心に響く本・詩歌・言葉・音楽・風景
私の読んだ本や聴いた音楽、出会った風景の中から心に響いたものを紹介します。
与謝蕪村の句
私の好きな俳人・歌人の10句・10歌-与謝蕪村
与謝蕪村
1716年(享保1年)摂津生~1783年(天明3年)京都没
 江戸時代中期の俳人・画家

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『蕪村春秋』高橋治著(朝日新聞社・1998年刊・2,300円)

本の装丁も素晴らしくて、著者の「蕪村愛」にあふれた一冊。著者は、映像作家としても有名ですが、大学で近世文学を専攻し、卒業論文が俳諧史というだけあって、エッセイといっても力が入っていて、俳句の読みが多面的で深い。蕪村好きの私も、共感しながら、とても嬉しく読み進みました。「春風馬堤曲」や「北寿老仙をいたむ」など、まるで近代の詩の世界のようで、新しいチャレンジも魅力的で、好きな作品です。蕪村のよさを読み解いた、とても勉強になる本です。俳句っていいなって思いますよ。お勧めします!
p206
前略・・・その内容がなんであるのかに二人(芭蕉・蕪村)は全く言及していない。しかし、読む側は描写の外側にあるものを感じとらずにはいられないだろう。定型の句の淡彩と見せた名作の場合も同様である。
 ここに俳句の真髄があり、深淵があるように思える。具体的な描写があって、いかにそれが的確であっても、単にその範囲に止まる限り、俳句は森羅万象の点景を提出したものに過ぎず、そこから一歩も出ない。作者が裏側に語り尽くせぬ意味をこめたと力んでみたところで、読まされる側にすれば「ああ左様ですか」で終わってしまう。短詩型文学は本来的に舌足らずだから、紙一重の差が絶唱と独善を隔ててしまうのだ。・・・以下略


選句力=作句力と、よく言われますが、確かにその通り。作る側だけでなく、読む側にも力量が要ります。

追記:この本の中で何度か紹介してあった萩原朔太郎著『郷愁の詩人与謝蕪村』(岩波文庫/1988年第1刷・2016年第28刷/460円)も併せて読みました。共感を覚えることばかりで、著者の蕪村への深い理解を感じました。附録の「芭蕉私見」もよかったです。芭蕉が西行を敬慕したように、蕪村は芭蕉を敬慕していましたから、その意味でも、この本は価値のある本だと思います。俳句を学びたい方に、お勧めの一冊です。ただし、文庫本なので字は小さいです。


『名句即訳 蕪村』石田郷子著(ぴあ・2004年・1,714円)
蕪村の代表句440句を、訳して解説した本で、前回の「芭蕉」と同じ作りです。

私の好きな蕪村の30句
大好き過ぎてとても10句には収まらないので、30句に絞ったのですが、本当はまだいっぱいあります。
蕪村の句は、情景がくっきり見えて、物語を作る楽しみがあります。また、王朝ものや歴史もの、フィクションにも、なんともいえない味わいがあって、心惹かれます。ここに引用しきれなかった蕪村の句の中には、細やかな写実で、今の人が詠んだといっても通用する新しさと普遍性があります。

春の句7
さしぬきを足でぬぐ夜や朧月(さしぬきを あしでぬぐよや おぼろづき)
 王朝もの
しら梅に明くる夜ばかりとなりにけり(しらうめに あくるよばかりと なりにけり)
 辞世の句
肘白き僧のかり寝や宵の春(ひじしろき そうのかりねや よいのはる)
春雨やものがたりゆく蓑と傘(はるさめや ものがたりゆく みのとかさ)
春の海終日のたりのたり哉(はるのうみ ひねもすのたり のたりかな)
うつつなきつまみごころの胡蝶哉(うつつなき つまみごころの こちょうかな)
 うつつ(現)=現実
几巾きのふの空のありどころ(いかのぼり きのうのそらの ありどころ)
 几巾(いかのぼり)=凧のこと
菜の花や月は東に日は西に(なのはなや つきはひがしに ひはにしに)

夏の句9
御手討の夫婦なりしを更衣(おてうちの めおとなりしを ころもがえ)
  フィクション
牡丹散りて打ちかさなりぬ二三片(ぼたんちりて うちかさなりぬ にさんぺん)
鮎くれてよらで過ぎ行く夜半の門(あゆくれて よらですぎゆく よわのもん・かど)
若竹や夕日の嵯峨と成りにけり(わかたけや ゆうひのさがと なりにけり)
夏河を越すうれしさよ手に草履(なつかわを こすうれしさよ てにぞうり)
愁ひつつ岡にのぼれば花いばら(うれいつつ おかにのぼれば はないばら)
さみだれや大河を前に家二軒(さみだれや たいがをまえに いえにけん)
涼しさや鐘をはなるるかねの声(すずしさや かねをはなるる かねのこえ)
静けさの柱にとまるほたるかな(しずけさの はしらにとまる ほたるかな)

秋の句9
鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分哉(とばどのへ ごろっきいそぐ のわきかな)秋
 歴史もの
初秋や余所の灯見ゆる宵のほど(はつあきや よそのひみゆる よいのほど)
四五人に月落ちかかるをどりかな(しごにんに つきおちかかる おどりかな)
 をどり(踊り)=盆踊り
月天心貧しき町を通りけり(つきてんしん まずしきまちを とおりけり)
起きて居てもう寝たといふ夜寒哉(おきていて もうねたという よさむかな)
落穂拾ひ日あたる方へあゆみ行く(おちぼひろい ひあたるかたへ あゆみゆく)
ちちははのことのみおもふ秋のくれ(ちちははの ことのみおもう あきのくれ)
稲づまや浪もてゆへる秋津しま(いなづまや なみもてゆえる あきつしま)
 秋津しま=日本列島
ひとり来て一人を訪ふや秋のくれ(ひとりきて ひとりをとうや あきのくれ)

冬の句5
楠の根を静かにぬらす時雨哉(くすのねを しずかにぬらす しぐれかな)
居眠りて我にかくれん冬ごもり(いねむりて われにかくれん ふゆごもり)
こがらしや何に世わたる家五軒(こがらしや なにによわたる いえごけん)
 何に世わたる=どうやって暮らしを立てているのだろう
麦蒔や百まで生きる貌ばかり(むぎまきや ひゃくまでいきる かおばかり)
斧入れて香におどろくや冬こだち(おのいれて かにおどろくや ふゆこだち)

☆なかでも特別好きなのは、
「夏河を越すうれしさよ手に草履」と「月天心貧しき町を通りけり」です。人の動きが見えると同時に、その人の気持ちも感じ取れますよね。風景だけでなく、人の暮らしや人情の機微が見えるところが、蕪村のいちばんの魅力なのだと思います。

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庭の紫陽花。青色が好きで何株も買ったのですが、土の関係で、桃色になってしまいました。

テーマ:俳句 - ジャンル:趣味・実用

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大空の亀 

Author:大空の亀 
写真の猫は姉のハオと弟のミュー。
ハオは2006年5月5日生(伝)。
ミューは2008年10月10日生(伝)。

空と言葉と草木花が好き。
趣味は読書・文芸。

読書ノート歴33年。
年間読書冊数の平均は、学生時代は
300冊、就職後は100冊~150冊。

ブログ歴 11年6カ月
2006年 3月17日から始めました。
2006年 9月 9日カウンター22222通過
2007年10月24日カウンター77777通過
2008年 5月23日カウンター100000突破 !
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