心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-高野公彦さんの新しい歌集
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【張り付いた蔦が、風の流れを示しているようで、見るたびに気になる学舎の壁面です。】

 もう昨年のことになりますが、歌友から「高野公彦さんの新しい歌集『流木』いいよ。」と聞き、氏の大ファンの私はすぐに購入して読みました。あとがきに「『トラークル詩集』は三十代の頃からの愛読書」とあったので、図書館で借りてチャレンジ。(でも、これは私には難しかった…。)続けて、現代短歌社から高野氏の昔の歌集が文庫本になって出版され、あわせて紹介したいなと思っているうちに時間が経って、紹介が遅くなってしまいました。

先週のはじめ、高校の同級生で高野氏と同じ愛媛県長浜町出身の友人から「高野公彦さんが読売文学賞(詩歌俳句)を受賞されて、今朝の読売新聞に載っています。とっても嬉しいです。」とメールが届きました。高野氏は今までにもたくさんの賞を受けておられ、現代を代表する歌人のお一人です。昨夏の「塔短歌会」の全国大会では懇親会にも出席して下さって、運よく故郷の「丸ずし」や「じゃこ天」のお話をする機会があり、とっても幸せでした。

前置きが長くなりました。歌集を紹介します。

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『流木』 (角川学芸出版/2014年10月/2600円)
中の紙の色が少し赤味を帯びていて、こだわりを感じました。

まずは、故郷関連から
伊予びとはお人よしにて漂泊の俳人に居(きよ)を与へ護(まも)りき 
実は、このお人よしの一人(俳句もしないのに…)が、私の遠い親戚で、何年か前に山頭火の写っている写真など載せた本を出しました。二首あとには、山頭火を嫌った大江昭太郎氏(大江健三郎氏の兄上で「にぎたづ」短歌会の主宰だった方)の歌があります。

〈むつこい〉は味がくどいの意味にして伊予を出て来て聞く事のなし
大江健三郎氏の小説に方言が出てくる時も嬉しいのですが、高野氏の歌集にも故郷のことが詠まれているので、それも氏の歌を読む楽しみの一つです。〈おおばしい〉〈せだわ〉〈おつくばみ〉なども好きな方言で、私も歌に詠んでみたいです。

冷酒よりお燗が良しと思ひつつ伊予の馳走の丸鮨を食む
ほのぼのと伊予の丸鮨(まるずし)おから甘し脳(なづき)のひだをやはらに広ぐ
酢でしめた魚で甘酢味のおからをくるんだもので、帰郷の折には必ず買って食べる好物です。

白木綿(しらゆふ)の薄霧濃霧(うすぎりこぎり)びようびようと唸りて走る肱川あらし
登校する時、肱川の橋上が霧で周りが全く見えなくなることが幾度もありました。この大量の霧が河口の長浜まで流れていく様を「肱川あらし」と言います。

知らぬ者同士しづかに眠る墓地 蝉の百年の声々蔵(しま)

この歌集では、なんといっても東日本大震災と原発事故を詠んだ歌が、大切です。

地震国ニュージーランドは原発を選らばざりしよその妖火(あやしび)

うなばらの大清流に原発より一すぢの濁(だく)ながれ入りゆく

茄子の花愛でていわきに住みし人被災し離郷し都内にて臥す

荒草を舌でたぐりて食み継ぎて(さまよひ牛)の内なる青光(セシウム)

居酒屋で原発のことけなしゐる爺(ぢ)さまがゐたらそれが僕です

蜂の巣に蜂の羽音のせぬ真昼 除染といふは移染にすぎず

原発は心肺停止して死なず死ぬためになほ血を流しをり


ここに引用したどの歌もみな、私の思いと重なります。多くの方が恐らく同じ思いだろうと思います。それなのに、なぜ、国の施策はあらゆるものの命(人間・動植物・自然)を大切にする方向に進まないのでしょう。腹立たしく悲しい現実、黙っているのではなく、せめて表現することで、現状を肯ってはいないことを示しておかなくては…。非力かもしれないけれど、無力ではないと思うから。

『短歌研究文庫 高野公彦歌集』 (短歌研究社/2003年9月/1905円)

2009年にご縁があって高野氏より頂きました。解説は吉川宏志氏(今年から新しい「塔」の主宰)です。『水木』抄、『汽水の光』抄、『淡青』抄、『雨月』抄、『水行』抄、『地中銀河』抄、『般若心経歌篇』完本、『天泣』完本、『水苑』抄で、1652首の自選歌が載っています。以前に拙ブログでご紹介したかと思いますが、代表歌が網羅されているので、一度も高野氏の歌集を読んだことのないという方におススメです。


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現代短歌社から文庫本で、昔の歌集が刊行されています。今まで図書館で借りてノートに写していましたが、手に入れやすくなったので嬉しくて、あれこれ買っています。ここでは超有名な歌をご紹介します。どの文庫本も好きな歌がいっぱい!その上、解説がどれもよく書けていて魅力的です。

『汽水の光』 (現代短歌社/2013年1月/700円)解説:木畑紀子氏
「空」誌に高野氏の歌を引用したお礼にと頂きました。

白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり

みどりごは泣きつつ目ざむひえびえと北半球にあさがほひらき



『淡青』 (現代短歌社/2014年12月/720円)解説:大松達知氏

国ことば語尾にゆたかに母音あり母音は海と日の匂ひする

ふかぶかとあげひばり容れ淡青(たんじやう)の空は暗きまで光の器



『雨月』 (現代短歌社/2014年12月/720円)解説:桑原正紀氏

肱川の水面(みづも)を春の陽は敲(たた)き我に母なき日が始まれり

雨月の夜蜜の暗さとなりにけり野沢凡兆その妻羽紅(うこう) 


 「ふらんす堂」のホームページで、高野公彦氏が毎日一首、短歌を更新されています。拙ブログのリンク先から入れます。

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おまけ:友人からメールのあった日の夕刊に、「長浜」話題が載っていて、二人で「長浜すごい!」と盛り上がりました。長浜高校の水族館部はとても人気があるそうです。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年3カ月
2006年 3月17日から始めました。
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