心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
心に響く本-言葉の重みを考えたい
 私が「安倍首相は嘘つきだ」と感じたのは、2年前の秋の東京五輪開催の最終プレゼンテーションでのスピーチでした。福島の状況について「私が安全を保証します。状況はコントロールされています。」「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている。」あの時のあ然とした思いと、この人は信用できないという思いは、その後の安倍首相の発言でますます強まっています。
 最近では、7月30日の「戦争に巻き込まれるということは絶対にないということは断言したい。」強調すればするほど虚しく響く言葉の数々に、言葉を冒とくされているようで怒りすら覚えます。

 今回ご紹介する本は、言葉や日々の暮らしを大切にした信頼できる文章ばかり。
   ご一読いただけると嬉しいです。



三田完著『俳風三麗花』

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 (文春文庫・ 2009年・629円)

 時代は昭和7年7月から9年3月、この間、満州国建国・国際連盟脱退・プロレタリア作家の小林多喜二虐殺・京大滝川事件・皇太子誕生…と、その後の日本の動きにつながる出来事が頻発。そのいくつかは、この小説の筋ともつながるが、中心は句会で、俳句の推敲の過程が、大変興味深い。
 大学教授秋野暮愁の暮愁庵句会で出会った三人の若い女性たち。秋野氏と親しかった大学教授の父の勧めで句会に通うようになった阿藤ちゑ。東京女子医学専門学校の学生で、秋野教授に句会に誘われた池内壽子。句会のお楽しみの屋形船で一句披露し、句会の常連となった浅草芸者の松太郎。会社員・筆職人・古書店主・写真館の主など男性陣も個性的で、時代の雰囲気もよく出ていて面白い。


三田完著『草の花―俳風三麗花』

 mitakankusanohana1507.jpg (文藝春秋・2011年・1667円) 

 続編で、時代は昭和10年3月から昭和22年3月。新進の科学者と結婚するも流産し、失意の日々を送るちゑ。女子医専を卒業し大連の病院へ赴任する壽子。六代目尾上菊五郎の妾となった浅草芸者の松太郎。戦争という激流の中を生き抜く三人の人生が、満州国皇帝・溥儀、川島芳子、甘粕正彦、永井荷風らと交錯する。架空の三人の女性たちと実在の人物(歴史的評価を入れると問題があるかもしれない…)が、違和感なく描かれていて、引き込まれた。


吉沢久子著『季節感のある暮らし方 幸せ感のある生き方』

 yosizawakurasi1507.jpg (講談社プラスアルファ文庫 ・ 2001年・680円)

 旬を食べ、季節毎の家事を楽しみ、ひとりでも元気に暮らしている、1918年生まれの著者。
草木に季節感を教えられ、四季折々の家事を楽しみ、季節の旬を味わう。自然とつきあい季節とともに暮らす中で見つけた、ひとり暮らしを楽しむ生き方が、豊かで心地いい。 待ち合わせまでの時間つぶしに寄ったブックオフで200円で購入。字が大きく、空間も多いので、電車の中などで気楽に読むのにもってこい。


山室真一著『憲法9条の思想水脈』 

 yamamuro9zyou1507.jpg (朝日選書・ 2007年刊2008年第2刷・1300円)

 第11回司馬遼太郎賞受賞。きちんとものを考えたいと思っている人すべてに読んで欲しい、素晴らしい本でした。どんな場合でも戦争はせず、個々人の努力と外交によって平和を求めることが、遠くても正しい道だと、過去の優れた人たち(トルストイ・カント・植木枝盛・内村鑑三など)が教えてくれました。以下、引用部分は色つき文字。

裏表紙の内容紹介
 戦後日本を60年支えてきた日本国憲法。その改正手続きを定めた国民投票法案が2007年5月、国会で成立した。争点は9条である。人類の歴史のなかで、絶え間なく繰り返されてきた戦争。じつは、それゆえに平和を求める切実な声が途絶えることはなかった。日本でも幕末以降、軍備撤廃を論じ、戦争廃止を訴える思想が現れ、それらが第一次世界大戦後の「すべての戦争の違法化へ」という世界の動きと合流していった。憲法9条は、戦後、突然生まれたものではない。世紀を越え、国境を越え、脈々と流れてきた平和運動や非戦思想の到達点にあり、平和を個人の生存権として主張する画期的な条文なのだ。日本はいま「国益」「同盟強化」の名のもと、戦争を前提とした軍事力均衡(バランス・オブ・パワー)政策が国民を守らなかった19世紀に戻ろうとしているのか。

