻想的で静かで美しい。しんしんと冷えていく空気も感じる。三好達治の詩「雪」の世界も思わせて、深さと広がりがある。

春の章から
病むことも生きる証か白木蓮
健康で元気いっぱいだった身も、老いたり病んだりして、どこか不自由な箇所を抱えてしまう。若い時のような体にはもう戻らないのだと、辛く寂しい時もあるけれど、それもまた「生きる証」。白木蓮に励まされる春の始まりである。

芽吹くものみな芽吹かせて空晴るる
命のほとばしり。空は快晴。この夏流行ったジブリの「風立ちぬ」じゃないけど、「いざ生きめやも」だ。芽吹きや新緑は、生きる力になる。

   rikka9gatugou.png 「六花」9月号

兄の高校時代の同級生、山田六甲氏が主宰をしている「六花(りっか)」9月号で、S先生の句の特集を組んでいただきました。先生の句「赤とんぼ海の碧さに紛れざる」と、お名前・句集名を頭に置いた俳句35句の連作です。思い出をと言われ書いた拙文も加え、貴重な誌面を4ページも割いて下さいました。

さのよいよい踊の月は三日月に
同級生のKさんが、この句を読んで「懐かしい!」と喜んでくれました。私たちが入学した時、担任になった先生が「『さのよいよい』と覚えて下さい。」と言われたのだそうです。何にも覚えてなかった私は、Kさんの記憶力に驚きました。

内子まで鮎をつかみに帰るけん
ふるさとが同じ六甲氏ならではの、方言入りの俳句。同郷の者には、感涙の句。鮎もとれたふるさとの山河は、今も無事でしょうか。

いくつでも母には子ども盆ちまき
子どもの時も、親になっても、母の存在は最高。そして、いつも食べ物とともにある母の思い出。「食」は「愛」の根源なのです。

爽やかや「岬の春」の句集手に
凝った表現にして世間の注目を浴びようとか、話題になろうとか、そういう世俗的な欲から遠い純粋な句集。「爽やか」私の第一印象もそうでした。本来、俳句というのは、こういうものであろう。優しく温かな気もちをいただいたのは、この句集を受け取った皆であったと思います。

      mainitizinbunsanosensei.jpg 毎日新聞「季語刻々」

私と高校は違いますが、S先生の教え子の一人である俳人の坪内稔典氏は、毎日新聞に連載されている「季語刻々」に、先生の句を取り上げてくださいました。

S先生の優しさが、水輪のように広がって、この句集のおかげで、私も皆さんからたくさんの感想を寄せてもらい、温かい気持ちをいただきました。いろいろありがとうございました。

ちょっとお知らせ:10月20日(日)の昼間、青木拓人が、FM802のDJ平野聡さんとのジョイントライブを、大阪市内のギャラリーで行います。(詳しくは、右列リンク先より)

テーマ:俳句 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

いい季節になりましたね。
少し歩いてきました。
台風で金木犀は残っていませんでした。

2冊のご本の装丁が全く違って、でもどちらも素敵です。

母はあまりお料理が得意でなかったので母の思い出す味があまりありません。
亀さんは何かしら。
【2013/10/18 17:10】 URL | ベンジャミン(keiko) #oUPgpoCM [ 編集]

ベンジャミンさんへ
こんにちは。コメントありがとうございます。
ほんとに、いい季節になりました。
私も3時間ばかり歩いてきました。気持ちいいですね。

シンプルな装丁も、華やかなデザインも、それぞれにいいですね。

>母はあまりお料理が得意でなかったので母の思い出す味があまりありません。
実は私も…。よもぎ餅やつくしの炊いたの、小魚のてんぷらなどは、私が摘んできたり釣ってきたりして、母に作ってもらったので、思い出に残っていますが…。
父の作った卵焼きや黒豆、母の里で伯母が作ってくれた柏餅・ぼた餅・うどん・ちらしずしなどの方が、懐かしいふるさとの味です。
【2013/10/18 17:41】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年1月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
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