本文最初に掲載されている憲法前文の一部を。
 「・・・政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。・・・」


 ここを読んだだけで、今の政府のやろうとしていることが、どれだけ憲法をないがしろにしているかが分かりますが、第99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負ふ」とあります。【以下p107より】憲法尊重とは、国民にではなく、あくまで国政を担当し執行する人に課せられた義務なのである。換言すれば、主権者たる国民が国政を信託するにあたつて為政者に課した義務が、憲法を尊重することなのである。

日本国内だけでなく、世界に視野を広げた時に欠かせないのは次の視点だと思います。
【以下p205より】
 レヴィンソン(弁護士)やデューイ(哲学者)らの戦争非合法化思想は、自衛戦争と侵略戦争を廃止し、制裁においても武力を使用することは実質的な戦争になるとして認めなかった。その意味で「制度としての戦争」そのものを認めることを否定し、それを戦力不保持によって実効性をもたせようとした憲法9条は、まさしく戦争非合法化思想の水脈を引き継いだものである。
 しかも、戦争非合法化運動においてデユーイらが主張したように、平和とは国家主権の確保によってもたらせるものではなく、あらゆる階級的・人権的・地理的な境界を越えて実現される人間の交流による共存によってもたらせるという思想こそ、国民主権・国際協調・平和的生存権そして非戦を基軸とする平和という考え方につながってくるものであった。


 近年の、アメリカが介入したことによる戦争の、悲惨な泥沼化がいくつも思われます。筆者の「戦争による問題解決を合法化する世界は常に戦争の危機にさらされることになり、決して戦争そのものを廃絶することはできないのである。」【p206】に全く同感です。過去の歴史から、戦争がいかに非人道的で破壊的なものであるかを学んできた私たちに、今できることは必死で戦争を止めること・二度と戦争を起こさせないことだと思います。「特別秘密保護法」が通って以来、あの過去の悲惨な戦争と似た歩みを始めているのを至る所で感じます。先日の国会でも、自衛隊の海外派遣に関する資料が、真黒に塗られた状態で提示されていました。ここで紹介した本を読んでいる時も、過去の戦争が始まる前と今の状況があまりにも似ていると感じました。あきらめたらおしまい。平和を求めることは、人として当たり前のことなのだから。

テーマ:オススメの本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

この記事に対するコメント

 
こんにちは。


連日、がっかりな発言が聞こえる毎日です。
言論の自由、表現の自由、思想の自由・・・いろいろな自由が保障されている国ではありますが、だからって。


今、生きている私たち。
未来、これからを生きる若い人たち。
どちらにとっても、大切な私たちの国、日本。
安心して老いを迎えたい。
笑顔でこの国を引き継いでいくよう、渡したい。
今と未来と、どちらも大切にしたい。

発言されたことは、責任の伴うことなのだとわかっていらっしゃるのかしら。
【2015/08/09 18:23】 URL | kimico #Zr2/WiYY [ 編集]

kimicoさんへ
こんばんは。コメントありがとうございます。
来月から支援者の担当、3が2になります。やっと前進です。

ほんとにひどい発言が多いけれど、その責任をとることもなくずるずると平気で進んでいるというのが耐えがたいです。
特にあの若い人は、自分の考えを知らせたくてわざと言ってる気がします。確信犯ですね。

首相の言うことの一貫性の無さにも嫌気がさしています。
アメリカが押し付けた憲法は変えねば、と言いながら、今回の法案も日本より先にアメリカと約束をしてくる、どう考えても従属してる。矛盾していませんかね?
アメリカは、自国の正義をかざして、他国に押し付けてくる。最近の戦争は、たいていこれがきっかけですよね。

昨日は万博であったFM802のコンサートに無料招待され出かけました。
木村カエラと山崎まさよしは聞けたのですが、後半、雷雨のため待機してたけど中止に…。
楽しみにしていたビギンとコブクロが聞けず、残念でした…。
【2015/08/09 18:47】 URL | 大空の亀 #- [ 編集]


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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年1月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
2008年 9月 8日カウンター111111通過
2011年 5月 4日カウンター200000突破 !
2012年 1月10日カウンター222222通過
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